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総選挙が近い
12月16日はいよいよ総選挙だが、この日は、東京への日帰り出張になっているので、期日前投票にいってきた。さて、この選挙、どうなるのだろうか。たいへんな時代の重要な選挙なのだが、どうも、こう、何かが良い方向へ変わるという期待や手応えが持てない。写真家・藤原新也のサイト「Shinya talk」は、まえから興味深く読んでいるのだが、なかなかうがった話が多く(安倍晋三や石原兄弟など)、写真家の見る超現実が分かってきて、面白い。


大阪・西成・釜ヶ崎・飛田遊郭
今日(2012年12月2日)は大阪にいました。西成の釜ヶ崎です。関西学院大学・牧里先生主催の研究会に参加していました。そこで、日本最大の寄せ場・釜ヶ崎でディープに活動している若手の活動家や研究者の方々の報告を聞きました。とても関心して聞き入っているうちにあっというまに時はすぎ、研究会のあとの懇親会は、中沢新一の新著『大阪アースダイバー』にも紹介されている近くの飛田遊郭街の中の「百番」というすごい料亭にいきました。ここ、かつては、この地の遊郭の頂点に君臨していた遊郭だと言います。すごいところです。ううむ、大阪は深い。


 

「はかた夢松原の会」イベントのお知らせ
東日本大震災の大津波で大被害をうけた陸前高田の「奇跡の一本松」は、よく知られているところです。
その「高田松原を守る会」の皆さんをお招きして、私も副理事長をつとめるNPO法人「はかた夢松原の会」が主催して、九州の松原を守る団体が集まる「松原サミット2012 福岡」を開催します。


社会学文献案内
小熊英二『社会を変えるには』集英社新書
新書だが、500ページある大冊だ。北海道で社会学会があったので、持参して、往復の飛行機やホテルで読んだが、1日100ページ読んでも5日かかった。でも、するすると読めるし、面白かった。書かれていることの95パーセントは、オーソドックスな社会学の入門編で、すでに知っていることや、知られていることだ。でも、残りの5パーセントに、この著者の力量が込められている、と感じた。みんなが知っていること、よく言われていることをベースに、小さな、しかし、意味のあるひねりを加えている。もしくは、ほんの少し前進しようとしている。その「少し」がとてもたいへんなことは、あまり知られていない。でも、まったく新しいことを、たくさん言うことはできない。ほんのちょっとでも、突破して、みんなが言えなかったことを、言う。表現する。それがとても難しくて、しかし、意味のあることなのだ。そういうことは、ものを書いてみた経験のある人なら、誰でも分かることだ。しかし、そのほんの少しの違いを、しっかりと判断して評価することも、あんがい難しい。学生諸君には、本書にとりくんで、そのあたりの鑑識眼を養う一助にしてもらいたい。


アジア太平洋アクティブ・エイジング会議
来週は、いよいよ北九州市でのACAP(アジア太平洋アクティブ・エイジング会議)が開催されます。授業の一環として、九州大学の皆さんには、バスを出しますので、参加をお願いします(参加費、バス代ともに無料)。ハワイ大学、インドネシア、シンガポール、マレーシア、韓国、などから国際的なアクティブ・エイジング研究者がやってくる予定です。


秋晴れの天神フィールドワーク
2年生の社会調査法講義の授業の一環として、福岡・天神のNPO法人「はかた夢松原の会」事務所に集合して、西日本短大の西川先生とその学生さんたちとともに、警固から天神までの国体道路やその周辺を歩いて、「天神フィールドワーク」を開始しました。1時間ほど歩いてから、集合して、きょうの「気づき」を報告しあいました。天気も良くて、絶好のフィールドワーク日和でした。


取材学
加藤秀俊『取材学──探求の技法』中公新書
ここでは「取材」という。でも、言い換えれば「社会調査」とか「フィールドワーク」とほぼ同じこと。
書いてあることは、とても社会調査実習に役立つ。
取材というのは、良い材料を見つけ出すことだよ。
図書館やデータや文字の世界も探さねばならないよ。
もの知りに聞く、というのがインタビュー調査の基本だよ。
現地を見ることが、取材の基礎だよ。
そしてそれをまとめることも必要だよ。
・・・どれもごくごく普通のこと。でも、実行できるかどうか。社会調査実習に入る学生は、この本をまず味読・熟読しておくと良い。


◆沈思黙考とメインテーマ
学生たちが、社会調査実習で、インタビューに出かけるので、どう準備したら良いか、どんな質問をしたら良いか、と尋ねてきた。
どういうことを聞いたら良いか、それをじっくりと「沈思黙考」しようよと、と答えた。
社会調査実習は、いわば「社会」に出かけて、「社会」の中で人に出会って、「社会」に関する様々な問題や課題を、手探りしながら「発見」していく実習だ。事前に、いろいろ不安になって、準備したい気持ちは、分かる。
でも、今回のインタビューは、日程が決まったのが直前で、ほとんど時間的な余裕がない。
だったら、いまから、本を調べて読んで・・・としている時間的余裕はない。
こういうときこそ、沈思黙考、だ。
ふだん、われわれは、忙しく、じっとだまって考えることが少ない。
でも、どうしたら良いか分からない時、重要な案件がせまっていて、自分の考えを作らなければならないとき、大切なことが何なのか分からなくなってきた時こそ、「沈思黙考」が必要なのだ。
学生を見ていると(学生でなくてもそうだが)、みんな忙しさを口実に、自分で考えるという苦しい作業を、逃げてしまいがちだ(自戒を込めて、こう言う)。忙しい時は、じつは、楽なのである。やるべきことが明確で、時間は足りないが、何をしたら良いかで思い迷うことはない。ただ目前の作業をすれば良いのだから、ほんとうは、たいへんではない。
ところが、やるべきことが不明確な場合、でも何かしなければならない時、これこそ大変なのである。何をすべきか、じっくりと「自分で考えなければならない」。そして「その結果は、自分で引き受けなければならない」。これは、じつは、困難な作業なんだ。
今回の、インタビューをする、ということは決まったけれど、何を聞いたら良いか分からない、という状況が、まさに、それだ。
そういう時に、人は、誰かに「どうしたら良いでしょうか」と頼ってしまう。誰かが「こういうことを、こういうふうに、聞いたら良いよ」と答えてくれることを期待してしまう。でも、こんな風に「教えてもらう」ことから、いつかは脱却しなければならない。社会調査実習は、そういう、またとない機会なのだ。
そのためにも、沈思黙考から始めることが、大切だ。
「聞く」まえに、まず、考えること。「調べる」まえに考えてみること。
しかし気をつけよう、1分で考えつくことは、1分で消え去るような「思いつき」かもしれない。
でも、1時間考えたこと、1週間考え続けたことは、そうかんたんに消え去るような思いつきではないはずだ。
一ヶ月や何年も、考えてきたこと、それは、自分の本当の問題関心ではないだろうか。
自分の本当のテーマ、自分の深いところからわき起こる関心、そうかんたんには消え去らないような、思いつきとは違った、人生に関わるようなテーマ・・・ちょっと大袈裟になってしまうが、大切なこと、後まで残ることって、そういうことなんだと思う。
いっときの思いつき、一時のひらめき、たんなる関心、ではだめです。持ちません。耕すことも、深めることも、熟成させることもできません。
だからこそ、時々、沈思黙考が必要なのです。
でも、やってみなさい。
沈思黙考、じつに難しいことなのだ。
かんたんなものじゃない。
たったの5分でも、無念無想、自分にとっての根本的なメインテーマとはなにか、考え続けられるだろうか。
やってみてほしい。


梅棹忠夫の『知的生産の技術』
とうとうこういう時代になったのだ。
きょう、社会調査実習に関する授業の中で、私にとってはサプライズがあった。
梅棹忠夫の『知的生産の技術』(岩波新書)の紹介をしたら、誰ひとり、読んだことのある学生がいなかった。大学院生のティーチング・アシスタントですら、読んだことも聞いたこともないという。
があーん。そういう時代になったのかなぁ。そういえば、村上春樹も、みんな、読んだことがないと言っていたし。
でもなぁ、35年くらい前、私が高校生だった頃は、みんな高校生で、この本は読んでいたぞ・・・てなことを言っても、まったくの「おじさん言説」になってしまう今日このごろ、秋の夕暮れであった。
さて、この流れは、どこまでいくのか。


社会学3年生の社会調査実習で、8月に行政版が、国土交通省・福岡国道事務所にでかけて所長・副所長さんたちへのインタビュー調査を行いました。そのことが、国土交通省・福岡国道事務所のニュース(ふっこくニュース)で写真入りで紹介されています。



就職氷河期と言われるこのご時世、社会学の学生でも、公務員・行政職志望が増えている。聞いてみると、公務員なら結婚しても出産しても働き続けることができる、安定した職場だ、男女差別がない(少ない)、全国各地を転々とするような転勤がない、などというところが志望動機のようだ。たしかに職場の条件として、こうした長所のある職場だろう。でも、それだけでけか。そもそもなぜ公務員を志望するのか、公務員としてやってみたい仕事とは何なのか、そういう「仕事」としての側面はほとんど考えられていない。公務員の仕事について何ら具体的なイメージなしに、職場条件としての公務員だけで志望し、やりたい仕事のイメージもなしに公務員になっていってはたして良いものか。そういうことは、公務員志望の諸君には、よくよく考えていただく必要がある。
 さて、紹介する大谷信介編著の『これでいいのか市民意識調査』(ミネルヴァ書房)は、こうした公務員の仕事の内容について考えるうえで、たいへん示唆に富む。公務員志望の社会学学生にとっては「必読」の書である。
 本書において、大阪府内の多くの自治体の行った「市民意識調査」を収集・分析して、そこから自治体の行う市民意識調査の問題点をえぐりだしている。読んでみると、これはスリリングであり、エキサイティングであり、なるほど、そうだったのか、たしかにそうだ、というやんやの喝采であり、これはいかん、これから公務員になる学生には、こういう役所の実態をしかと認識して、こうした現状を打破するために、社会学や社会調査をもーれつに勉強して、役所を内側から改革していっていただきたい、とせつに願うようにさせる本である。
 私にも、福岡県下のいくつかの自治体のアンケート調査を、委員として手伝った経験がある。その経験から言えば、まさに、大谷さんのこの本での経験は、福岡県でもあてはまり・・・おそらく全国の自治体(かつては3300以上あったが、現在では・・・)のほとんどすべてであてはまる実態ではないだろうか。
 ということは、おそろしいほどの税金が、まったくムダな調査のために費やされている可能性があり、多くの貴重なデータが死んでいる可能性があり、そのために自治体の施策や方向性が歪んでいる可能性がある、ということである。
 これは重大事だ。だったら自治体は、市民意識調査などやめてしまえ・・・とはならない。
 そうではなくて、アンケート調査や社会調査や統計や分析に、もうすこし深い知識と見識とスキルをもった学生が、自治体職員となってがんばれば良いのである。そうすれば、現在の自治体は、飛躍的に大進歩する・・・とはすぐには言えないまでも、だいぶましになるのではないだろうか。
 という意味において、この書は、社会学学生、とくに公務員志望の社会学学生、またこれから社会調査実習に入る学生にとって「必読」の書であり、この書をてこにして、ぜひ社会学や社会調査実習に力をいれて、そのうえで公務員になっていってもらいたいとせつに願わずにはいられない本なのである(べつに公務員になることを薦めているわけではありません。でも社会学学生の三分の一くらいが公務員志望になっている現状では、せめてこの本くらい読んだうえで公務員になっていってくれよ、と願うばかりです)。