From the monthly archives: "11月 2020"

11月25日は、三島由紀夫が自決した日ですね。今年は50年目ということでドキュメンタリー映画「三島由紀夫 vs.東大全共闘」や、NHKでも先日「三島由紀夫──50年めの青年論」が放映されたりいます。NHKの番組では凄い女性ダンサーが出てきて斬新でした。さて、ちょうど11月25日は、私の「社会学入門」のオンライン授業日なので、三島由紀夫を取り上げることにしました。題して「三島由紀夫とゴジラ」。どういうことでしょうか。三島とゴジラは、とても似ている、共通点がある。三島もゴジラも、戦後日本のあり方にいらだっていて、その行動はとても似ているのです。東京を破壊したり、決起したりしたのは、いったい何のためなのか。誰に問いかけているのか。そういうことを話したいと思います。



 荒唐無稽な妄想のようなテーマですが、三島由紀夫の命日のきょう、200人のオンライン授業をしました。学生たちは熱心に聴いてくれました。その証拠に熱い感想文が次々おしよせて来るのです。力作ぞろいで、ひととおり目を落とすだけで、たいへんです。100通くらいに目を通したところですが、今日の深夜が締め切りなので、まだくるでしょう。社会学の見田宗介先生は、大学では1年生に教えるのがいちばん楽しい、とおっしゃっていましたが、そのとおりですね。打てば響くような感想があり、真っ向から反論して戦いを挑んでくるものあり、みんな真摯に聴いてくれているのを感じます。午前中、講義したあとはすべて出し尽くして、ぐったりと横になってしまうほど疲れましたが、この感想を読むと、ふたたび元気が湧いてきました。
 ところで、三島由紀夫とゴジラの共通項とは何か──あの戦争はいったい何だったのか、戦争責任はいったい誰が負ったのか、という「問いかけ」(そしてそれは丸山真男のいう「無責任の体系」そのものだったのではないか)。そして「対米従属」「戦後、日本はずっと、かの国の属国だ」(「シン・ゴジラ」)という「いらだち」──それらが共通していると思うのです。二人はそっくりの「問い」を日本にたいして発しているのではないでしょうか。


 

多くの人の実感だろうが、オンライン授業のほうが、通常の対面授業にくらべて格段に疲労度が高い。どうしてなのだろう。すこし考えてみた。第1に、オンライン授業だと多くの見知らぬ人たちが、私をじっと見つめている、という感覚になる。一挙一動を真剣に見つめられていたら、ミスできないし、コトバに詰まることもできない、これは疲れる。事前の準備も、対面授業より綿密におこなわなければならない。これまでも画面にスライドが映らなかったり、古いスライドがでたり、フリーズしてしまうこともあった。冷や汗がでる。オンライン授業は手抜きできないのだ。第2に、呼吸や息継ぎが難しい。対面授業だと、教室のひとりひとりを見渡して、アイコンタクトしたり、ふっと息ぬきをしたり(学生も息をつめていることが多いので)、テンションとリダクション、緊張と脱力とを、リズミカルに交代しながらおこなうのだが、そのテンポがオンラインではつかみ難い。下手なスイマーは、全身ばたばたさせて全力で力任せに泳ごうとする──というよりは半分、溺れているのだ。同じように全力疾走してしまうと、あっというまにエネルギーが枯渇する。これも、疲れる二つめの原因だろうか。そこでペース変更のきっかけとして映画や小説やサブカルチャーの話題を挟むのだが、これまたそれを見ていない人にはちんぷんかんぷんになるので、使い方が難しい。映画「シン・ゴジラ」もいつ使おうか。


黒澤明の「醜聞(スキャンダル)」(1950)を何十年ぶりかで再見しました(福岡市総合図書館シネラ)。驚きました。ほとんど何も覚えていなかった自分に。そして黒澤明の若かりし頃の率直な正義感に。さらに意外だったのは、これが黒澤明の「生きる」(1962)にそっくりだったこと。主役は三船敏郎でも山口淑子(李香蘭)でもなく、志村喬演じる弁護士の転落のドラマでした。これは、ほとんど「生きる」そのものではないですか。この映画が「生きる」ほど有名でないのは、やや図式的すぎてリアリティのないこと、後半のどんでん返しの余韻の深めがないまま、青臭く終わるからでしょうか。黒澤明も失敗したと思ったのかもしれません。「生きる」ではこの映画を反省しながら反復して、今度は大成功したのかもしれません。


今学期は、200名の顔の見えない学生たちに向けて、毎週オンライン授業をしていますが、これまでの授業方法を反省させられることしきりです。
昨年までの対面授業では、大教室でのライブの感覚で授業をしていました。スライド作りに精を込めて、授業当日は初めから全力疾走90分間ノンストップのライブ演奏。これ、声も涸れるし、終わったあとはどっと疲れます。でもこれは運動会でトラックを全力疾走した後の疲れのような心地よさもありました。今年は、そうはいきません。まず、話す内容をぐっと減らしました。昨年に比べてスライドも半分以下に。そして後半の30分は、感想を書く自習時間としました。これ、まだうまくいっているのかどうか分かりませんが、昨年までとはまるで違いますね。学生の感想が熱いです。毎回、千字以上の感想がたくさん来ます。ひととおり読むのだけでも大変ですが、なるほど、こういう相互交流というのもありなのだな、そう思います。