シネラの配布資料には「公開当時作品評価は低かったが、簡素なセット、原色を強調し突然切り替わる照明など、鈴木清順監督独特の美学が溢れており海外でも高く評価された」とある。なるほど、そのとおりだろう。
今回はじめて観て、強く印象に残るのは次のようなことだ。第1、男同士の強い関係(やくざの親分・子分関係、渡世人の義理と人情、兄いと弟分との上下関係)などが、今日から見ると滑稽なくらい重要なこととして描かれている。これは、ほとんど男同士の「恋愛」を描いている映画ではないか。恋愛と裏切りのドラマツルギー。なるほど、ヤクザの出入りというのは、ある意味、男同士の恋愛感情のもつれから生じることなのかもしれない、などとあらぬことを考えた。それと関連して第2に、男が徹底的に女を遠ざける映画でもある。ほとんど「女性嫌悪(ミソジニー)」の域にまで達している。今日では、上野千鶴子によって有名になった「女ぎらい(ミソジニー)」という概念が、ほとんど純粋なまでに映画で描き出されている貴重な例かもしれない。男同士の恋愛の至上さにくらべて、男女の恋愛の意味がことさら貶められて描かれている。
なるほど、これも鈴木清順映画の特徴のひとつだろう。


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