








福岡ユネスコ文化セミナーの開催
福岡市でACAP(Active Aging Consortium in Asia Pacific)セミナー開催
福岡市でACAP(Active Aging Consortium in Asia Pacific)のセミナーとスタディー・ツアーが始まりました。今回は7カ国から40人が参加しているそうです。アクティブ・エイジングをめざした国際交流と学びあいのこの集まりも、もう20年になります。第1回目は山口県の周防大島で始まりました。ハワイやインドネシア、釜山や香港など、各地を訪問して学びあいました。韓国、インドネシア、タイ、ハワイ大学など、懐かしい友人たちと再会しました。

バルセロナ郊外─モンセラート僧院とパラドール・カルドナの一夜
友人夫妻がバルセロナに行くという。それで思い出した。私も十数年も前にバルセロナからレンタカーをしてカタルーニャ地方のロマネスク寺院をひとりで旅したことがあったのだ。あれはうつつか幻か。あんな経験が出来たことが今となっては信じられない。なんだか夢のような経験で、あまりに非現実的な経験だったせいかもしれない。
バルセロナには学会で行った。そして市内のガウディ建築を見て回った。その後レンタカーをしてカタルーニャの山岳地方へ向かったのだ。目的は山奥のロマネスク寺院、そしていくつかのパラドールに宿泊することだった。
これはその場での急な思いつきではなく、私にとっての旅の先達であった高坂知英の旅をなぞることでもあった。高坂知英は中公新書の『ひとり旅の楽しみ』で有名な著者だが、彼は晩年、スペインのパラドール熱にかかったと印象的に書いていたからだ。前から彼の旅を辿ってみたいと思っていたのでこの機会にそれを実現した。しかし容易なことではなかった。初めての異国をひとりでレンタカーでいくのは大変なのだ。
バルセロナの空港でレンタカーをして、いきなり高速道路に入ったとたん目的地と逆方向へ行ってしまった。こういうことがよくある。まだカーナビなどない時代だ。いちばん小さなマニュアル式のしかも日本と逆の左ハンドルのレンタカーだった。海外でレンタカーをする時には最初と最後が難しい。最初の道を間違えると動揺する。そしてもうひとつ最後にレンタカーをリターンするとき、これもまた難関なのだ。空港ちかくまで来て出発時間が迫っているのに、レンタカーを返却する場所が分からない──そういう時にもっとも焦る、大汗をかく。この2つが海外のレンタカー旅の鬼門なのだ。
バルセロナでもこの2つをしっかり味わった。さて最初の目的地は郊外のモンセラート僧院。ここはワーグナーの楽劇「パルジファル」のモデルとなったという奇岩の山の中にある僧院。そして宿泊は高坂が激賞していたモンセラート近くのパラドール・カルドナ。パラドールはスペイン各地にある古いお城や僧院を改造した国営ホテル。なかでもカルドナは丘の上の中世の城で人気がある。しかしそこに辿りつくのが大変で細いくねくね道を登り、しかも頂上直下の小さな場所に駐車する。へとへとになりつつお城の中の一室に泊まる。しかしこれが素晴らしかった。レストランも雰囲気ばつぐん。これはスペイン中世の異次元世界に迷い込んだ一夜で忘れがたい。しかしあれは本当にあったことなのだろうか。自分ながらいぶかしい。
モンセラート僧院
パラドール・カルドナ
新著『福祉社会学の思考』(弦書房)の予告
「かまきん(鎌倉文華館)」訪問
認定NPO法人・市民協の理事会
チャン・ドンゴンと行く 世界「夢の本屋」紀行
韓流スター チャン・ドンゴンと行く 世界「夢の本屋」紀行──こういう番組がNHK・BS4Kで放映されています。なんだかちゃらちゃらした番組名でいやだなぁ、と思いながら録画してあったのを観てみると、これが良いのです。日本のものでなく韓国制作の番組の吹き替えらしいのですが、世界的な本屋の衰退に、どう対抗するか、そのヒントを世界に探しにいく、という壮大な番組コンセプトです。しかも、オランダにある「夢の本屋」は、何度も倒産して、経営も代わって、そしてなんとか受け継がれてきた。そういう困難なドラマもしっかりと語られています。これにはうなりました。いまの日本で、こういう番組が作れるでしょうか。

ボストン・シンフォニーの小澤征璽
ボストン・シンフォニーの小澤征璽
もう20年ちかく前のことになります。ボストンで数ヶ月、在外研究していたとき自転車を買ってボストン市内を走り回っていました。主に大学や図書館や食料品の買い出しのためですが、ボストン・シンフォニー・ホールにもよく通いました。小澤征璽さんはすでにボストンを退いていて聴くことは出来なかったのですが、ホールには若々しい写真がありました。このホールの最前列でVnのギドン・クレーメルの演奏を聴いたこともありました。思い出深いですね。



イタリア・ネオレアリズモ映画を観る──無防備都市と自転車泥棒
イタリア・ネオレアリズモ映画を観る──無防備都市と自転車泥棒
ボローニャの財団が修復したというイタリア・ネオレアリズモ映画2つ(ロッセリーニ監督の「無防備都市(1945)」とデ・シーカ監督の「自転車泥棒(1948)」)を初めて観ました。今みると、どちらもリアリズムというよりは、戦後の濃厚で過剰なまでの人びとの活動的な姿が際だっています。とくに「自転車泥棒」には驚かされました。第2次大戦で敗戦国となったイタリアの貧しい人たちの間で盗難や闇市のような盗品売買が行われていた中でのドラマです。唯一ともいえる財産の自転車を盗まれた主人公が、まるで常軌を逸したといえるような執念で盗人の追跡を行う映画です。大切なものを盗まれた人が執念ぶかく盗人を捜し回るのですが、やがてそれが自分よりも貧しい人たちの行為であることを知ります。しかしそれには構うことなく貧しい人たちを強引に徹底的に追求していくその姿には常軌を逸した鬼気迫るものがあります。同時に、これはたんなる盗みや泥棒を描いているのではない──という気がしてくるのです。どこまでも泥棒(単数というより盗人集団というほうが当たっていると思います)を追求していく主人公が、最後には自分も盗人になってしまって……という展開は展開として、これはたんなる自転車の泥棒ではない。貧困に追い詰められた人も、たんなる貧民ではない。これは「良心の盗難」を描いたものではないか。つまり「ファシズム」による「心の盗難」のメタファーではないか、と思われてくるのです。ロッセリーニのほうは、レジスタンスの主導者の人たちの過酷な運命を描いています。デ・シーカのほうは、最下層のさらにまた下層の人たちを描いています。ロッセリーニのほうでは「良心」はナチスの拷問にも拘わらず負けません。デ・シーカのほうは貧困に負けてしまう庶民の姿を描いています。戦争直後にはレジスタンスの誇り高き人びとを英雄的に描く必要があったのでしょう。それから3年後、なぜ皆が熱狂してファシスト党を支持したのか。それを支えたのは貧困層でもあったし、ごくふつうの生活をしていた自分たちだったのではないか、そう問いかけているかのようです。

加藤周一、座頭市を語る
加藤周一、座頭市を語る
ジブリから出ていた「日本その心とかたち」の特典映像に「加藤周一、座頭市を語る」が入っている。2004年4月の収録とあるから、加藤周一が亡くなる4年前、当時85歳ではなかっただろうか。
ジブリの高畑勲さん、鈴木敏夫さんらとともに、源氏物語絵巻物や、座頭市などの映画を論じる勉強会の模様だ。座頭市は(視覚障害者だから)遠くのことは見えない、分からない。「あっしには関係ねぇことでござんす」とうそぶいていながら、事態が近くで動くとじつに素早く対応する(たとえばニクソン訪中のあとの田中角栄訪中)。これこそ日本の外交の理想の姿そのものではないか、というのです。これはすごい。85歳だから、ときどきエンジンがうまくかからない時はある。しかし一度走り出すと、そのスピードやカーブの切れやコーナリングなど、往年のスーパーカーもかくや、というほどの快感だ。「日本の行くべき道は座頭市」というのも、じつにひねりがきいている。言われてみればジブリのアニメも「源氏物語絵巻物」から連綿とつづく「今、ここ主義」の伝統の中にあるのだなぁ。
新年のご挨拶──「超高齢社会研究所」代表・安立清史
ジブリ・加藤周一・座頭市
ジブリ・加藤周一・座頭市
ジブリから出ていた加藤周一のDVD「日本その心とかたち」の特典映像に、座頭市について語った興味深いエピソードが出てきます。彼はヤクザ映画や「座頭市」などの映画も観ていたのですね。しかもその中に「日本文化」の特徴を見いだしていたのです。座頭市とは何か──(視覚障害者ですから)遠くのことは分からない。「あっしには関係ねぇことでござんす」とうそぶいていながら、敵が近くで刀を抜く音が聞こえようものならじつに素早く対応する。これこそ日本外交の理想の姿ではないか、というのです。なるほど、皮肉たっぷりなのですが、そのとおりだと感心しきりでした。映画をたんに娯楽としてではなく、その中に日本文化の基本構造が現れていると見ぬいていたのです。加藤さんの文章に勇気づけられて、私もジブリ映画から発想のヒントをえて、いくつか文章を書いたりするようになりました。
立命館大学・加藤周一文庫のこと
立命館大学・加藤周一文庫のこと
加藤さんの手書きの資料などは彼の自宅の納戸の奥に家族さえもしることなく、ひっそりと収められていたそうです。それを編集者の鷲巣力さんが発見したのだそうです。ほんとうに驚くべき資料です。彼の2万冊におよぶ蔵書もふくめて、その寄贈を一括して受け入れた立命館大学図書館もたいしたものです。加藤周一関連の資料だけでなく西園寺公望の貴重な資料などもありました。受け入れた立命館大学図書館をみて、つよい印象を受けました。私が所属していた国立大学ではこういうことは、もはや考えられません。今年も多くの文系の教員が退職することになりますが、その研究室の資料や図書の多くは散逸するか処分されることになるでしょう。残念なことです。私も退職にあたって整理と処分に苦労しました。断捨離というのは文化の継承の否定です。その経験からいっても加藤周一文庫は現代の奇蹟です。デジタル化の時代、今後こういうことはますます困難になるでしょう。大切に後世に継承していってほしいと思います。京都から帰ってきて、その思いがますます募りました。(写真はその鷲巣力さんとともに)
加藤周一の小さな机
ジブリと加藤周一と「日本その心とかたち」
ジブリと加藤周一と「日本その心とかたち」
立命館大学加藤周一現代思想研究センターの鷲巣力さんによると晩年の加藤周一は「日本美術史序説」を執筆しようとしていたそうです。でも出来なかった。準備としてNHKの番組「日本その心とかたち」に出演したのだそうですが、いきなりメキシコから日本の縄文土器との類似について語りはじめるのに度肝を抜かれたのを覚えています。この「日本その心とかたち」は10回放映されDVDとなってジブリの学術ライブラリーから出ていました。ジブリと加藤周一の縁は浅からぬものがあったようです。高畑勲監督の『火垂るの墓』について「夕陽妄語」で書いているからです。しかも「一九八八年の思い出三つ」のうちの一つとして。これは高畑さんにとってうれしかったようです。鈴木敏夫さんも交えて加藤周一を招いて勉強会を催したようで、その模様がDVDの特典映像になって残っています。
私の原点──加藤周一その2
今回の鷲巣力さんとの出会いは、昨年の私の著書『福祉の起原』(弦書房)に加藤周一をたくさん引用したので鷲巣力さんにお送りしたからでした。すぐに感想を下さったのが鷲巣力さんでした。もうひとりが、加藤周一が出演したドキュメンタリー映画「しかし、それだけではない。加藤周一 幽霊と語る」(ジブリからDVDが出ています)を制作した元NHKのプロデューサー桜井均さんでした。この映画、すごく刺激されました。生きている人間はころころと意見を変える。しかし死者は定義上、意見を変えない。この時代、意見を変えない幽霊と語り合うことが必要だ、という改憲論争の最中での皮肉のきいた加藤周一さんでした。これを制作した桜井均さんも加藤周一さんについてはじつに深く豊富なエピソードをおもちです。いっしょに仕事をした人たちを魅了した人だったのですね。私も学生時代に駒場祭に加藤周一さんを招いての講演会を企画したことがあるので感慨ぶかいものがあります。
私の原点──加藤周一
私の原点
先日、冬の京都の立命館大学へ行ってきました。加藤周一現代思想研究センターの鷲巣力さんを訪ねて貴重資料を見せてもらうためです。私の社会学者としての原点は、高校生の頃に加藤周一の『羊の歌』を読んで魅了されたことかもしれません。それ以来の愛読者ですが、彼には多くの謎と不思議があります。40年近くもっとも近くにいた鷲巣力さん(元平凡社の編集者)の著作(加藤周一を読む、加藤周一という生き方、加藤周一はいかにして加藤周一になったか等)も読み返しながら、直接お会いして私の疑問を問いかけるのを楽しみにしていました。ところが私の予想をはるかに上回るすごい資料やエピソードの数々で、あっというまに3時間以上がたってしまいました。いくつも謎が氷解しましたが、まだまだお聞きしたいことが残っています。
インフォメーション
安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照

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