「和食 千年の味のミステリー」の感想
これは、福岡におられたときに知り合ったプロデューサーの牧野さんが制作されたNHKスペシャル「和食 千年の味のミステリー」の感想文です。牧野さんへの手紙のかたちをとっています。
牧野さん、家内ともども、とても感心しながら、「和食 千年の味のミステリー」拝見しました。素晴らしいできばえだったと思います。
番組名が「和食」という、ちょっと範囲が大きすぎ、抽象的すぎて焦点を結ばないのではないか、総花的な一般的な日本賛歌になってしまうのではないか、などという危惧をもって見始めました。ところが、その危惧を見事に払拭して、オリゼという麹菌一本に絞って深みのある掘り下げのある展開になっていって、一気に引き込まれました。オリゼという麹菌の秘密の解読に絞って深めていったことが、番組の成功の源だったと思います。おそらく番組制作者としては、この麹菌こそが和食を成り立たせている根本(のひとつ)であり、その魅力をぞんぶんにということで「オリゼの秘密」のようなことにしたかったのでないかと推測したりしますが、それでは、Eテレのような科学番組になってしまうので、番組名にも苦労されたのではないかと推察いたします。
さて、番組のトーンとしては、私の好きな「新日本風土記」の流れを濃厚にもつ、しみじみと私たちの風土の土台を見直す、という地に足をつけた見事に重厚で深い番組になっていたと思います。そして、進化生物学などの知見も取り入れながら、それを生活に即して長年にわたって育ててきた目立たない地道な日本人の姿も浮かび上がらせる。これは見事な構成だと思います。
しかも、驚くべきことに、ちっとも説教くさくも、古くさくもなく、時代離れもしていない。むしろ、若い世代が、新鮮に新たに日本の和のすばらしさを再発見できるような、そんな番組になっていたと思います。これは、すばらしい。日本にやってきた留学生たちにも、ぜひ、見せたいと思いました。
吉祥寺シアター、巨匠の対談
吉祥寺の、これまで足を踏み入れたことのないエリアにも「吉祥寺シアター」が出現していて、そこで鈴木忠志SCOTの師走公演がある。代表作「リア王」のあと、磯崎新と鈴木忠志の「巨匠の対談」が行われました。われわれの世代からするとスター建築家の磯崎新と日本を代表する世界的な演出家の鈴木忠志。さて、どんな巨匠対談となるか、と息を呑んでいると、昔話がえんえんとつづいて、なんだか、ぬるい・・・と思っていると、周囲にいた若い人たちが、がんがん席を立っていく。1時間の予定の対談が1時間半くらいに伸びて、終わるころには、三分の一くらいの人は席を立っていたのではないか。巨匠といっても、若い世代には通じない。若い人たちは演劇を見に来たのであって、おじいさんの昔話を聞きに来たのではない、ということなのかなぁ。時代は変わった。
福岡ユネスコ協会、ドナルド・キーンさん講演会
福岡ユネスコ協会が主催する「福岡ユネスコ・アジア文化講演会」の開催に合わせて、ドナルド・キーンさんが12月に来福されます!
地域での文化活動と国際文化交流活動、とりわけ日本をよりよく理解して頂くために活動を続けている、一般財団法人福岡ユネスコ協会。
今年で創立65周年を迎えるにあたり、既に北九州で開催された、詩人の伊藤比呂美さんによる講演会をかわきりに、様々なシンポジウムが予定されています。
今回は、そのなかのひとつ。福岡アジア文化賞、芸術・文化賞を受賞した、ドナルド・キーンさんをお迎えして、講演会を開催します。
【福岡ユネスコ・アジア文化講演会「日本の短詩型文学の魅力」(仮題)】
- 日付/2013年12月14日(土)
- 時間/14:00~16:00(※開場は13:30)
- 会場/電気ビル共創館3階共創館カンファレンス大会議室(福岡市中央区渡辺通)
- 入場料/事前申込み1000円(当日1200円)※留学生、学生はともに500円
- 受付期間/2013年11月1日~30日
申込みは、福岡ユネスコ協会へメールもしくはFAX(092-733-1291)にてお願いします。
インフォメーション
安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照
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