Boston Public Library
Boston Public Library
Boston Public Library
Boston Public Library
NewYork Public Library
Boston Public Library
Boston Public Library
Strahovský Library
Stavovské Theatre
「有償ボランティア」の新たな意味づけ(2)
先日の老健事業報告会をオンラインで聴いていただいた方から、たいへん、うれしいご感想をいただきました。
──この報告会に参加しましたが、大変興味ある報告に出会いました。九州大学の安立清史教授の有償ボランテイアに関する研究です。ハンナ・アーレントの「人間の条件」──人間には「労働・仕事・活動」の3レベルがある。「仕事」には自己実現や「生きがい」がある。ところが現代のグローバル資本主義の世界ではすべてが「労働」になっていく。「労働」だけになっていく世界に対して「仕事」(生きがい、やりがい、たすけあい)を回復していくには、どうしたらよいか?「労働」だけでなく、「仕事」や「活動」を回復していくためのひとつの方法が「有償ボランテイア」の中にあるのではないか。というものでした。
いかがでしょうか、私はこの報告を聞いて救いのようなものを感じました。助け合い活動への参加をお願いして多くの説明会をしてきましたが、みなさまの心に届くものが見つかりませんでした。これからは、これをたよりに有償ボランテイアをお勧めしていきたいと思っています。──
令和2年度・厚労省老健事業報告会でオンライン報告しました
紙の本の行方
津野海太郎さんの「読書の黄金時代は終わった」という宣告もションキングでしたが、最近でも友人から「電子書籍の時代です、大島弓子の本も紙媒体では入手できないです」と知らされました。あの大島弓子でさえか。もうすぐ紙媒体の書籍を上梓する私としては、大きなショックです。事態はそこまで来ているのか──でも思うのは、アナログ・レコードのことです。CDが出て、あっというまにレコードは消え去りました。ですが、どっこい生きています。むしろ再ブームと言ってもいい。最近の人気ラジオ番組「村上Radio」でかかるのは、もっぱらアナログレコードですね。むしろCDのほうが音楽配信に押されて消え去りそうです。さて紙の本は、どうなるでしょうか。
図書館奇譚
考えてみると高校生の頃から、自宅で勉強した記憶があまりない。高校、大学、大学院、留学中や在外研究でも、ほとんど居場所は図書館だった。ボストンにいた頃はバックベイに小さなアパートを借りていたので、毎日、ボストン公共図書館に通っていた。こういう公共図書館は、まず日本にはない。そもそも公共図書館と公立図書館とは違うのだ。
さて、昨年の本も、今年出す本も、ほとんど福岡市の図書館で執筆した。どうしてなのだろう、自分でも不思議だ。自宅や研究室のような個室では原稿が書きにくい。思うに、広い空間(とくに天井が高いことがのぞましい)、見知った人がいないこと、匿名の第三者がいること、などの条件が必要なのだろう。それらが執筆に必要な、緊張感と集中力と持続力、を与えてくれるからではないか。個室に一人でいると、ぐだっとなってしまう怠けものなのだ。
厚生労働省・老健事業の報告会
中国映画「紅色娘子軍」を観る
映画「紅色娘子軍」(1961)は、海南島で中国国民党につながる反動地主の横暴に対して立ち上がった女性農民が紅色娘子軍を組織して、反動地主を打倒する姿を描いた映画、とある。文化大革命の最中にも上映が許された「共産主義模範作品」で、中国共産党のプロパガンダ映画である……それはそうなのだが、今観るとじつに面白い。単純で明快すぎて、正反対の意味でいろいろ考えさせられて興味深いのだ。純粋すぎる若者たちが、革命軍の担い手になっていくストーリーなのだが、革命の青春期と若者の青春期とが見事にシンクロしていて、当時の若者たちは普通の二倍の熱量の恋愛をしていたのだろうなと思ったりする。しかも制作者が意図しなかったにも関わらず、すでに後の「文化大革命」の負の予兆もしっかりと映し出されているのだ。
no art,no life
no art,no life──これはNHK・Eテレの、週に一度、わずか5分間の番組である。でも、その5分間が濃密だ。毎回、ひっくり返るほど驚かされる。
たとえば最近の回では「勝山直斗」くんの紹介。番組紹介には「中学生の勝山直斗は、唾液を指につけ壁に絵を描き、壁紙を剥がして壁画を浮かび上がらせる。日本各地の“表現せずにいられない”アーティストを紹介する。既存の美術や流行・教育などに左右されない、その独創的な美術作品」とある。まさにそのとおり。障がい者を見るようなパターナリズムがまったくない。「障がい」とか「福祉」というような概念をまったく必要としない。そんな次元をはるかに超えている。純粋に、ひとりの驚くべきアーティストとして紹介している。
しかもこの人(勝山くん)は、変わった人をのぞき込むような目線をちょっとでも示したカメラに向かって激しく攻撃してくる。彼は壁紙を口にいれる。最後には、それを天上に向かって投げあげる。これは凄い。
追伸
さらにさかのぼって「no art, no life」をいくつも観ました。驚きはさらに深まります。はじめのころは「障害者アート」「エイブル・アート」、フランス語で「アール・ブリュット」などと様々な説明がなされていました。作者が福祉施設や障害者作業所でこうした作品を作っていることを紹介していました。福祉番組という枠での紹介だったのかもしれません。そうした説明が、回を追うごとに消えていきます。いまは「no art, no life」だけになりました。これは、びっくりするくらい番組が成長したからだと言えるでしょう。
「ナウシカ、千尋、ジョバンニの社会学」
昨日、「社会学入門」の授業が終わりました。今学期は初めてのオンライン授業ということもあって、私としても全力投球。これまでにない授業内容を準備して臨んできたのですが、力を入れすぎのところもあったようです。先日、客観的に見るとどうなのかなと、オンラインで授業しているところを、妻と息子にも聴いてもらいました。すると反応は、これはやりすぎ、つめこみすぎ、言い過ぎ、などとコテンパンでした。うーん。なやみましたが、それでも最終回は、これまで話し残したことをまとめて「ナウシカ、千尋、ジョバンニの社会学」とこれまで以上の詰め込み。さて、どうだったか。185人から長文の感想文が届きました。その中に、短いながら、おっ、これは、という感想がありました。
「対照的な千尋とナウシカの物語が根底では類似していて、千尋のラストシーンでナザレのイエスを想起する……私のこれまでの想像力では到底たどり着け得ないというか、今まで何度も千尋を視聴してきた私もまったく思い至らないことに社会学の視点から切り込む授業は非常に新鮮でした。」
やった、という感じですね。
「RBG-最強の85歳」を観ました
学期末です。1年生200人対象の「社会学入門」も残すところあと2回となりました。あすは「ロック音楽の社会学」と題して、ジョニ・ミッチェルの「ウッドストック」の話をします。けっこうディープな話にする組み立てを考えていて、前置きを30分くらいしてから本論にいく予定なのです。そして「ウッドストック」の歌詞の解読をしながら、日本とアメリカの若者の対抗文化の比較社会学にいく……という構成なのですが、どうも最後の詰めの一手をどこにしようか迷っていました。ところが、昨日と今日と二日かけて、アメリカのドキュメンタリー映画「RBG」を観て、これだ、と思いました。これで最後の一手が決まりました。あすの講義が楽しみです。どんな反応が来るだろう。
(追伸、「RBG-最強の85歳」とは、昨年、亡くなったルース・ベイダー・ギンズバーグ米国最高裁判事のことです。このドキュメンタリー映画、すごいです。必見です)
佐藤真監督の「Self and Others」を観ました
佐藤真監督の「Self and Others」(2000年)を観ました(福岡市総合図書館シネラにて)。1時間たらずの映画ですが、これは凄く深いドキュメンタリー映画でした。幼い頃、脊髄カリエスを患ってわずか36歳で亡くなった牛腸茂雄という写真家の足跡を、とくに「Self and Others」という写真集を一枚一枚丁寧に紹介し、関係者の声を聞き、そこから浮かびあがってくるものをとらえた、佐藤真監督の声にならない声が聞こえてくるような映画でした。「阿賀に生きる」も力のある映画でしたが、この作品のほうは、こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、死にゆく人が死んでしまった人の声に共鳴しながら、その視線や思いを追体験する、そういうトーンを感じました。
この映画のもっとも基調となる写真が、双子(だと思いますが)のポートレイトです。モデルとなった女の子が写真をふりかえって、いちばん嫌いな写真、と語っていたのが心に残ります。どの写真も、たくさん撮影した中で、本人たちからは選んでほしくなかったショットなのですね。しかし心に残る。この双子の写真をみて、だれしも「あっ」と声を上げるのではないでしょうか。そう、スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」に出てくる双子が、この写真にそっくりなのです。調べてみると、牛腸茂雄の写真集が1977年、シャイニングが1980年公開ですから、シャイニングを真似したわけではない!おそらくキューブリックも牛腸のアイデアを盗んだわけではない。ふたつの作品が独立に、しかも独特の不気味な感じになっているのは、実に興味深いことですね。
カウンタ
- 340709総訪問者数:
- 7今日の訪問者数:
- 35昨日の訪問者数:
最近の記事
- 拙著『21世紀の《想像の共同体》』の評価
- 地方小出版流通センターの「出版ダイジェスト」欄に『21世紀の《想像の共同体》』が紹介されました
- 関川芳孝編『社会福祉法人はどこに向かうのか』
- 九州大学広報・2021年、新入生歓迎特別号
- 『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』(弦書房)
- 「有償ボランティア」の新たな意味づけ(2)
- 「有償ボランティア」の新たな意味づけ
- 九州大学の卒業式
- 福岡のソメイヨシノ満開
- 厚労省・老健事業の報告書ができました
- 令和2年度・厚労省老健事業報告会でオンライン報告しました
- 紙の本の行方
- 図書館奇譚
- 厚生労働省・老健事業の報告会
- 「村上ラジオ/怒涛のセルフカバー」思わずのけぞる「イパネマの娘」
- 中国映画「紅色娘子軍」を観る
- no art,no life
- 「ナウシカ、千尋、ジョバンニの社会学」
- 「RBG-最強の85歳」を観ました
- 佐藤真監督の「Self and Others」を観ました
- 佐藤真監督の「阿賀に生きる」(1992)を観ました
- 社会学評論に『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました
- 読書の黄金時代は終わった
- 野崎歓さんの「無垢の歌」
- 「銀河鉄道の夜」の社会学
- 『社会学と社会システム』(中央法規)が出版されました
- 1970年11月25日─三島由紀夫とゴジラ
- オンライン地獄
- 黒澤明の「醜聞(スキャンダル)」(1950)を観る
- オンライン授業の試み
- コロナの時代に「アラビアのロレンス」を考える
- かつて「世界わが心の旅」という番組がありました
- オンライン授業
- ヒガンバナの大群落
- 『村上春樹の短編を英語で読む1979~2011』
- ミッドナイト・イン・パリに出てくるレストラン
- 夢の本屋紀行──韓国の独立書店
- 夢の本屋紀行──パリの書店
- 夢の本屋紀行─中国・南京の先鋒書店
- 今の大学一年生は前代未聞の大変な青春なのか──村上春樹の言葉
- 書物の行方─沢木耕太郎の『旅のつばくろ』
- 8月15日に思う──「日本のいちばん長い日」と「ねじれちまった悲しみに」
- 日刊・工業新聞の「著者登場」で拙著が紹介されました
- 「日本農業新聞」に『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました
- 私と著書『超高齢社会の乗り越え方』が日刊・工業新聞で紹介されています
- 図書新聞に拙著『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました(2020年6月20日)
- 日本NPO学会ニュースで著書『超高齢社会の乗り越え方』が紹介されています
- 西日本新聞書評欄で『超高齢社会の乗り越え方』が紹介されました
- 卒業式のない卒業
- 『超高齢社会の乗り越え方』(弦書房)
- 日本のNPO研究の20年
- 「深読み音楽会・井上陽水」を観ました
- 富士山の上を飛ぶ
- レニ・リーフェンシュタール「美の祭典」を観る
- 「ヘヴンズ・ストーリー」と「菊とギロチン」──そして廃墟
- 社会学入門──「風の谷のナウシカ」を解読する
- 謹賀新年2020年
- 加藤典洋さんの遺著
- 50年ぶりの万博記念公園
- 熊野古道を(ほんの少し)歩く
- 南方熊楠旧居を訪問しました
- 「紀州くちくまの熱中小学校」でお話しをしました
- ナウシカと中村哲さんとの共通点
- 沢木耕太郎の社会調査法講義
- 紀州くちくまの熱中小学校で、お話しをします。
- 中村哲さんは現代のナウシカです
- 丸亀市で「千と千尋の神隠し」から考えるグローバル時代の私たちの行方、という講演を行いました
- 美空ひばり映画を観る
- 塩飽本島と咸臨丸、そして両墓制
- 塩飽本島は「猫島」でした
- 「銀河鉄道」と「同行二人」
- うどん県香川の「釜玉うどん」
- 丸亀の「醤油うどん」
- 丸亀の朝うどん
- うどん県香川の「がもううどん」
- 丸亀市で講演をします
- ラグビーW杯、日本代表に思う
- 「ニューヨーク公共図書館─エクス・リブリス」を観る
- 東京女子大学での日本社会学会大会
- 伊都キャンパス途中のヒガンバナ
- 「千と千尋の神隠し」講義
- 「日本のいちばん長い日」(岡本喜八、1967)を観る
- 「ナビィの恋」を観る
- 中村哲さんのお話しを伊都キャンパスで聴く
- 手塚治虫の初期アニメーション映画を観る
- 真夏に真冬の映画を観る──「太陽の王子、ホルスの大冒険」
- 若者の投票率─ひとつの「思考実験」
- 「病院ボランティアだより」№245(2019年6月号)
- うどん県香川の心に残るうどん店
- 黒澤明の「羅生門」を観る─夢幻能の世界
- 大阪で「介護保険と非営利組織はどこへ向かうか」というお話しをしました
- 福岡中州にある「イエスの方舟の店・シオンの娘」
- 宮澤賢治の「圖書館幻想」(ダルゲとダルケ)
- 「バーフバリ」二部作を観てしまいました…
- 「ラサへの歩き方 祈りの2400km」を観ました─これは傑作だ
- 介護保険と非営利組織はどこに向かうか(大阪勉強会)
- 定年退職後の「居場所」とは何を意味しているのか
- 「呼びかけ」を聴くこと
- 定年退職後の課題─「呼びかけ」とコール&レスポンス
- 「定年と諦念を超えて─セカンドステージと居場所づくり」
アーカイブ
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2009年8月
- 2008年10月
- 2008年8月
- 2006年8月
- 2005年8月
- 2004年8月