From the monthly archives: "7月 2016"

 6月、しばらくパリ大学の国際大学都市に滞在していました。おりしも英国のEU脱退騒動のただ中で、フランスと英国、そして日本のグローバル化について、すこし考える機会がありました。
 フランスは不思議な国です。ヨーロッパの真ん中にありますし、世界中から大量の観光客がやってきます。地下鉄に乗れば多文化・多民族化そのもので、半数以上がアフリカ系やアラブ系の人たちです。つまりグローバル化の最先端にあるわけです。ところが反面、それと真逆のことも少なくありません。まず英語が通じません。街の人が英語を話せないとは昔から言われていましたが、今回、大学の職員も、警察官も、ほとんど英語を話せない(話さない)ことにあらためて驚きました。フランスのグローバル化は、日本人の考えるグローバル化とはまるで違います。フランスの言語文化芸術こそがグローバル化のもうひとつの中心だという超グローバリズム意識があるのでしょう。アメリカ流の資本のグローバリズムだけでなく、フランス流の文化のグローバリズムもあるのです。昨年から、何度となくイスラム国のテロ攻撃の標的となったパリですが、フランス流の文化グローバリズムも異文化・異宗教にたいして攻撃的に振る舞ってくるものに見えたのでしょう。だからテロリズムを誘発したのです。
 さてグローバル化の最先端にいると思っていた英国がEU離脱ということになりました。これまた意外でした。グローバル化は英国にも経済的な様々なプラスがあるはずですが、日常生活レベルでは違ったようです。言葉の通じない得体の知れない移民たちが押し寄せてきたという、身体感覚が発する警戒感や拒絶感は、思想や意識だけでは払拭できないものだったのかもしれません。自分たちが出した結果に自分たちが動揺しているようですが、このような矛盾や分裂は、グローバル化が進む過程で、今後は世界中で起こってくるでしょう。
 こうした困難な時代に、パリ大学で学ぶ日本の留学生たちは、どう反応しているのでしょうか。何人かに聞いてみたところ「いまやどこでもテロリズムがおこりうる、それに萎縮しても仕方ない」「パリではこのような緊張や衝突は日常茶飯事。これこそグローバル化の最前線なのだから、前向きに考える」「パリはこのうえなく面白い」などとフランス人以上にフランス的な発想や意識に切り替わっているかのようでした。たのもしいですね。思えば、明治以来の日本の近代文化、文学、哲学や思想などは、フランス留学組がひっぱってきたのです。このところフランスの影が薄くなったと思っていましたが、けっしてそんなことはなく、アメリカとともにグローバル化のツートップであることは間違いないようです。


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まるでお城のようなパリの大学都市

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初夏の日曜日の午後