From the monthly archives: "1月 2022"

北岡和義さんを悼む──お元気かなと年賀状をだしたところ奥さまから昨年の10月に逝去されたというお知らせをいただきました。思えば27年前にロサンゼルスでお会いしました。家族づれで渡米しUCLAに留学して苦労していた頃です。見るものすべてが初めてづくしのロサンゼルスで、日系コミュニティの方々やKeiro Services、NPOや重要なフィールドなどを教えていただきました。ジャーナリストとしてはJATVというTV局を運営し活発な活動をされていてTVに出演させていただいたこともあります。帰国後は三島の日本大学で教えておられ、清流柿田川を守る会などご案内していただいたこともあります。九州大学の私のゼミにゲスト・ティーチャーに来ていただいたり、伝説的な楢崎弥之助さんと再会するというので天神の焼き鳥屋にご一緒させていただいたり、近年も年に一度は東京でお会いしていたのですが……ご冥福をお祈りいたします。


今学期のオンライン授業【社会学入門】も大詰めに近づいてきました。先日は、「風の谷のナウシカ」を社会学する、と題して、「風の谷のナウシカ」から3つの社会学的主題を読み取る、というお話しをしました。まずは「風の谷のナウシカ」の主人公は誰か、という問題提起から始めました。皆さんはどう思われますか?


新著『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)の電子書籍版が発売されました。最初の10頁くらいは「ためし読みすることもできます。ぜひどうぞ。従来型の紙の本のほうは月末に発売されます。
これは、介護系NPO団体とともに行った全国の「有償ボランティア」の実態調査をふまえて、あらためて「有償ボランティア」は「ボランティア」として矛盾しているのか、という難しい問題に取り組んでみた本です。ボランティアの「定義」を問い直すことからはじめて、無償と有償の違いを新しい視点から考え直しています。本の後半では、ボランティアから〈仕事〉を作り出すことは可能か、「労働でない仕事」は可能か、という大きなテーマにも挑戦しています。


先日放送された「村上ラジオ/成人の日スペシャル」を聴いていたらスタン・ゲッツ特集でした。だいぶ昔のことですがモントリオールから一人でレンタカーをしてケベックまで行った時のことです。夕食にはいったケベック・シティの小さな中華料理屋でした。とにかくずっとこの「ゲッツ/ジルベルト」がかかっていたんです。このジルベルトとは、てっきりボーカルのアストラッド・ジルベルトのことだと思っていました。ところがなんと夫のジョアンのことだったんですね。CDのジャケットみてもアストラッド・ジルベルトのことは全然クレジットがありません。これを知って呆然としました。そしてひさしぶりにこのアルバム聴き直しました。いいですね。


福岡市のシネラで香港映画特集をしているので立て続けに1960年代からの香港映画を観ています。「梁山泊と祝英台」(1963)、「北京オペラブルース」(1986)、「大酔侠」(1966)など、どれも素晴らしいすね。京劇の裏返しで、劇中劇の趣もあって、男装の麗人の大活躍。これはほとんど宝塚の世界ですね。同時期、中国本土は文革がはじまって大混乱になります。香港はブルース・リーも現れて、まるでアジアのハリウッドのような隆盛だったんですね。ブルース・リーの映画のカメラマンが日本人だったというのも初めて知りました。やがて香港は英国から中国に返還されて、その中国が香港を呑み込んでいって……残念なことです。


新年あけましておめでとうございます。大晦日の夜、私は、紅白歌合戦の裏番組?として放映された──おそらくほとんど観た人はいないのではないかと思われる番組を観ていました。それは、なんと、放送大学の番組です。放送大学がBS231で放映しているのを観ている人はあまりいないと思いますが、その放送大学の、よりによって大晦日の晩に、私の大学時代からの友人の野崎歓先生が、フランス映画の歴史的名作「天井桟敷の人々」の解説者として登場されたのです。先日、2年ぶりの東京でお会いした時に、紅白歌合戦の裏番組に出演するから、とのことで録画していたのですが、紅白よりもきっと面白いと思って、オンタイムで全部見てしまいました。午後8時30分から深夜0時30分まで、野崎歓さんの2度の解説をはさんでなんと4時間の番組です。マルセル・カルネ監督の1945年の「天井桟敷の人々」──数十年前に一度観たことがありますが、ほとんどあらすじすらも覚えていませんでした。今回、あらためて見直してなかなか凄い映画だと思いました。前回はジャン・ルイ・バローが主役かと漠然と思っていましたが、全然そうでない。主役はギャランス(アルレッティ)さんでした(ガランスとギャランスと中間くらいに聞こえる)。くわえて、野崎歓さんの解説が秀逸!ヒロインのガランスは「フランス」である。そのフランスの理念「自由・平等・博愛」は「自由・平等・恋愛」と読み替えられて、ナチス占領下のフランスでレジスタンス映画として撮影されたのがこの映画だ、という驚きの展開。なるほど、こういう解釈は、そう解説されないと、絶対にそうは読み取れないでしょう。しかし、解説されると、なるほど、すとんと腑に落ちた──そういう驚きとともに新年が明けました。今年も、よろしくお願いいたします。