From the monthly archives: "9月 2022"

NHK・EテレのハートネットTV「森田かずよ 世界に一つだけ、私の身体」を観ました(来週、再放送があるそうです)。昨年の東京パラリンピック開会式の舞台で踊っていた「森田かずよ」さんです。NHK/IPC 国際共同制作「映像記録 東京2020パラリンピック」の監督の伊勢朋矢さんから連絡があって観たのですが圧巻でした。「かずよ」という名前の由来もはじめて知りました。それもふくめてすべてのマイナスをプラスに転化するすごいパワーを感じます。こういう人が出てきたのですね。


シネラの9月は日本映画特集でした。さいごに山口百恵主演の「伊豆の踊子」(1974)と烏丸せつ子主演の「四季・奈津子」(1980)を見ました。対照してみると興味深いです。山口百恵という人は私の同世代ですがリアルタイムでは見ていませんし、とくに関心もありませんでした。しかしこの映画をみてから『蒼い時』という自伝などもみると、なかなか興味深い人だと思いました。つまり大きな欠損を抱えて人生をはじめた人なのですね。それゆえ古典的というか保守的な結婚観や家族観をもっていて、すっぱりと芸能界を引退。かえって伝説的な存在になった……はんたいに烏丸せつ子のほうは何でも持っていて恵まれたデビューのその後は、というタイプに見えました。ところで「四季・奈津子」、福岡県でロケされていろいろ見覚えのあるところが出てきます。なかでも風間杜夫が専務役の「ジョーキュー醤油」──あ、この味噌蔵、学生たちと見学させてもらったところだ、と驚きました。詩人の田村隆一が出てきたりして面白かったですね。


名画座的なところで古い映画をみて、打率はどのくらいだろうか。福岡市総合図書シネラでの最近の経験でいうと、率直なところ3割くらいかな。1時間半、時には2時間から3時間近くも拘束されるのだから評価も厳しめになるかもしれない。最近でいうと、大島渚の「青春残酷物語」、川島透の「押繪と旅する男」、長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」の3つは私からすると「時間を返せ!」と言いたくなるようなものだった。反対に驚くようなシュールなもの、意外な掘り出し物、じんわりくる感動作もあった。「歓待」「しろばんば」「大江戸五人男」「カルメン故郷に帰る」そして今日みた「信さん 炭坑町のセレナーデ」など。怪優・古舘寛治、初めてみた芦川いづみ、板東妻三郎、高峰秀子、そして小雪。やっぱり映画は良いですね。


「暗い眼をした女優」
8月から9月にかけて放送大学(BS231)の映画特別講義があって、フランス映画のジャン・ルノワール監督の「大いなる幻影」(1937)とマルセル・カルネ監督の「霧の波止場」(1938)が放映されました。放送大学の「授業」なので講師の解説がつくのですが、担当が大学時代からの友人の野崎歓さんで、この解説がいい。ともにヨーロッパの大戦間に作られた映画で「戦争」についての映画でもあるのです。その「戦争」への態度が、じつにフランスらしい、というのです。現在のマスメディアの「戦争」について一色に染まっているかのような論調とはひとあじ違う。反戦や厭戦──なにしろ「霧の波止場」は脱走兵の話ですからね。なるほどこういうのがフランス流なのか、解説されてはじめて理解できました。それにミシェール・モルガン! 浅川マキの代表作のひとつ「暗い眼をした女優」というのがあります。その歌詞が「ミシェール・モルガンの眼を もうひとつ 暗くした女優の眼が 若い女を都会へと誘う」というのです。さて、どんなに暗い眼をしているのだろう、と想像もつかなかったのですが初めて見ました。これがミシェール・モルガンか! でも、あんまり、いや全然「暗い眼」でないように思うのですが。浅川マキは別の映画から発想したのかな。

3年目になりますが10月に香川県丸亀市の文化芸術推進サポーター養成講座でお話しをすることになりました。

お題は──『「千と千尋の神隠し」から考えるこれからの世界』です。千尋は湯婆婆とどう対決したでしょうか。戦って勝とうとはしませんでした。戦って勝つ以上の世界観がここにはある。この映画のラスト・メッセージの中に、私たちのこれからの世界のひとつのヒントを見たい、そういうお話しになると思います。