名古屋はNPOがパワフルだ (介護サービス さくら理事長の村居多美子さん)
名古屋はNPOが強い、とは前から聞き知ってはいた。でも、じっさいに行ってみるまではよく分からなかった。行って、見て、話してみると、たしかに、他県とは全然違う。まずリーダーがいい。パワフルなNPOというと理事長ひとりが突出していたりするが、名古屋のNPOリーダーは、自分ひとりのNPOではなく、NPOのネットワークを作ったり、コンソーシアムを作ったり、社協とも組んだり、行政とも粘り強くつきあっていたり、何しろ懐の深い熟成された社会対応なのである。なかでも「介護サービス さくら」は愛知県でも五指にはいる大きなNPOだ。理事長の村居多美子さんにじっくりお話しをうかがううちに、名古屋のNPOが他のどこと違うのか、だんだん分かってきた。思いが違う、熱意が違う、だけでなく、その柔軟でフレキシブルな対応も、やっぱり違っていて、これはなかなか真似のできるものではないな、と思った。「さくら」をじっくり案内していただいただけでなく、市内各地にちらばっている様々な事業所も見せていただいた。ありがとうございました。
「全国小児病棟遊びのボランティア・第二回交流集会」(あいち小児保健医療総合センター)で講演しました。
私は20年前、ロスアンゼルスにあるUCLAに留学した時に調査しはじめて以来、20年間にわたって病院ボランティアの実態と課題の調査研究もしてきたのですが、このところ、すこしお休みしていました。今回、「全国小児病棟遊びのボランティア・第二回交流集会」(あいち小児保健医療総合センター)で講演をさせていただくことになり、久しぶりに、多くの病院ボランティアの方々にお会いしました。私のリサーチによれば、全米病院協会(AHA)加盟の病院の75%に「病院ボランティア部」があり専任専従のボランティアコーディネーターやディレクターがいます。日本の病院統計では8500ほどの病院があるのですが、日本病院ボランティア協会に加盟している病院ボランティアグループは210病院、わずか2.5%です。なぜこんなに違いが生じるのか、その理由をさぐり、現状の打開策の提案を、この10年くらいしてきたのですが、なかなか通じませんでした。今回、ひさしぶりに小児病棟でのボランティア活動を見学したり、現場の方々の声を聴くことができて、たいへん有益でした。いろいろなことを考えました。もっともっと展開していきたいですね。
サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場
オリンピックでロシアが注目されていますね。図書館にもロシアのコーナーが仕立てられていて、『リヒテルの思い出』とか『わがムラヴィンスキー』とか、タルコフスキーの本まで並べられていました。音楽や映画、バレエで、私たちは意外とロシアとの濃密な接点をもっていたんですね。昨晩は録画しておいた「サンクトペテルブルク 音楽の都300年の物語~ゲルギエフとたどる栄光と苦難」を見ました。これ、良かったですね。マリインスキー劇場に焦点をあてて、ロシア五人組、チャイコフスキー、バレエ、そしてショスタコーヴィチの姿を描き出すという趣向で、あぁ、昔よんだ「アラベスク」の舞台は、ここだったのか、などと感心してしまいました。山岸涼子の時代、まだソ連邦だったので、名前は、レニングラード・キーロフ・バレエ団などと言っていたんですね。マリインスキー劇場も、キーロフ劇場と呼ばれていたんですね。どうりで、すぐには思いつかなかったわけだ。この、マリインスキー劇場、グリーンと白の、じつに美しい劇場ですね。いちど行ってみたい。
野崎歓さんの『映画、希望のイマージュ』(Fukuoka Uブックレット、弦書房)
先日、野崎歓さんの『翻訳教育』を紹介しました。時を同じくして『映画、希望のイマージュ』(Fukuoka Uブックレット、弦書房)も出ました。これは昨年6月、野崎歓さんに福岡に来てもらって講演していただいた時のもの。「香港映画は二度死ぬ」と「よみがえるフランス映画」の二つの講演がブックレットになったものです。うれしいですね。講演も映画の上映も、素晴らしいものだったにもかかわらず観客が必ずしも多くなかった。こうやってブックレットになって、多くの人に読んでもらえるのは嬉しいかぎりです。でも小説の翻訳と同じく、外国映画、とくに香港映画やフランス映画など、若い人たちは、あまり見てないかもしれませんね。どうしてなんだろう。かつてのように外国のもの、日本でない未知なるものへの「見たい、知りたい」という渇望が、薄まってきているように思います(誤認であってほしいが)。スマホやインターネットで、知らないものを手軽に調べることができるので、既知になった(ように感じて)しまっているのでしょうか?だとしたら残念なことです。むしろ中途半端に知るよりは、未知なことは未知なままにとっておいて、本当の出会いの衝撃の可能性や驚きの可能性を「保存」しておきたいくらいだ。なんでもすぐお手軽に知ってしまうのは「もったいない」。「知る」ことが「浅く」なってしまってもったいない。「知っているが知っていない」「分かっているようで分かっていない」「古いようでいて古くない」、そんな面白い世界への入口、発見への扉を、楽しみとして取っておいてほしい。手軽に調べて「分かった、知っている」というようでは、もっと深く面白い世界への可能性を閉じてしまう。こんなこと言うと、いかにもおじさんの言説になってしまうのだろうか・・・。
東京都知事選に思う
昨日の東京都知事選、やっぱりがっかりしましたね。なんだか、とてもがっかりました。脱力感ありますね。
きゅうに一般化しちゃいけないんですが、人間が、自分を自分自身で変えていくというのは、とても、難しいことなのですね。「変える」ということは、内的な必然性か、もしくは外的な必然性か、いずれにせよ、そういう抜き差しならぬ状況にならないと、おいそれと変われるものではないですからね。
何かを決める、自分で自分のことを決めていくのも、考えると、なかなか難しいことですからね。
ついつい、安易でやりやすい、自分に都合の良いようにしちゃいますもんね。
自分を振り返っても、そう思います。学生たちを見ていても、そう思います。
だからこそ、自分たちのうちわの論理以上の仕組みが、いろいろと必要なんでしょうね。
本当は「政治」とか「教育」とか、そういうための仕組みなんでしょうけれどね。
(写真は、満開になった九州大学箱崎文系キャンパス構内の梅)
野崎歓さんの新著『翻訳教育』
仏文学の野崎歓さんの新著『翻訳教育』(河出書房新社)を読み終わりました。胸にじーんときました。おもしろうてやがてかなしき、そんな笑いと驚き、痛快さと痛切さとが同居しています。翻訳文学という、絶滅危惧種(?)への深い愛情や消え去りそうな大切なものをいとおしむような深い感触もありますね。近年の快著でしょう。
個人的に著者の野崎歓さんを親しく知っているだけに、あぁ、あの時の苦しみはいかばかりだったろう、とか、あぁ、こんなに苦心惨憺して翻訳していたのか、とか、あぁこんな思いがこめられていたあの翻訳書せっかく贈ってもらったのに、まだ読んでないなぁ、などとつぎつぎに感想・感興・後悔がわき起こってきて、なかなか感涙なしには読み進められなかったですね。
野崎さんが学生にアンケートをとると「翻訳書は読まないようにしています」とか「翻訳は本物でないし、誤訳がつきもので、間違いがあると分かっている本を読むのはいやだから読まない」とか「自分は日本が好きなので外国のものは読まない」などという回答が返ってくるそうです。唖然としてしまいますが、私の周囲の学生たちも、ほぼ同意見かと思います。難しいから敬遠しているのでなく(ほんとうは分からないもの・分かりにくいものを敬遠しているところもあると思いますが)、外国のものや翻訳は不要だ、というような(とんでもない)意見を堂々と開陳する学生たちが出現してきたことに、ある種の「時代」(の病)を感じてしまいますね。おい、日本、大丈夫か。
入試の季節が始まりました。
今学期の授業がおわり、入試の季節が始まりました。まず第一弾は大学院修士課程の入試でした。
このところ不況の影響でしょうか。顕著に大学院をめざす人が減りました。激減といっていいです。九州大学の学部卒で受験してくるのは珍しいほどです。増えてるのは外国(それも中国)からの留学生だけ。日本人全体が縮こまっていますね。
かつて、私たちの学生時代、あの時代のほうが経済的には貧しかったはずですが、あのころは、みんな意気軒昂として大学院を目指しました。当時は大学院浪人なんてのも普通にありました。文学部からだと、とくに社会学とか仏文とか、倍率も高かったですしね。みんな熱心に真剣に大学院をめざしていました。あの頃と今では、いったい何が変わったのでしょうか。
全体として、若い世代には、いまで満足、現状維持というか、「いま以上のもの」を求めるエネルギーが衰微しているように感じるのは、やっぱり、こちらが年取ったからなのでしょうか・・・
インフォメーション
安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照

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