社会学者・大澤真幸さんの新著『思考術』(河出書房新社)を読み終えました。
一見すると「どうしたらより深く考えることができるか」が書いてあるように思われるでしょうが、むしろ「人はなぜ思考しないのか」をめぐる論考だと思います。これを読むと私をふくむ読者というものが、いかに考えないか、むしろ考えることを避けているか、ほうっておいたら人間はいかに考えない存在であるか、を説得的に論じています。そして「考えざるをえなくなる時はどういう時か」「そのように追いつめられた時、どうすべきか」が書かれているのです。
その意味で、これは「教育」がいっぱいつまった本ですね。思考するノウハウを書いてある本のようにも読めますが(じっさい書かれてもいますが)、本質は「われわれ人間がいかに考えない存在であるか」を示し、「考えるべき時、考えないといけない時が来たら、しっかり考えようよ」と呼びかける「教育」にあると思いました。
その意味で、学部生レベルでは、ちょっと難しいかもしれませんが(何しろ、学生は日々、就活やらアルバイトやらに追い回され、考える前に跳べ、と「現実」に急かされて生きていますから・・・)大学院生以上には、じつに豊富で学ぶべきところの多い本だと思います。


大澤真幸・思考術

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