これは、福岡におられたときに知り合ったプロデューサーの牧野さんが制作されたNHKスペシャル「和食 千年の味のミステリー」の感想文です。牧野さんへの手紙のかたちをとっています。

牧野さん、家内ともども、とても感心しながら、「和食 千年の味のミステリー」拝見しました。素晴らしいできばえだったと思います。
番組名が「和食」という、ちょっと範囲が大きすぎ、抽象的すぎて焦点を結ばないのではないか、総花的な一般的な日本賛歌になってしまうのではないか、などという危惧をもって見始めました。ところが、その危惧を見事に払拭して、オリゼという麹菌一本に絞って深みのある掘り下げのある展開になっていって、一気に引き込まれました。オリゼという麹菌の秘密の解読に絞って深めていったことが、番組の成功の源だったと思います。おそらく番組制作者としては、この麹菌こそが和食を成り立たせている根本(のひとつ)であり、その魅力をぞんぶんにということで「オリゼの秘密」のようなことにしたかったのでないかと推測したりしますが、それでは、Eテレのような科学番組になってしまうので、番組名にも苦労されたのではないかと推察いたします。
さて、番組のトーンとしては、私の好きな「新日本風土記」の流れを濃厚にもつ、しみじみと私たちの風土の土台を見直す、という地に足をつけた見事に重厚で深い番組になっていたと思います。そして、進化生物学などの知見も取り入れながら、それを生活に即して長年にわたって育ててきた目立たない地道な日本人の姿も浮かび上がらせる。これは見事な構成だと思います。
しかも、驚くべきことに、ちっとも説教くさくも、古くさくもなく、時代離れもしていない。むしろ、若い世代が、新鮮に新たに日本の和のすばらしさを再発見できるような、そんな番組になっていたと思います。これは、すばらしい。日本にやってきた留学生たちにも、ぜひ、見せたいと思いました。


和食


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