2019年は加藤典洋さんが亡くなられた年でもあった。
年末に、遺著というか、おそらく最後の本だろう『大きな字で書くこと』(岩波書店)が出たので、それを読んでいる。
これは、なんという本であろうか。潜在的に、自分の死を予感しながら書いていたのではないだろうか。どれも心にしみるエピソードが、短く、印象的に記されている。
加藤典洋さんには、福岡で、一度だけ、ご一緒したことがある。授業に打ち込んで、打ち込みすぎて、片方の耳が聞こえなくなった、ということをさらりと語られていた。
そういえば『言語表現法講義』は、まさに教室での真剣勝負のやりとりだった。その他に、『さようなら、ゴジラたち』も授業でのヒントに使わせてもらっている。ずいぶんと学恩をいただいていたのだ。
50年ぶりの万博記念公園
先週、国立民族学博物館の出口正之教授の主催による松原明さん(シーズ・市民活動を支える制度をつくる会創業者)の「伝説の研究会」に参加してきました。その話題は出口さんはじめ、多くの方々の報告があるので、ここではさておき。この会場となった国立民族学博物館は「万博記念公園」の中にあります。そう1970年の大阪万博の開催跡地なのです。私は小学校6年生の時、家族でこの万博に行きました。ですから約50年ぶりの万博会場の再訪です。いきなり「太陽の塔」が見えます。当時はシェードのようなものがあって、これほどすっくと立った太陽の塔は見えなかったはずです。当時、入場するといきなりテンションがあがって、舞い上がって、何を見たのか、よく覚えていません。ひとつだけくっきりと覚えているのは、当時からわがままだった私は、かってにいろいろ動き回ったあげく、迷子になってしまったことです。そして、その迷子と迷子の親を捜すマッチングシステムが、子ども心にも「うまくできてないなぁ」と思ったことです。迷子のほうは、親の名前を伝えて探してもらうのです。親のほうは、子どもの名前を登録します。マッチングできません。で、結局、帰りの新幹線に間に合わず、ようやく会えた父親とふたり、家族は帰ったあと、しょんぼりして居残りで関西に宿泊したことを覚えています(私の当時の実家は群馬県でした)。そして翌日、帰りの駅で「よど号ハイジャック事件」を知ったのでした。
後からみるとペンギンそっくり
こんなに大きかったのか
熊野古道を(ほんの少し)歩く
南方熊楠旧居を訪問しました
今回「くちくまの」を訪問するにあたって、熊野古道も魅力的だったのですが、それ以上に関心をもっていたのは南方熊楠でした。紀伊田辺に到着後、まっさきに訪れたのも南方熊楠旧居でした。ここは予想以上でした。旧居がほぼそのまま残っているのです。熊楠が、晩年の25年を過ごした家がここだそうです。2000年までは娘の文枝さんが住んでおられたそうですが田辺市に遺贈されたそうです。文枝さんの「熊楠が生活していた当時の姿に戻してほしい」という遺志があり、大正年間の姿に2006年復元・改修されたそうです。
ここは、すごい。ぜひ訪れるべきところです。
(この前日、和歌山市を自転車で巡った時、苦労してようやく「南方熊楠生誕の地」を発見しました。でも駐車場の片隅に胸像がひとつあるだけでした。)
「紀州くちくまの熱中小学校」でお話しをしました
ナウシカと中村哲さんとの共通点
今日から社会学入門で年内の3回ぶんは「ゴジラ」の社会学の話をすることになります。その前ふりとして、今回は、中村哲さんのご逝去のことに関連してお話しをしました。中村哲さんは、現代にあらわれた「ナウシカ」です。
どういうことでしょうか。
中村哲さんが用水路を作っていた場所は、まるで山脈に囲まれた「砂漠の谷」のようなところでした。この砂漠は「風の谷のナウシカ」 の「腐海」のようです。アフガンの人びとに愛されながらも、アフガンの人によって殺されてしまうところは、まるでキリストのようです。
「風の谷のナウシカ」の最後のシーン、ナウシカが王蟲の触手によって生き返るシーン、それはまるでキリストの復活のようです。中村哲さんの思い出は、その死によって、さらにのちのち意味が深まっていくことでしょう。「ゴジラ」が日本社会に何を問いかけているのか、それとも関連するところです。
沢木耕太郎の社会調査法講義
紀州くちくまの熱中小学校で、お話しをします。
今度の週末、12月14日には、和歌山の「紀州くちくまの熱中小学校」で『「千と千尋の神隠し」の解読から考える──地域の新しい社会資源──』というお話しをすることになっています。準備中のパワーポイントのスライド、すでに50枚を超えてしまいました。
https://www.necchu-kuchikumano.com/2019/12/07/adachi/
中村哲さんは現代のナウシカです
インフォメーション
安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照
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