From the monthly archives: "2月 2021"

映画「紅色娘子軍」(1961)は、海南島で中国国民党につながる反動地主の横暴に対して立ち上がった女性農民が紅色娘子軍を組織して、反動地主を打倒する姿を描いた映画、とある。文化大革命の最中にも上映が許された「共産主義模範作品」で、中国共産党のプロパガンダ映画である……それはそうなのだが、今観るとじつに面白い。単純で明快すぎて、正反対の意味でいろいろ考えさせられて興味深いのだ。純粋すぎる若者たちが、革命軍の担い手になっていくストーリーなのだが、革命の青春期と若者の青春期とが見事にシンクロしていて、当時の若者たちは普通の二倍の熱量の恋愛をしていたのだろうなと思ったりする。しかも制作者が意図しなかったにも関わらず、すでに後の「文化大革命」の負の予兆もしっかりと映し出されているのだ。


no art,no life──これはNHK・Eテレの、週に一度、わずか5分間の番組である。でも、その5分間が濃密だ。毎回、ひっくり返るほど驚かされる。
たとえば最近の回では「勝山直斗」くんの紹介。番組紹介には「中学生の勝山直斗は、唾液を指につけ壁に絵を描き、壁紙を剥がして壁画を浮かび上がらせる。日本各地の“表現せずにいられない”アーティストを紹介する。既存の美術や流行・教育などに左右されない、その独創的な美術作品」とある。まさにそのとおり。障がい者を見るようなパターナリズムがまったくない。「障がい」とか「福祉」というような概念をまったく必要としない。そんな次元をはるかに超えている。純粋に、ひとりの驚くべきアーティストとして紹介している。
しかもこの人(勝山くん)は、変わった人をのぞき込むような目線をちょっとでも示したカメラに向かって激しく攻撃してくる。彼は壁紙を口にいれる。最後には、それを天上に向かって投げあげる。これは凄い。

追伸
さらにさかのぼって「no art, no life」をいくつも観ました。驚きはさらに深まります。はじめのころは「障害者アート」「エイブル・アート」、フランス語で「アール・ブリュット」などと様々な説明がなされていました。作者が福祉施設や障害者作業所でこうした作品を作っていることを紹介していました。福祉番組という枠での紹介だったのかもしれません。そうした説明が、回を追うごとに消えていきます。いまは「no art, no life」だけになりました。これは、びっくりするくらい番組が成長したからだと言えるでしょう。


昨日、「社会学入門」の授業が終わりました。今学期は初めてのオンライン授業ということもあって、私としても全力投球。これまでにない授業内容を準備して臨んできたのですが、力を入れすぎのところもあったようです。先日、客観的に見るとどうなのかなと、オンラインで授業しているところを、妻と息子にも聴いてもらいました。すると反応は、これはやりすぎ、つめこみすぎ、言い過ぎ、などとコテンパンでした。うーん。なやみましたが、それでも最終回は、これまで話し残したことをまとめて「ナウシカ、千尋、ジョバンニの社会学」とこれまで以上の詰め込み。さて、どうだったか。185人から長文の感想文が届きました。その中に、短いながら、おっ、これは、という感想がありました。
 「対照的な千尋とナウシカの物語が根底では類似していて、千尋のラストシーンでナザレのイエスを想起する……私のこれまでの想像力では到底たどり着け得ないというか、今まで何度も千尋を視聴してきた私もまったく思い至らないことに社会学の視点から切り込む授業は非常に新鮮でした。」
やった、という感じですね。