これまで、十数回におよぶヨーロッパひとり旅ということで、苦労した経験は数知れませんが、今でも、ありありとその苦労を思い出すのは、ほとんど、レンタカーで苦労した経験です。
それも、ほとんどは、町についてから、ホテルに到着するまでの経験なのです。ヨーロッパでは町と町とを走るのにさして困難はありません。右ハンドルか左ハンドルかも、あんまり関係ありません。道は、すいているし、合理的で、田舎道など、とくにこれこそドライブの醍醐味だという至福のドライブが味わえます。問題は、街についてからです。そこからが、超難易度Eの体験のはじまりてす。
思い出すままに書き連ねてみます。
まず、ロミオとジュリエットの町、北イタリアのヴェローナ(日本人でクルマできたのはおまえが初めてだと言われた。ホテルの人がつきそってクルマ車庫につれていって、手取り足取り駐車場の入れ方を指示してくれて、ようやく・・・入った。こんなところに駐車できるのかー、不可能、と思われた駐車場。中世の荷物おきば。とにかく、クルマは動かさずに何度もハンドルをめいっぱい切ってから、ほんの少しクルマを動かす、というがポイントだった・・・)
ついで、グリューネヴァルトのあるフランスとドイツの国境の町、コルマール(中世の馬小屋が駐車場だった。とうてい私には入れることができず、SOSを発して、ホテルの人に入れてもらった。翌朝、自分でクルマをだすときには、こすってしまった! あとで修理代を請求された。こんなところ、駐車できないよ)。
そして、オーストリア、モーツァルトの町、ザルツブルク。(旧市街地、モーツァルトの生家のすぐ近くのホテル。そこには、入ろうにも、入り口に厳重なかんぬきがでている。途方にくれた。入り口の無線マイクで、ホテルに連絡すると、そのかんぬきがするするとぬけて、旧市街地に入れるしかけだった・・・そんなこと、いって叫んでみるまで、分からないぞ・・・)
もひとつオーストリアの古都インスブルック。(旧市街地の真ん中の、モーツァルトも宿泊したというホテル。どうやってもたどりつけない。途方にくれて、バスから降りてきた、バスの運転手にすがりついて、となりにすわってもらって、指示してもらって(英語がまったくはなせない、オーストリア語?、みぶりてぶりだけ)、ようやくホテルの近くに・・・そこでバス運転手はおりていってしまったのだが、そこからさき、さらに困難が待ち受けていた・・・思い出したくもない・・・なんでホテルに到達できたのか、いまでも分からない)
さらに、イギリスはウェールズのバース。(中世のローマ都市、お風呂のバース。ホテルは見えているのに、そこに到達できない・・・)
そして、イタリアの古都ヴェネツィア(もちろん、ヴェネツィアにはクルマでは入れない。そこでヴェネツィアに入る前に、レンタカーをリターンするのだが、おいおい、どこに返却すればいいんだ。それがまったく分からない・・・)。
こういうところは、思い出しても身の毛がよだちます。私が目的地に到達できたのは、幸運だったのか、もういちどやれと言われても、もはや、できないと思います。
こういうところは、はっきりいって、レンタカーなどしていかないほうが良いです。
有名な古い町は、列車でいけます。そしてついたら、そこからタクシーでホテルに行くべきです。
ところが、レンタカーでいってしまったのです。よりによって、古い古い古都のその都心にある、それもまた、小さな古いホテルに。
そこから、すべての困難が始まります。
(でも、すべての困難が、のちのち、忘れがたい思い出に変わる、というのも、これもまた真実なのです)
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安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照
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