From the monthly archives: "7月 2018"

前から日程が決まっていたこととはいえ、昨日の箱崎町歩きフィールドワークは、熱中症が危惧される過酷な暑さの中、最大限の注意を払ってゼミの20名の学生とともに筥崎宮から九州大学博物館まで歩きました。午前中はまだ曇り気味でしたが、箱崎の町屋や、子どもたちの人形飾りのお祭り準備などを見学したお昼前後から、「これはいかん、これは危険だ」というレベルになってきました。そこで予定変更。九州大学旧工学部本館3階の中の涼しい家具展示室へ。そこで弁当ランチしたあと、スタッフの方が九州大学の移転にともなう家具や什器のレスキューを行うクラウドファンディングのお話をして下さったり、ここで一日だけの本格カフェ「ハコスイ出張カフェ」をされていた箱崎水族館の花田ご夫婦が町の歴史を話してくださったり、かつて教授会の開催されていた貴賓室を見学させていただいたり有意義な時間をすごせました。最後は箱崎駅前食堂とゲストハウス「ハレとケ」を見学して、まちカンパニー代表の斉藤康平さんのお話をうかがってお開き。なんとか無事にフィニッシュ。みなさんご苦労様でした。斉藤さんありがとうございました。


福岡も、台風の直撃のあと、かつてない集中豪雨、そして過去最高気温ときてバテバテです。ちょっと危険な感じの天候が続いています。合間をぬって毎夏恒例の社会学研究室主催のバーベキューパーティを催しました。この箱崎キャンパスのこの場所でバーベキューが出来るのも今回かぎり。ブックスキューブリックの大井さんもサプライズで参加して下さいました。3年生が公務員講座、4年生が就活や公務員試験の受験などで参加がさみしかったのですが、二年生中心に元気いっぱい、暑いさかりのバーベキューパーティでした。


軽井沢のさきの信濃追分に、しなの鉄道で行ってみた。旅行客も、軽井沢までは行くけれど、信濃追分まで行く人はまれだろう。軽井沢駅は大混雑、でも次の中軽井沢で大半の人が降りてしまって信濃追分駅は無人駅である。ここの「油屋」というかつての文人旅館に行ってみた。堀辰雄、立原道造らが泊まって仕事をしたところだそうだ。いまは「文化磁場・油や」となって、旅館の一階部分は、おしゃれなアートスペースや古本やレコード屋、図書室などとなっている。ここのスタッフに聞くと、近くには、加藤周一、福永武彦らの別荘もあるという。さっそく散歩がてら探してみた。すぐに見つけることができる。いまは主を失い、だんだんと朽ちていく最中なのだろうか。どの別荘も、継承者がいなくなったり、受け継いだ世代のライフスタイルが変わって別荘に来なくなったりして、使われなくなっているところが多いそうだ。高齢社会で空き家が増えているのと同じ状況なのだろう。高原の別荘にこもって小説を書くというような「堀辰雄スタイル」がもはや時代おくれなのかもしれない。そもそも文化人や知識人、作家などという言葉が、絶滅危惧種になりつつある。そういう様々なことを考えさせてくれる信濃追分だ。


加藤周一の別荘。いまは使う人がいるのだろうか。

油屋、堀辰雄が気に入っていたという部屋が記念室になっている。

立原道造は、詩人で建築家でもあった。油屋で火事に遭遇したらしい。

福永武彦の別荘。池澤夏樹さんは継承者ではないらしく、複雑なのだそうだ。

昨日は、校外へ出てフィールドワーク学習でした。20名のゼミ生たちと、ブックスキューブリック箱崎店を訪ねて、お店の二階のカフェでお昼をいただいたあと、店主の大井実さんの著書『ローカルブックストアである―福岡 ブックスキューブリック』(晶文社)に関連したことをうかがいました。なぜローカルブックストアなのか、どのようなご苦労があったのか、そのこだわりや品揃えのこと、雑貨や文房具、カフェの併設、トークショーやイベントのことなど、学生たちが事前に提出した質問すべてに詳しく答えていただき、1時間の予定が2時間になりました。有意義な時間を、ありがとうございました。


映画「モリのいる場所」を観ました。NHKの日曜美術館で「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」展が紹介されたのを見て感心をひきつけられ、国立近代美術館に見に行ったのです。そこに映画のチラシがありました。その時点では映画は公開されていなかったのですが、ようやく福岡でも公開されました。「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」展は回顧展ですから、熊谷守一の人生に沿って、子どもを亡くすなど家庭的な不幸をどう乗り越え、それとともに絵がシンプルになり、どう深まっていったという観点からの展示になっていました。
映画では、そういう側面は捨象されて、「仙人」になったあとの夫婦の姿を活写していました。そういう意味で、絵の回顧展と、まったく重なるところのない、別の熊谷像を、とくに樹木希林の卓越した演技とともに、楽しむ映画ですね。