学期末です。1年生200人対象の「社会学入門」も残すところあと2回となりました。あすは「ロック音楽の社会学」と題して、ジョニ・ミッチェルの「ウッドストック」の話をします。けっこうディープな話にする組み立てを考えていて、前置きを30分くらいしてから本論にいく予定なのです。そして「ウッドストック」の歌詞の解読をしながら、日本とアメリカの若者の対抗文化の比較社会学にいく……という構成なのですが、どうも最後の詰めの一手をどこにしようか迷っていました。ところが、昨日と今日と二日かけて、アメリカのドキュメンタリー映画「RBG」を観て、これだ、と思いました。これで最後の一手が決まりました。あすの講義が楽しみです。どんな反応が来るだろう。
(追伸、「RBG-最強の85歳」とは、昨年、亡くなったルース・ベイダー・ギンズバーグ米国最高裁判事のことです。このドキュメンタリー映画、すごいです。必見です)
佐藤真監督の「Self and Others」を観ました
佐藤真監督の「Self and Others」(2000年)を観ました(福岡市総合図書館シネラにて)。1時間たらずの映画ですが、これは凄く深いドキュメンタリー映画でした。幼い頃、脊髄カリエスを患ってわずか36歳で亡くなった牛腸茂雄という写真家の足跡を、とくに「Self and Others」という写真集を一枚一枚丁寧に紹介し、関係者の声を聞き、そこから浮かびあがってくるものをとらえた、佐藤真監督の声にならない声が聞こえてくるような映画でした。「阿賀に生きる」も力のある映画でしたが、この作品のほうは、こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、死にゆく人が死んでしまった人の声に共鳴しながら、その視線や思いを追体験する、そういうトーンを感じました。
この映画のもっとも基調となる写真が、双子(だと思いますが)のポートレイトです。モデルとなった女の子が写真をふりかえって、いちばん嫌いな写真、と語っていたのが心に残ります。どの写真も、たくさん撮影した中で、本人たちからは選んでほしくなかったショットなのですね。しかし心に残る。この双子の写真をみて、だれしも「あっ」と声を上げるのではないでしょうか。そう、スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」に出てくる双子が、この写真にそっくりなのです。調べてみると、牛腸茂雄の写真集が1977年、シャイニングが1980年公開ですから、シャイニングを真似したわけではない!おそらくキューブリックも牛腸のアイデアを盗んだわけではない。ふたつの作品が独立に、しかも独特の不気味な感じになっているのは、実に興味深いことですね。
佐藤真監督の「阿賀に生きる」(1992)を観ました
佐藤真監督のドキュメンタリー映画「阿賀に生きる」(1992)を観ました(福岡市総合図書館シネラにて)。世評の高いドキュメンタリー・新潟水俣病についての映画ですが、水俣病映画というよりは、むしろ小川伸介監督の「ニッポン国 古屋敷村」(1982)に似ています。ともに現地に住み込んで長期間土地の人たちと暮らしながら映画を撮ったところもそっくりです。「阿賀に生きる」では撮影チームが3年間、土地に住み込んで共同生活をしながら撮影したそうです。ところで佐藤真監督──若くして亡くなりましたが、じつは私の大学時代の同級生です。学生時代から映画や演劇にはまっていて、卒業が危ないというのでみんなでレポートの作成などお手伝いしたしたこともありました。これからという時期に亡くなったのは残念なことでした。
社会学評論に『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました
カウンタ
- 339094総訪問者数:
- 20今日の訪問者数:
- 20昨日の訪問者数:
最近の記事
- no art,no life
- 「ナウシカ、千尋、ジョバンニの社会学」
- 「RBG-最強の85歳」を観ました
- 佐藤真監督の「Self and Others」を観ました
- 佐藤真監督の「阿賀に生きる」(1992)を観ました
- 社会学評論に『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました
- 読書の黄金時代は終わった
- 野崎歓さんの「無垢の歌」
- 「銀河鉄道の夜」の社会学
- 『社会学と社会システム』(中央法規)が出版されました
- 1970年11月25日─三島由紀夫とゴジラ
- オンライン地獄
- 黒澤明の「醜聞(スキャンダル)」(1950)を観る
- オンライン授業の試み
- コロナの時代に「アラビアのロレンス」を考える
- かつて「世界わが心の旅」という番組がありました
- オンライン授業
- ヒガンバナの大群落
- 『村上春樹の短編を英語で読む1979~2011』
- ミッドナイト・イン・パリに出てくるレストラン
- 夢の本屋紀行──韓国の独立書店
- 夢の本屋紀行──パリの書店
- 夢の本屋紀行─中国・南京の先鋒書店
- 今の大学一年生は前代未聞の大変な青春なのか──村上春樹の言葉
- 書物の行方─沢木耕太郎の『旅のつばくろ』
- 8月15日に思う──「日本のいちばん長い日」と「ねじれちまった悲しみに」
- 日刊・工業新聞の「著者登場」で拙著が紹介されました
- 「日本農業新聞」に『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました
- 私と著書『超高齢社会の乗り越え方』が日刊・工業新聞で紹介されています
- 図書新聞に拙著『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました(2020年6月20日)
- 日本NPO学会ニュースで著書『超高齢社会の乗り越え方』が紹介されています
- 西日本新聞書評欄で『超高齢社会の乗り越え方』が紹介されました
- 卒業式のない卒業
- 『超高齢社会の乗り越え方』(弦書房)
- 日本のNPO研究の20年
- 「深読み音楽会・井上陽水」を観ました
- 富士山の上を飛ぶ
- レニ・リーフェンシュタール「美の祭典」を観る
- 「ヘヴンズ・ストーリー」と「菊とギロチン」──そして廃墟
- 社会学入門──「風の谷のナウシカ」を解読する
- 謹賀新年2020年
- 加藤典洋さんの遺著
- 50年ぶりの万博記念公園
- 熊野古道を(ほんの少し)歩く
- 南方熊楠旧居を訪問しました
- 「紀州くちくまの熱中小学校」でお話しをしました
- ナウシカと中村哲さんとの共通点
- 沢木耕太郎の社会調査法講義
- 紀州くちくまの熱中小学校で、お話しをします。
- 中村哲さんは現代のナウシカです
- 丸亀市で「千と千尋の神隠し」から考えるグローバル時代の私たちの行方、という講演を行いました
- 美空ひばり映画を観る
- 塩飽本島と咸臨丸、そして両墓制
- 塩飽本島は「猫島」でした
- 「銀河鉄道」と「同行二人」
- うどん県香川の「釜玉うどん」
- 丸亀の「醤油うどん」
- 丸亀の朝うどん
- うどん県香川の「がもううどん」
- 丸亀市で講演をします
- ラグビーW杯、日本代表に思う
- 「ニューヨーク公共図書館─エクス・リブリス」を観る
- 東京女子大学での日本社会学会大会
- 伊都キャンパス途中のヒガンバナ
- 「千と千尋の神隠し」講義
- 「日本のいちばん長い日」(岡本喜八、1967)を観る
- 「ナビィの恋」を観る
- 中村哲さんのお話しを伊都キャンパスで聴く
- 手塚治虫の初期アニメーション映画を観る
- 真夏に真冬の映画を観る──「太陽の王子、ホルスの大冒険」
- 若者の投票率─ひとつの「思考実験」
- 「病院ボランティアだより」№245(2019年6月号)
- うどん県香川の心に残るうどん店
- 黒澤明の「羅生門」を観る─夢幻能の世界
- 大阪で「介護保険と非営利組織はどこへ向かうか」というお話しをしました
- 福岡中州にある「イエスの方舟の店・シオンの娘」
- 宮澤賢治の「圖書館幻想」(ダルゲとダルケ)
- 「バーフバリ」二部作を観てしまいました…
- 「ラサへの歩き方 祈りの2400km」を観ました─これは傑作だ
- 介護保険と非営利組織はどこに向かうか(大阪勉強会)
- 定年退職後の「居場所」とは何を意味しているのか
- 「呼びかけ」を聴くこと
- 定年退職後の課題─「呼びかけ」とコール&レスポンス
- 「定年と諦念を超えて─セカンドステージと居場所づくり」
- 宮崎のパワフルなNPO法人を見学しました
- 宮崎県立西都原考古博物館で講演します
- 東京大学で「高齢社会の国際比較─アメリカ」の講義を行いました
- 市川雷蔵の「陸軍中野学校」を観る
- 九州大学シリーズ人間環境学での「千と千尋の神隠し」講義
- 日本病院ボランティア協会・福岡研修会でお話しをしました
- 加藤典洋さんの逝去
- 勝新太郎主演の「兵隊やくざ」
- 三島由紀夫主演の映画「からっ風野郎」を観る
- ビル・エヴァンスとは何者か─「タイム・リメンバード」を観る
- 連休疲れには難解映画
- 日本病院ボランティア協会の福岡研修会でお話しをします
- 京都・修学院離宮再訪
- 京都・祇園白川あたり、しだれ桜
- 秘密の花園
- 東京大学・ジェロントロジー特論
アーカイブ
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2009年8月
- 2008年10月
- 2008年8月
- 2006年8月
- 2005年8月
- 2004年8月