卒論・ 題目と目次づくりのセオリー(2014)

題目: キーワードを2、3ついれる。研究対象と研究方法とが分かるように「○○についての社会学的研究」とか「・・・社会学的考察」とかがもっとも標準的。
    (注意・卒論を社会学にしていくことを意識しよう。たんなる考察ではなく、社会学的な分析や考察にしていこう。)

序章 問題の所在と、研究の目的
   ・関心をもったきっかけ、エピソード、個人的経験、家族や友人など身近な人の出来事、問題に関心をもった経緯、論文への導入・・・
   ・今回、とりくんだ、目的をはっきりさせる。この問題に取り組んだのは、なぜか? どこに、どんな問題がありそうなのか。
   ・どんなことを解明したいのか。それが「研究の目的」だ。それを、ばくぜんとでもいいから、はっきりと述べる。
1章 問題の歴史
    歴史・・○○のような社会現象は、いつから、現れたのか。いつから、顕著になってきたのか、いつから問題になってきたのか。
    →統計的なデータで、推移や流れを示すのが、もっとも効果的、等。
    比較(国際比較・地域比較等)・・のような社会現象について、外国では、どうなのか。欧米ではどうか。アジアではどうか。
    国際的な統計、地域比較のデータなどあれば示すと分かりやすい。【図書館のレファレンスコーナーには様々な統計や白書がある】
    日本でも都市部なのか地方なのか、地域差があるのかどうか等。
    研究者・・のような社会現象について、考察している学者や研究者には、誰がいるか。いつから、そういうことが研究されているのか。
    誰が、代表的な研究者なのか(いろんな分野がある。政治学、行政学、経済学、福祉学などもカバーする)。そして、数名いることを示す。
2章  先行研究のレビュー
    研究者の紹介と先行研究のレビュー・・のような社会現象について、代表的な研究者を数名あげて、その代表作を、紹介する。
     ・著者の紹介 ・代表作の紹介 ・要約 ・研究対象 ・研究方法 ・キーワード ・理論枠組み ・その人の分析や結論の特徴 等。
    批判的検討・・・その分野の代表の先行研究のレビューをして、それが、自分の対象としての問題に応用できるかどうかを検討する。
     ・時期や時代がことなっているのではないか。昔の現象と今の現象。キーワードや考え方、価値観や意識の違い。
     ・時代を超えて、昔の代表作は、今でも当てはまるか。当てはまるなら、それを応用する。
     ・当てはまらないから、どこが、当てはまらないか。方法か、理論か、キーワードか、枠組みか、手法か、技法か・・・
    建設的な枠組みの形成・・・先行研究のレビューをふまえて、社会学では、こうした○○という社会現象について、どこまで解明されているのかが、分かった。
    そして、どこから先が、まだ分かっていないのか、まだ未解明なのか、が見えてきた。
    では、その問題を、この論文では研究対象とする。
    その研究の方法としては、どんなキーワードや概念、どんな仮説、どんな理論的な枠組み、どんな予想や仮説をもってあたるかを述べる。
2章の2 概念の整理と論点の整理(問題の整理)
    先行研究のレビューをふまえて、基本的なキーワード、概念の整理を行う。
    ついで、先行研究のレビューをふまえて、論点の整理を行う。
    論点の整理とは、いろいろな論者によって、問題の所在や、概念や、調査や分析が行われてきたが、それらの主要な論点を整理して、自分が、この論文のなかで、継承する論点を示すことである。キーワードの継承と批判的発展、理論の継承と批判的な発展、なども含む。

3章  仮説の形成
    先行研究のレビューを踏まえて、今回のリサーチでは、どんな予想、どんな仮説を立てるか。それを述べる。
    仮説の形成:仮説のまえに、まず、予測・予想をたてる。
    予想・予測には、「原因の予想(何が主要な原因なのか)」「担い手の予想(だれが原因となっているのか、どんな集団が原因となっているのか、どんな人や集団が、問題解決の担い手になりそうなのか)」「方法の予想(いままでのやり方でうまくいかなかった、のだから、違うやり方でないといけないのではないか、ではどんな違う方法や手法がありうるのか、など)」「解決策の予想(問題にたいして、どんな解決策がありうるのか、どうしたら問題を解決できるか、解決までいかなくても、より問題を軽減できるか)」

仮説とは・・・
仮説4条件
①もっともらしさ(plausibility)
 仮説は,検討中の問題の現象について,もっともらしい,もっとも理にかなった説明を与えるものでなくてはならない。
②検証可能性(verifiability)
 仮説は実験的に検証可能でなくてはならない。提案された仮説は経験的事実に照らして確証ないし反証しうるものでなくてはならない。
③単純性(simplicity)
 同じ程度の説明能力を有するいくつかの仮説があるとすると,より単純な仮説を選ばなくてはならない。
④経済性(economy)
 単純な仮説ほど,それを実験的にテストするのに費用や時間やエネルギーが節約できる

ようするに、リサーチに向かっての設計図や地図をかくこと。

4章  社会的事実のリサーチ
 社会的「事実」をリサーチする。事実のリサーチには量的なものと質的なものと、様々にありえる。
 まずは、対象にあわせて、リサーチの方法を選択する。
 対象の選定、リサーチ方法の選定、だんどりや経緯、やり方や工夫。
 そして・・・
 社会的事実を、記述(描写)する。可能なだけ詳しく具体的に細かく・・・
 インタビューなどでも5W1H(What,When,Where,Who,Why,How)を考えながら、できるだけ詳しくインタビュー内容以外のことを、再現する。記述する、厚く記述する。うすい記述ではだめ。詳しい記述から、何かが見えてくる、記述から何かがうったえかけてくる・・・

5章  分析

6章 結論あるいは考察


大学院進学について

 

大学院のすすめ

いまでは、大学3年生になると、もうさっそく「就職活動」に突入することと思います。3年から4年生にかけてほと んど一年もの間、就職活動に翻弄されて、大学にもなかなか出てこられないようになって、そして、思い通りのところに就職できる人は、どれくらいいるので しょうか。ほとんどの人は、偶然に左右されて、そして思ってもみなかったような業種や企業に就職していくのではないでしょうか。それで後悔はないでしょう か。ひとたび就職して「社会人」となれば、それはもうほとんど後戻りのできない別次元の人生に放り込まれることになるのです。

このように駆け足で就職先を見つけて、社会に出て行ってしまって、それで、本当に後悔はないでしょうか。本当に自分のやりたいことを見つけだして、社会に出て行けるでしょうか。

立 ち止まって、大学院もひとつの進路の選択肢だと言うことを、考えてみて下さい。もし、ご家族に理解があり、家計にゆとりがあれば、大学院の進学を考えてみ ることも、ひとつの選択肢だと思います。そうすれば3年生から4年生にかけての一年間を、就職活動に右往左往することなく、有意義に過ごすことができま す。そして卒論にはやくから本格的に取り組むことが出来ます。自分のテーマや、自分のやりたいことを探す時間もたっぷりとれるはずです。そして大学院に進 学してからでも、就職活動は遅くありません。近年では、3、4年生の時に就職活動するのではなく、大学院に進学してから就職活動をして、それで自分の専門 にみあったところに就職していく人も増えています。もちろん、教職や研究職につこうとさらにがんばる人もたくさんいます。

大学院への進学が、人生の選択肢のひとつを拡大するのだと考えてみてはどうでしょうか。

もちろん、大学院への進学には、適性や能力も重要です。自分の適性や能力は、自分にはなかなか見極めがつきません。ぜひとも受験相談などに来て下さい。

 

共生社会学コース案内

現代社会を、社会学・福祉社会学と宗教学・人類学という切り口でとらえながら、社会科学の方法論をもって現実の社会のリサーチの方法と理論とを学び ます。社会調査士や専門社会調査士の資格取得が出来るカリキュラムも整備されています。またフィールドワークや海外でのリサーチも行っています。

共生社会学の構成は、社会学・福祉社会学の研究室と、宗教学・人類学の研究室とから成っています。こうした専門のスタッフが集まって共通の目標「21世紀の 新しい共生社会」のあり方を研究しています。現代社会を、社会学・福祉社会学と宗教学・人類学という切り口でとらえながら、社会科学の方法論をもって現実 の社会のリサーチの方法と理論とを学びます。社会調査士や専門社会調査士の資格取得が出来るカリキュラムも整備されています。また積極的で活発なフィール ドワーク調査や海外でのリサーチも行っています。また在学中に海外の大学院へ留学する人もふえています。

大学院生の、およそ三分の一は九州大学の学外から(他大学や社会人など)、三分の一が九州大学文学部(社会学・地域福祉社会学研究室、比較宗教学研究室)や教育学部(人類学)などの卒業生、三分の一が留学生(中国、台湾、韓国、英国、ベトナムなど)となっています。

また共生社会学コースでは「社会調査士資格認定機構」による「社会調査士、専門社会調査士」資格を取得することが出来ます。社会調査の技能を身につけて、行政やマスコミ、企業に就職した時に、世論調査、住民意識調査、マーケティング調査など様々な分野に応用することができます。

 

共生社会学コースの大学院生の研究テーマ(過去5年間の大学院生の研究テーマの一部)

  • 「若者のキャリア形成の社会学的考察-若年層の離職行動に関する意識調査を中心にして-」
  • 「南インドにおける映画的経験の創造性」
  • 「チリの貧困空間の人類学」
  • 「ハーバーマスの公共性概念」
  • 「ラオス山地民の観光人類学」
  • 「宝満山信仰の環境歴史学的研究」
  • 「老いの文化人類学」
  • 「医療と宗教」
  • 「中国少数民族と国家」
  • 「オーストラリア先住民に学ぶ共生論の可能性」
  • 「現代中国の都市における夫婦関係に関する考察-平等性の視点から」
  • 「シニアボランティアと中間支援組織の社会的機能についての研究-韓国・ソウルにおける事例から」
  • 「病院ボランティア・コーディネーターの実態と機能に関する社会学的考察」
  • 「道路交通社会に関する考察-福岡市交通量調査を例として」
  • 「社会階層と地位達成志向-権威主義とネットワークの視点から」
  • 「在 日韓国人高齢者に対する福祉:エスニック・エルダリー論の視点」
  • 「福岡市の都市下層における野宿者ネットワーク-野宿生活の意味世界」
  • 「ボランティア活動 に対する予期的社会化-釜山広域市の青少年ボランティアの評価-」
  • 「中国の都市部社区についての実証研究-大連市を例に」

 

共生社会学コースの卒業生の進路(過去5年間の実績)

  • 行政職(法務省、人事院など)
  • マスコミ(読売新聞社記者)
  • 企業(NTTドコモ、大手調査会社、パルコ、 人材派遣会社、日本生命、韓国大手IT企業など)
  • 留学(アメリカ・ニューヨーク、韓国ソウル大學校など)
  • 博士課程への進学

 

受験案内

大学院には入試(専門科目、外国語、論文)もありますが、重要なのは、研究関心やテーマが、共生社会学コースとうまくマッチするかどうかです。受験 を考えている方は、ぜひ、事前にEメールなり、手紙なり、でご相談下さい。そして一度、研究室や教員をご訪問下さい。また、ご訪問下されば、過去の試験問 題を見ることができますし、受験対策や大学院での生活について、現役の大学院生がお答えします。

共生社会学コースの試験課目

  • 一日目:英語、専門科目試験(社会学・福祉社会学や宗教学・人類学の基礎知識、研究計画などの論文試験、社会学・福祉社会学の場合には、その他に社会調査統計関連の問題、その他)
  • 二日目:面接試験(研究関心、研究方法、研究計画や将来展望、その他)

共生社会学コースの試験日程と募集人員

  • 前期試験:毎年9月上旬
  • 後期試験:毎年2月上旬(詳しくは、人間環境学府担当の九州大学貝塚地区事務部学生第2係(教育学部)にお問い合わせ下さい。)
  • 募集人員:定員は約7名(修士課程)。

 

共生社会学コースへの進学者(過去5年間の実績)

  • 学外(早稲田大学、関西大学、埼玉大学、佐賀大学、福岡女子大、筑波大学、山口大学、一橋大学、金沢大学、神戸市立外語大、など)
  • 九州大学(文学部、教育学部、21世紀プログラム、など)
  • 留学生(中国、韓国、台湾、英国、ベトナム、など)

共生社会学の開設課目

【修士課程】人間共生論、文化人類学、コミュニティ構造論、コミュニティ行動論、福祉社会学、ボランティア・NPO論、地域共生論、都市社会学、理論社会学、社会システム論、計量社会学、社会調査論、地域社会学、地域社会計画論、ジェンダー論

【博士後期課程】人間共生論講究、文化人類学講究、福祉社会学講究、コミュニティ論講究、共生社会論講究、理論社会学講究、計量社会学講究、地域社会学講究

 

ブックガイド

共生社会学・安立研究室の受験を考えている人たちに受験準備として、何冊か、お薦めしておきたいと思います。

  • 『アエラムック社会学がわかる』(朝日新聞社)。コンパクトに現在の社会学のトピックスが分かります。
  • 『社会学』(安立清史・杉岡直人編、ミネルヴァ書房)。社会福祉士のための養成講座の一冊ですが、社会学と福祉学との双方について、そしてその架橋について考えています。
  • 『高齢者NPOが社会を変える』(田中尚輝・安立清史著、岩波ブックレット)。高齢化という社会の変化・変動が、高齢者のNPO形成を通じてどこまで社会を変えられるのか、というテーマを、アメリカと日本というフィールドで考えました。
  • 『現代社会学への誘い』(満田久義編、朝日新聞社)。社会学が、現在、どんなテーマととりくんでいるか、について一望できます。
  • 『介護系NPOの最前線』(田中尚輝・浅川澄一・安立清史著、ミネルヴァ書房)。福祉NPOという切り口をとおして社会の変化・変動や、社会を変えようとする人たちの実像をフィールドワークする方法を、示していると思います。
  • 『社会学小辞典』(有斐閣)。社会学の基礎概念や単語をすばやく理解するうえで定評があります。

その他、社会学の教科書や事典はたくさんありますが、大学院の入試においては、そのような受験勉強が本筋ではありません。研究テーマがどんなものか。それ にどれだけ熱意や関心をもって取り組んでいるか、取り組もうとしているか。そしてそのテーマとわれわれ研究室スタッフとの共通点や共鳴点があるかどうか、 こそが重要になります。

 

研究室受け入れ方針

九州大学 大学院人間環境学府 共生社会学コース(安立研究室)の大学院受け入れ方針は次のとおりです。

「社会学や福祉社会学の方法を学び、現代社会の社会問題を具体的な調査やフィールドワークによって研究していくことを志す人で、将来的な目標のはっきりしている人」を受け入れたいと思います。「将来は研究者になりたい」という積極的な目標を持っている方を優先したいと思いますが、研究者は大学の教員ということに限りません。行政でもシンクタンクでも企業でも社会学的な調査や研究部門の必要性は高まっているからです。修士課程で社会学や福祉社会学の方法を学んで、行政や企業の専門職につきたいという方も歓迎いたします。しかし「自分のやりたいことがまだ見つからないから」等のモラトリアム的な理由の方はご遠慮下さい。大学院のたった数年でそれを発見することは困難だからです。

大学院では、学部で社会学を専攻した人に限定していません。社会学や福祉社会学をこれまで学んだことのない人や社会人、そして留学生でも、社会学を学ぶ意思と能力、そして適性があれば受け入れます(まだ社会学を詳しく学んだことがない人には、こんな社会学教科書がお勧めです。ここをクリック)。この「社会学への適性」は、なかなかすぐには分かりません(本人にとっても、われわれにとっても)。社会学は、社会について理論的・哲学的に研究することもあります(現在の九州大学ではそういう方は受け入れていません)、数量データ等から社会について実証的・数理的に解明していこうとする方向もあります。またフィールドワークをもとにして、現実社会の具体的な問題や課題を考えていこうとする社会学もあります(安立研究室はこの方向です)。社会学に関する本を読むだけでなく、フィールドワークや社会についても、その適性があるかどうかが重要です。留学生や社会人の方は、まず研究生になることをお薦めしています。そこで社会学を学んでみて、自分の問題関心ややりたいことと、社会学や福祉社会学とが交差する、と思ったらぜひ大学院への進学を考えて下さい(アメリカの社会科学系の大学院では、学部を卒業してすぐに大学院に進学することは稀です。いちど社会にでて仕事をして社会経験を積んで、問題関心を具体的にはっきりと持った人が、自分への投資という積極的な意識で大学院へ進学していると思います。私たちも、そういう方向を目指したいと念じています。)

大学院に入学したら、安立研究室で調査研究する共同研究プロジェクトに参加して、オン・ザ・ジョブトレーニングという形で、フィールドワークやアンケート調査などに関わっていただきます。社会学や福祉社会学の調査や研究は、本を読んでいるだけで身に付くものではありません。共同研究プロジェクトの中で次第に身に付いていくものだと思います。「自分のやりたいことは決まっているから他のことはしたくない」「共同作業は不得手だ」「関心のないことには参加したくない」と思う人は、社会学や福祉社会学、共生社会学には向いていません。他の道を選ぶことをお薦めします。

国際比較や比較社会学の方法も、これからたいへんに重要になってきます。留学経験や海外での生活などを経験した方を歓迎します。将来は留学したり、国際社会で働いてみたい、と考えているような人も歓迎します。また実社会での問題を具体的に経験したり、それを研究課題にしたいと考えている人なども歓迎します。やりたいこと、問題や課題がはっきりしている人が、それを調査研究対象として学び見つめ直したいというような問題意識が大切です。社会学や共生社会学を学び、調査し研究するのに、年齢や性別は関係ありません。

 

留学生受け入れ方針

このところ海外からの留学生が増えてきました。キャパシティの問題からも、このまま受け入れ続けるわけにはいかなくなったので、いくつかの制限をつけていくことにします。

  • まずは研究生になって勉強して下さい。(研究生になるのにも制限があります。詳しくは後述)
  • 研究生になっても必ずしも大学院に進学できるとは保証できません。(大学院人間環境学府 共生社会学コースには留学生枠というものがありませんから、一般の入試と同じ試験を受けてもらうことになります)
  • 社会学や社会科学の基礎学習をした人でないと入学は困難です(たんに日本語だけを勉強してきた人は、だいぶ苦労することを覚悟して下さい)。
  • 出身大学の先生の推薦状を提出して下さい。
  • 日本語試験一級でないと受け入れられません。
  • 日本留学生試験に合格した人を優先します。
  • 経済的な保証がないと受け入れません(入学後にアルバイトに時間を取られそうな人は短期間での大学院合格は無理です)。
  • そうした困難にもかかわらず、大学院人間環境学府で学びたいという、強い意志と意欲のある人を歓迎します。

研究生の受け入れについて

  • 繰り返しますが、研究生になっても大学院への進学は保証されていません。研究生の期間に勉強をして一般の大学院試験を受けることになります。
  • 身元保証、経済的保証がないと受け入れられません。
  • 日本語能力やこれまでの大学での成績などについての書類を提出して、面接を受けて下さい。
  • これまでまったく社会学や社会科学を学んだことがない人は、これからは受け入れ困難です。
  • これまでの履歴、経歴、大学でどんなことを学んできたか、これから何を学び、どんな調査や研究をして、どんなことを解明してみたいのか、研究計画書、企画書のようなものを作って持参し、面接をうけて下さい(メールしてもらえば、随時面接をします)。

 

卒業論文について

論文作成のスケジュール

卒業論文や修士論文の作成プロセスを、おおまかに示してみます。基本は、テーマにしたがって、データ収集やフィールドワークを行い、それを分析して論文にしていく、ということなんですが、ふつうはそんなにスムーズに進むとは限りません。いや、そう進まなくて苦しむのがふつうです。それぞれの段階で、Plan(計画)、Do(実施)、See(評価、反省)→再び、Plan、Do、See というフィードバックをして深めていくという道のりを歩むことになります。たいへんですね。

でも、これが調査や研究というものです。たんなる勉強ではなくて。つまり自分の力で切り開いて、発見して、発展させていく、ということです。これはcreative な過程なんです。面白いはずです。わくわくするはずです。そういう面白さをぜひ経験したうえで大学を卒業していって下さい。

 

【1~4月】着想、発想、構想、計画 段階

(どんなフィールドの、どんなテーマで、どんな内容の、調査研究そして論文を書くのかについて思いを巡らす時期)

(試行的に、様々なフィールドワークに参加したりして自分にフィットするテーマを探す)

*指導内容

この時期の指導としては、テーマの設定、テーマの具体性、取り組み方の注意などが主なものです。ホームページに掲載している「成功する卒論、失敗する卒論」で示しているように、大きなテーマ、一般的なテーマに取り組むと、だいたい失敗するパターンです。そのあたりを注意しながら指導します。

 

 【4~6月】着手段階・データ収集 フィールドワーク段階

(テーマを定めたあと、資料収集、インタビューや聞き取り調査、フィールドワーク、訪問調査、参与観察、アンケート調査、統計資料収集などを行い、論文の素材、論文の材料を集めていく段階。フィールドワークを基礎とする安立研究室では、まずは自分の力でオリジナルなデータづくり、フィールドワークを行うことを奨励しています。)

(アンケート調査はたいへんで難しいものです。簡単に出来るとは夢にも考えないで下さい。初心者が一人でこなせるものではありません。じっくりと指導や準備をして実施すべきもので、チームでやるべきもの、着手からまとめまで数年かかるものだと観念して下さい)

*指導内容

この時期の指導としては、フィールドワーク訪問先の紹介や基礎文献の紹介などです。インタビューやフィールドワークの前には、必ず事前準備や事前勉強をしていくこと、訪問して聴くべき内容についての指導、訪問調査における基本的な礼儀や態度などの指導が中心です。

 

【7~9月】分析への着手段階

(集めた素材や材料やデータを、どう料理していくのか、分析に着手して苦しみ呻吟する段階)

(この段階での分析は、いろいろですが、まずはデータの分類、比較、共通性と相違性の発見、そしてそこから次なる分析へのヒントや手がかりを探す、という問題発見型、課題発見型の分析になるでしょう)

(こうした分析に着手すると、不足しているデータ、足りないフィールドワークやインタビュー等に気づかされるはずです。夏休みですから、そうした不足を補うラスト・チャンスです。)

*指導内容

この時期は、まずは、前期の成果を聞いて、どのくらいのことが、どの程度見えてきたのかを報告してもらい、その中から今後の分析やテーマに関わる部分の深め方を指導します。基本は、大きく広げないこと、小さな具体的なテーマに取り組んで、そこから突き抜けていって、結論部では広がりのある考察へとたどり着くことが成功への道です。前期のフィールドワークだけで、あまりに一般化したり広げすぎないことがポイントでしょう。

また、この時期には、少しずつ書き始めなければなりません。そのため、論文題名について指導したり、章立ての作り方について指導を始めたりします。

夏休みは、まとまった時間を連続して作れる時期です。4年生にとっては、卒論に真剣にとりくむまたとない時間、人生でもう二度とこのようなことに取り組むことのない時間かもしれません。できるだけアルバイトその他のいつでも出来ることからは離れて、集中してもらいたいと思います。

お薦めは、図書館に毎日、朝から夕方までこもることです。毎日、図書館。それをたとえば1ヶ月できれば、これは凄いです。出来る人は、あまりいないのではないかと思います。社会人になったらもうそのようなことは二度と出来ないのですから、人生一期一会と念じて取り組んだらどうでしょうか。

 

 【10〜11月】本格的分析段階

(自分のデータ、整理分類を踏まえて、本格的な社会学的分析に着手します。フィールドワークを基礎とする安立ゼミの卒論では、現実の多様なデータの中から、分類し、タイプ分けをして、タイプ相互の間の関係性、移行関係、発展関係などを発見していくこと[社会的現実の類型化、相互連関、相補性、展開関係、転換関係など]。また、そうした社会的事実や現実を作り出していく人間や集団のあり方の把握[個々人の作り出す社会関係、集合関係、グループ、集団、組織関係など]、そしてそうした動きが、社会をどのように変化させたり、改変したりしていくのかの分析や展望[社会変化、社会変動、社会政策、社会展望など]、というところでしょうか。もちろん、これだけではありませんが。)

*指導内容

・社会学的分析とは何か、それにどう取り組むか、というのがこの時期のメインテーマです。分析というのは、難しいです。「失敗する卒論」のひとつのパターンとして、一生懸命調べて、調べたことを「紹介」するだけで終わってしまうというものがあります。様々な聞き取りや資料集めやで、材料は豊富にあったとしても、それを紹介するだけでは「論文」にはなりません。調べたことから、分析をして、自分にとってオリジナルな何かを導き出すという作業が不可欠です。その手続きが分析なんです。ホームページには、様々な分析のパターンを提示してありますが、これは一筋縄ではいきません。時間もかかります。毎年、この分析で4年生はみんな苦心惨憺するのです。

 

【11〜12月】構成・執筆の最終段階

(1年以上にわたる取り組みの集大成としての論文執筆です。じつは、この時期に書き始めるのでは、すでに遅いのです。もっと前から、書いてはこわし、書き換えて、書き直して、改良してくるプロセスが大切です。この時期は、最終的に、起承転結の構成や、章立て、などを決定して執筆に没入する時期です。)

*指導内容

考えてから書くのだと思っている人も多いと思います。違います。書きながら考え、考えながら書いていくのです。清書になるようなもの、完成されたものと、途中のプロセスは全然違います。考えたことだけが文字になるとしたら、ずいぶんとやせこけた具体性のないものになってしまうでしょう。書きながら指先が考えていく、新しい発想やアイデアが指先から生まれてくるようになると、本物です。そうなるためには、蓄積がなければなりません。手触りのある具体的な蓄積としてのフィールドワーク経験や出会いの記憶が、この指先で考えるという作業を支えるのです。

 

【1月】卒論・修論提出

評価採点(ホームページに評価・採点の基準があります)

・努力して苦労して書いているか、新しい発見があるか、楽しんで書いているか、構成力や構築力はどうか、基本を勉強したうえで、オリジナルを作ろうとしているか、文章に心が行き届いているか、などなど。

*指導

卒論を仕上げたら、コピーをして、お世話になった方々にお渡しするように指導しています。インタビューや聞き取り調査でお世話になった方々には、ぜひきちんと報告して下さい。そして大学まで生活を支援してくださった父母にも感謝をこめて卒論を捧げて下さい。

 

論文の構成

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社会学的分析とは何か

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ボランティアやNPO調査

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卒論は長距離走

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先行研究のレビュー

【ポイント】

  1. 卒論や修論などの論文作成における「先行研究のレビュー」は、専門の学会誌やジャーナルから行う。(*本や書籍の場合は、一般向けの概説になっていることが多い。報告書は、調査の結果のレポートが中心になっている)
  2. あまり古い論文ではなく、最近の3~5年間くらいの中から探す。(*調査や研究のためには、最近の動向や方法をふまえる必要がある)
  3. 雑誌も、手当たり次第ではなく、評価の高い学会誌、査読つきの学会誌などを中心に探す。(*学会誌は、その分野の研究者なら、だれでも読んでチェックしながら、切磋琢磨している論文である。学会誌への掲載にあたっては「査読」システムがあり、投稿された論文を、何人もの専門家が読んで、疑問点や問題を指摘し、それを著者が訂正した上で、はじめて学会誌に掲載されるシステムになっている。だから、内容的にも、専門家も認めるしっかりしたものである(ことが多い)。)

 【文献検索の仕方】

  1. まず、学会誌などの専門のジャーナルのデータベースへアクセスして、キーワード検索などで、論文を探す。社会学の場合には、日本社会学会の文献データベースにアクセスする。(*インターネットなどで闇雲に探すのでは成果は得られない)
  2. 社会学会のデータベースなどでは不十分にしか検索出来ない場合には、九州大学図書館のサイトから、学術雑誌データベース(サイニーCini)などで、キーワード検索する(九州大学の学内限定の方法)。これは巨大な文献データベースなので、様々な分野の文献があがってくる。社会学からテーマや方法がそれていってしまうこともある。(*だから、まず社会学文献データベースで探し、うまく先行研究があがってこない場合にこちらの方法をためす)
  3. キーワードの選択も重要なポイント。あまり一般的なキーワード、漠然としたキーワードだと、ヒットする文献が多すぎて、選び出すのがたいへんになる。(*自分のキーワードを、しだいに一般的な漠然としたものから、焦点の定まった限定したものにしていくことも、文献検索作業におけるポイントのひとつ)
  4. 新聞のデータベースなどから、関連する社会現象や記事を下調べしておくことも重要。九州大学図書館のサイトから、学内限定だが、過去50年間の朝日新聞のデータベース(聞蔵Ⅱ)にアクセスできる。最近1,2年間の記事の中からキーワードでヒットするかどうかを調べて、キーワード関連の知識を高めておく。

【文献のキャッチ】

  1. 文献そのものをキャッチしてコピーしたり、読むためには、社会学データベースなどで検索した雑誌の、その年のその号のその№が、九州大学にあれば話はかんたんである。OPACなどで探してかり出す。
  2. 九州大学にない場合、Webcat Plus などで、他の大学にあるかどうかをチェックする。あればコピーを依頼する(有料→図書館を通じて依頼する)。
  3. ももちの福岡市総合図書館や、福岡県立図書館などで、探す(ただし学術雑誌や学会誌のあるものは限られている)。
  4. その他、専門図書館を探す。唐人町の「ふくふくプラザ」2階の「福祉図書・情報室」には、かなりまとまった福祉関係の文献がある。「福岡市NPO・ボランティア交流センターあすみん」にもNPO・NGO関係の文献が集まっている。「あいれふ」の図書室、春日のクローバープラザの「あすばる」などにも図書がある。その他、さがすと、図書や情報は、いろいろなところにある。

 【代表的な学会誌】

  • 社会学一般だと『社会学評論』などが代表的な学会誌です。
  • 家族だと、家族社会学会の発行する『家族社会学研究』がもっとも権威あるものです。
  • 環境だと、環境社会学会の発行する『環境社会学研究』です。
  • 福祉の社会学は、福祉社会学会による『福祉社会学研究』
  • 社会政策では、社会政策研究ネットワークによる『社会政策研究』
  • 社会福祉学では、『社会福祉研究』(鉄道弘済会)などが、定評あります。
  • 日本社会福祉学会の『社会福祉研究』。
  • 地域福祉だと、日本地域福祉学会の『日本の地域福祉』。
  • 高齢者福祉だと、日本老年社会科学の『老年社会科学』がありますが、これは医学・保健学の流れから、多変量解析など、やや統計的な処理を優先する傾向があります。
  • NPO関係では日本NPO学会の『ノンプロフィット・レビュー』
  • ボランティア関係では、大阪ボランティア協会の『Volo』などが参考になるでしょう。学会誌ではなく、研究者のためのものではないのですが。
  • 全国社会福祉協議会の『月刊福祉』も、社会福祉協議会関係の色が強いですが、参考になるかもしれません。
  • 大学の紀要(大学ごとに、その大学に所属する人たちが、毎年、書いているもの)は、学会誌にある「査読」システムがないことがほとんどです。つまり内容的なチェックを受けてないものが多いが難点です。
  • もっと本格的には、英語の学会ジャーナルが、一番です。

こうして、いくつか論文を読めば、その分野で、だれが最先端なのか、だれが第一人者なのか、だんだん分かってくる。そうしたら、その人の書いたものを集中的に読むのが王道でしょう。