さて、学生たちは、このような砂漠地帯で、どうして暮らしているのだろう。学食はないわけではないが高くてまずいと言う。日本館にはそもそも学食もない。朝食からふくめて、食事は、いっさい自分でなんとかしなければならないのだ。そこで、みんなどのような自炊しているのだろうか。推測するほかはない。で工夫する。
そこで、私も、ほぼ朝食と夕食は自炊になってしまった。そもそも一日出ていて、疲れて帰ってきて、その後で、さぁ一人で外食だ、という気には到底ならない。
さて、大河ドラマ「真田丸」で今や時代の寵児となった堺雅人が主演した「南極料理人」という変な映画があったのをご存じだろうか。南極越冬隊の料理人が堺雅人なのだが、隊員たちは、次第に「ラーメンが食べたい」というオブセッションに支配され、半ば狂っていくというお話しだった。日本人にとっての追いつめられると狂うほどのソウル・フードが「ラーメン」だということを、南極越冬隊が、真に迫って主張していた。極限に追いつめられると、人間の食への欲望が、ラディカルに現れてくる。この映画では、それは「ラーメン」なのだと主張していた。そうかな、と疑問符をつける人もいるだろう。映画だから単純化しているのかもしれない。私も、追いつめられて、さいごにたどり着くのが「ラーメン」かどうか。そうではないような気がする。でも、日本を離れるとラーメンを食べたい気持ちは、よく分かる。パリに来ると、「蕎麦」や「うどん」では物足りないのだ。今回、ごはんや納豆や蕎麦を持ってきてみて、よく分かった。なんだかぴんとこないのですね。この、こってりしたヨーロッパの風土では物足りない。
で、パリ国際大学都市で、ラーメンを作ることになる。日本でも週に一回くらいは作るが、私の好みが「豚こつ」でも「こってり」でもなく、中華風のあっさりしたものだから、自分でつくる。前回のパリ国際大学都市滞在中に思いついて独自に工夫・開発して、その後、日本でも改良と研鑽を重ね、今回にいたっている(ちょっとほらが入っている)。
作り方ですが、まず、スーパーで「中華めん」を入手する。近くのスーパー(Framprix)で「AYAM」なる麺を入手しているが、これは、日本で買う中華麺より少し劣るが仕方ない。日本のいわゆる縮れた「ラー麺」を私はあまり好まない。ストレートな中華麺のほうが良い。麺とスープは別々につくる。スープは前回は「マギーブイヨン」のチキンコンソメなどを応用して使ったが、今回は日本から中華スープの素「シャンタン」を持参した。これに醤油をすこし追加する。これで、私的に、日本のラーメンよりもラーメンらしいものが出来上がる。しかもあわせてたった3分。これでわれながらおいしい。おそらく各国からの留学生たちも、いろいろと苦労して自炊していることと思います。
この巨大なパリ国際大学都市の周辺が、フランス料理や外食の砂漠地帯であることを思うと、あらためて人類の食文化の不思議さと奥深さに思いをいたさざるを得ません。
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安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照
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