From the monthly archives: "11月 2017"

来福されたフランス文学者の野崎歓さんを門司港レトロ地区にご案内しました。そのおりに、修復・復興なった料亭・三宜楼を見学しました。ここは門司港が九州の大玄関口として隆盛をきわめていたころに建築された大料亭です。ながらく無住となって取り壊しの話もありましたが、地元の有志や企業の協力で修復され、一般にも公開されるようになりました。現在、内部はボランティアの方々に、案内・説明していただけます。ここはじつに興味深い建築です。いろいろと驚きのしかけも満載です(説明してもらわないとちょっと分からないです)。3階にのぼると関門海峡や下関も一望できます。北九州に来られたら、ぜひ一足のばして門司港へどうぞ。


門司港レトロ地区の丘の上にそびえ立つ威風堂々の料亭です

古川ロッパはじめ、有名人も、みなやって来たようです。内部の意匠も凝りに凝っていますね。

 

 

小倉駅近くの「秘密基地」というカフェで行われた野崎歓さんの講演、「文学の国、フランスへのお誘い」(11月23日)は、今年のフランス大統領選のエピソードから始まりました。マリーヌ・ルペンとエマニュエル・マクロンとの直接対決に決着をもたらしたものは、意外なことに「文学」だった、というサプライズ。ルペンのトランプ的な論理に「ペルランパンパン」という17世紀の単語で反撃したマクロン、他方「文学」をまるで理解できなかったルペン。マクロンに勝利をもたらしたものこそフランス文学だったという実に意外な観点から、いまだにフランスが文学の国であることを説かれました。なるほど、そうだったのか!、と一驚でした。そもそもフランスという国家やフランス語は17世紀に出来上がったもの。英語よりフランス語が高級で優勢で、ヴェルサイユ宮殿を造ったルイ14世のころから、「宮廷」のコトバ、フランス語がヨーロッパ各国の宮廷を席巻していったという歴史も、なるほどそうだったのか! とひざを打ちたくなるほど。だめ押しとして、トルストイやドストエフスキーもフランス語でバルザックを読んでいた、などとなると、もうびっくり仰天ですね。

翌日の「フランス文学と愛」(11月24日)は、ごく少数のフランス語およびフランス文学愛好者だけの小さな会でしたが、こちらの講演もじつに楽しく、じつに考えさせる内容でした。フランスでないフランス語圏、スイスのジュネーブからやってきたルソーが、フランス思想界やフランス文学界を「なぎ倒して」席巻してしまったさまを、じつに楽しいユーモアで包んで話されました。ルソーこそ「回想録」でない「自伝」文学の創始者だったこと、はじめて「子ども時代」が人間形成のうえで重要であること主張したこと、それにも関わらずみずからの子どもはすべて孤児院に送ってしまったという矛盾、さらに年上の人妻との「アムール」というフランス文学界の大伝統をつくったこと。以後のスタンダールもバルザックも、ロブ・グリエにいたるまで、「ルソーになぎ倒された世代」であること。スタンダールの「赤と黒」にもバルザックの「谷間の百合」にも、みんな「ルソー印」がついていること、などなど、実に楽しく巧みに、しかし「なるほど、そうだったのか!」と手を打ちたくなるほどの創見にみちたお話しでした。そして極めつけは20歳以上の年の差ある「マクロン大統領」の奥さんと文学好き。そして最後に「サプライズの隠し球」として「ミッテラン大統領」の愛人と隠し子事件。その当事者が、ついにミッテランとの手紙のやりとりを大冊にして出版したこと。ここにも脈々とフランス文学の伝統が息づいているのだというお話しでした。そして、だれでもフランス人になれる、だれでもフランス文学に参加できる、そういう開かれた「共和国」の理念の大切さについても語られました。テロリズムに襲われたフランスだからこそでしょうね。


北九州市の「秘密基地

福岡・箱崎の「ブックス・キューブリック箱崎店」

2017年11月12日に、久留米市市民活動サポートセンター(みんくる)の「市民活動フォーラム」で「私たちにとって地元とは何か」という講演を行いました。そのあと「地域を支える活動事例」についてのコメンテーターをつとめました。


久留米市市民活動サポートセンター(みんくる)で「私たちにとって「地元」とは何か」をテーマにお話ししました。

急に寒くなりました。紅葉の季節ですが、気温はもう冬ですね。4年生には、卒論の山場が来ています。昨日は恒例の「卒論題目検討会」がありました。4年生、ひとりひとりの「卒論題目」を決定するために4名の教員が喧々諤々いろんなことを言い出して4年生も戸惑ったことでしょう。でもこうやって議論していると、いろいろな新しいアイデアを思いつきます。「こういう題名にしたら良いのに、こういう構成にしたら絶対おもしろいのに」などと思ってしまうのですが、4年生もさるもの「これは私の大学4年間の集大成ですから、私の思うようにやります」と断固、こちらの提案を拒否してきたりします。


北九州の「コワーキングスペース秘密基地」という魅力的な名前の会場で、フランス文学の野崎歓さんによる「文学の国フランスへのお誘い」。私も福岡から駆けつけます。



http://fukuoka-unesco.or.jp/%e6%96%87%e5%ad%a6%e3%81%ae%e5%9b%bd%e3%83%95%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%b9%e3%81%b8%e3%81%ae%e3%81%8a%e8%aa%98%e3%81%84.html