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TVコメンテーターとして問題発言を連発して炎上する社会学の問題児、古市憲寿さんが、今活躍中の社会学者に「社会学って何ですか」と質問にいって、いじられて、説教されたり、叱られたり、持ち上げられたりする、なかなかに楽しい読み物 です。彼のTVメディアなどでのポジションは、説教くさい大人の出演者にたいして、若者代表としてつっこみを入れる、ちゃちゃをいれる、という「やんちゃな若者」役割なんだろう。この本では、そういう「やんちゃさ」は陰をひそめていて、けっこうまじめに「社会学とは何か」を、錚錚たる社会学者に聞いている。ここでは古市くんも、つっこみ役というよりは、質問したことで、かえってつっこまれることを予想してやっている。自虐ネタというか、つっこまれる自分を笑いものにしながら、けっこう冷静に眺めて演じている。その距離感が持ち味なんだろうけれど、ああ、コメンテーターっぽいな、と思わせる。インタビューされる側も本気で相手にしているのではなく、余裕をもってあしらっている感じで、それもまたメディアっぽい。
インタビュー相手は、いわゆる大家や権威ではなく、メディアで活躍する生きの良い中堅かその上あたり。良い人選だ。メディアで鍛えられているせいだろうか、この社会学者たちが、やんちゃな古市くんに、けっこう優しい。バカにしたり、説教したり、けんかをふっかけたりする人はいない。あたかも、不良学生が質問してきても、対決したり、罵倒したり、説教したりしても、逆効果なことは重々承知だから、ていねいにやさしく対応している。答える側もメディア慣れしているのだ。それもふくめて、ちょっと薄味で食い足りない。いきなり「社会学って何ですか」と聞かれてもなぁ。その人のやっている社会学のエッセンスのエッセンスを聞き出したほうがよかったのじゃないかな。でも、雑誌連載の、社会学に関心をもちはじめている人むけのものだから、まぁ、仕方ないか。対談者では、小熊英二や上野千鶴子が辛口。古市くんの才能を見切っている。他の方々はがいしてやさしい。吉川徹さんがこういう場面に登場するとは思わなかった。「社長さんみたい」というのは意外な一面、学生からみた像というのがあるのだなぁ。山田昌弘さんが、昔、数学者になりたかったというのも意外。彼の弟さんはたしかボクサーだった。それにしてもこの世代への宮台真司・大澤真幸両氏の影響力は強いのだなぁ。最後に、古市憲寿くんと同世代の開沼博さんが出てきて、ちょっと異質。いまの30代の閉塞感を代表しているのだろうか。この人が外見だけでなく、いちばん古く見えた。
古市憲寿著『古市くん、社会学を学びなおしなさい!』(光文社新書、2016年)