介護保険のパラドクス──成功なのに失敗?(シノドス掲載)
ウェブマガジン「シノドス」に、私の「介護保険のパラドクス──成功なのに失敗?」が掲載されました。
ご紹介いたします。
「シノドス」はこちらから↓
http://synodos.jp/welfare/19524
新学期、伊都キャンパスで「社会学入門」の講義が始まりました
きょうは、九州大学・伊都キャンパスでの、新1年生のための「社会学入門」の授業の初回でした。割り当てられたのが200人の大教室だったので、何人くるかわからず、ちょっと、どきどきしながら教室に行きました。大教室に学生ぱらぱらだったら、ちょっとがっかりだな……。でも、行ってみると、私が教室に入っていけないくらい学生が来てくれていました。教室のキャパをはるかにこえて400人以上の受講生がつめかけていました。座席は満席のうえ、通路や壁際にも学生があふれていました。教壇横にも学生がすわりこむというのは、九州大学に赴任して21年になりますが、初めての経験でした。うれしいなぁ……でもちょっと残念だなぁ、教室のキャパシティの関係で、受講生を絞り込まないといけないから。
約40分ほどパワーポイントを使って今学期の授業の概要と計画を話しました。そのあと感想と自己紹介を書いて提出してもらって授業を終えました。そのあと、それを読んで、受講生を絞りこむことになりました。400枚以上の感想文を、ティーチングアシスタントとともに、二人でダブルチェックしながら、2時間半かけて、全部読みました。どれも力作(?)ぞろいなので、読むのに時間がかかりました。けっこう苦労して絞り込み半数以下の200名に受講許可決定をしました。明日、学生掲示板に掲示されるはずです。せっかく入試を突破したあと、再び受験させたみたいで申し訳ないかんじです。あすは「合格発表後の合格発表」みたいな感じになると思います。なんだかもったいない話ですね。
何で、こんなに受講生が殺到したのか。理由は、ほぼ推測できます。1年生の選択必修科目の中では、水曜日の午後という、受講しやすい時間帯。それに、法学や政治学、経済学や理科系科目にくらべて、何となくゆるくて何でもありのイメージの「社会学入門」。加えて、私の書いた講義概要に、現代社会を考える、少子・高齢化や「家族」の困難、「地方消滅」などをテーマにする。そして、おそらく決定打が、グローバル化の中でのテロリズムやテロとの戦いを考えるための材料として映画「ゴジラ」や「シン・ゴジラ」「エヴァンゲリオン」や「風の谷のナウシカ」を取り上げる、と書いたからでしょう。おそらくそうなんですが、こちらは、まじめに深く取り上げるつもりなのです。準備はもう何ヶ月も前からしてきました。パワーポイントは毎回50枚くらい用意します。大教室での授業には全力投球します。授業は楽しく面白いものにしたい。なにより、久しぶりに講義することが、私にとって、とても楽しみなのです。こちらがわくわくしながら講義するのです。
全15回の講義を1回でも欠かすのがもったいなくて、休講も試験もしません。全回すべて講義させてもらいます。成績評価は、出席と毎回提出してもらう感想文です。これでほぼ間違いなく成績評価できます。感想文は、まるでライブの反応をみるようで、どきどきものです。ときどき、真剣勝負でけんかをふっかけてくる学生が出てきます。今日も、ひとりいました。こういう学生はみどころがあります。きっと伸びていきます。間違いありません。
今日も初回なのに、たった40分だけの授業をきいた受講生の感想文が、はんぱなかったです。A4用紙を配布したのですが、びっちりと書き込んできます。これを読むのは、とても大変ですが、とても大きな楽しみでもあります。次回から半分以下の200人に絞り込むのは申し訳ないことですが、おおいに楽しみです。
福岡の滝桜と薄墨桜
パリ国際大学都市でラーメンを作る
さて、学生たちは、このような砂漠地帯で、どうして暮らしているのだろう。学食はないわけではないが高くてまずいと言う。日本館にはそもそも学食もない。朝食からふくめて、食事は、いっさい自分でなんとかしなければならないのだ。そこで、みんなどのような自炊しているのだろうか。推測するほかはない。で工夫する。
そこで、私も、ほぼ朝食と夕食は自炊になってしまった。そもそも一日出ていて、疲れて帰ってきて、その後で、さぁ一人で外食だ、という気には到底ならない。
さて、大河ドラマ「真田丸」で今や時代の寵児となった堺雅人が主演した「南極料理人」という変な映画があったのをご存じだろうか。南極越冬隊の料理人が堺雅人なのだが、隊員たちは、次第に「ラーメンが食べたい」というオブセッションに支配され、半ば狂っていくというお話しだった。日本人にとっての追いつめられると狂うほどのソウル・フードが「ラーメン」だということを、南極越冬隊が、真に迫って主張していた。極限に追いつめられると、人間の食への欲望が、ラディカルに現れてくる。この映画では、それは「ラーメン」なのだと主張していた。そうかな、と疑問符をつける人もいるだろう。映画だから単純化しているのかもしれない。私も、追いつめられて、さいごにたどり着くのが「ラーメン」かどうか。そうではないような気がする。でも、日本を離れるとラーメンを食べたい気持ちは、よく分かる。パリに来ると、「蕎麦」や「うどん」では物足りないのだ。今回、ごはんや納豆や蕎麦を持ってきてみて、よく分かった。なんだかぴんとこないのですね。この、こってりしたヨーロッパの風土では物足りない。
で、パリ国際大学都市で、ラーメンを作ることになる。日本でも週に一回くらいは作るが、私の好みが「豚こつ」でも「こってり」でもなく、中華風のあっさりしたものだから、自分でつくる。前回のパリ国際大学都市滞在中に思いついて独自に工夫・開発して、その後、日本でも改良と研鑽を重ね、今回にいたっている(ちょっとほらが入っている)。
作り方ですが、まず、スーパーで「中華めん」を入手する。近くのスーパー(Framprix)で「AYAM」なる麺を入手しているが、これは、日本で買う中華麺より少し劣るが仕方ない。日本のいわゆる縮れた「ラー麺」を私はあまり好まない。ストレートな中華麺のほうが良い。麺とスープは別々につくる。スープは前回は「マギーブイヨン」のチキンコンソメなどを応用して使ったが、今回は日本から中華スープの素「シャンタン」を持参した。これに醤油をすこし追加する。これで、私的に、日本のラーメンよりもラーメンらしいものが出来上がる。しかもあわせてたった3分。これでわれながらおいしい。おそらく各国からの留学生たちも、いろいろと苦労して自炊していることと思います。
この巨大なパリ国際大学都市の周辺が、フランス料理や外食の砂漠地帯であることを思うと、あらためて人類の食文化の不思議さと奥深さに思いをいたさざるを得ません。
インフォメーション
安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照
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