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佐藤真監督の「Self and Others」(2000年)を観ました(福岡市総合図書館シネラにて)。1時間たらずの映画ですが、これは凄く深いドキュメンタリー映画でした。幼い頃、脊髄カリエスを患ってわずか36歳で亡くなった牛腸茂雄という写真家の足跡を、とくに「Self and Others」という写真集を一枚一枚丁寧に紹介し、関係者の声を聞き、そこから浮かびあがってくるものをとらえた、佐藤真監督の声にならない声が聞こえてくるような映画でした。「阿賀に生きる」も力のある映画でしたが、この作品のほうは、こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、死にゆく人が死んでしまった人の声に共鳴しながら、その視線や思いを追体験する、そういうトーンを感じました。
この映画のもっとも基調となる写真が、双子(だと思いますが)のポートレイトです。モデルとなった女の子が写真をふりかえって、いちばん嫌いな写真、と語っていたのが心に残ります。どの写真も、たくさん撮影した中で、本人たちからは選んでほしくなかったショットなのですね。しかし心に残る。この双子の写真をみて、だれしも「あっ」と声を上げるのではないでしょうか。そう、スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」に出てくる双子が、この写真にそっくりなのです。調べてみると、牛腸茂雄の写真集が1977年、シャイニングが1980年公開ですから、シャイニングを真似したわけではない!おそらくキューブリックも牛腸のアイデアを盗んだわけではない。ふたつの作品が独立に、しかも独特の不気味な感じになっているのは、実に興味深いことですね。


佐藤真監督のドキュメンタリー映画「阿賀に生きる」(1992)を観ました(福岡市総合図書館シネラにて)。世評の高いドキュメンタリー・新潟水俣病についての映画ですが、水俣病映画というよりは、むしろ小川伸介監督の「ニッポン国 古屋敷村」(1982)に似ています。ともに現地に住み込んで長期間土地の人たちと暮らしながら映画を撮ったところもそっくりです。「阿賀に生きる」では撮影チームが3年間、土地に住み込んで共同生活をしながら撮影したそうです。ところで佐藤真監督──若くして亡くなりましたが、じつは私の大学時代の同級生です。学生時代から映画や演劇にはまっていて、卒業が危ないというのでみんなでレポートの作成などお手伝いしたしたこともありました。これからという時期に亡くなったのは残念なことでした。