ラグビーW杯で、にわかラグビーファンになった人も多いことと思います。私もたいへん関心を持ちました。とくに日本代表のメンバーが「ナショナル、インターナショナル、グローバル」という3つの段階を絶妙のかたちで含んだ構成になっているところに、とりわけ関心を惹かれました。そこで、昨日の授業では「ナショナリズムを超えるインターナショナリズム、その先にくるグローバリズム。ところが、季節はずれのナショナリズムの台風も来ていて、世界で吹き荒れている。さて、この先、どうなるか」という話をしようと思いました。
ところが……2年生から4年生の約30名が出席している私の講義の中で、ラグビーW杯を見ている学生が、なんと3名しかいませんでした。これには衝撃を受けました。今の若者は、いったい、どういう世界に住んでいるのか、にわかに視界が不透明になってしまいました。
「ニューヨーク公共図書館─エクス・リブリス」を観る
先日、福岡でたった一日だけの上映があったフレデリック・ランズマン監督の「ニューヨーク公共図書館─エクス・リブリス」を観た。びっくりするくらい多くの人が詰めかけていて、開演前から長蛇の列だった。ちょっとびっくり。
この図書館、ニューヨークの観光地にもなっている「世界で最も有名な図書館(のひとつ)」である。私も10年ほど前に訪れたことがある(ブログの「幻想図書館」参照。たくさんの館内写真を載せてあります。 http://adach.lolipop.jp/wp/?p=822)。
この映画、途中休憩もはいる3時間半の大作。しかもノーナレ、ノー解説である。そしていきなり、リチャード・ドーキンスである。その後、エルビス・コステロとか、パティ・スミスも登場する。しかし主役は、ニューヨーク公共図書館のスタッフたち。多様なスタッフが、図書館の運営や議会からの予算獲得、民間からの寄附獲得にどう取り組んでいるか。驚くべく密度とレベルの高い議論がされている。本当なんだろうか。映画の撮影があるから張り切っているのではないか、などと思うまもなく、話題やテーマは多岐にわたっていく。とくに図書館にやってくるホームレスとのつき合い方をどうすべきかの議論が興味深かった。私がボストンに暮らしていたとき、毎日のように、ボストン公共図書館に通っていた。そこには毎日やってくるホームレスもいた。毎日、やってきて、リーディングルームの、ほぼ同じ席に陣取って、一日いる。うとうとしている時もあるし、何か読んでいる時もある。近くをすれ違うと異臭がするのでホームレスと気づくのだが、どこか哲学者の風貌をもったホームレスである。さて、こういう人たちを、公共図書館のスタッフはどう対応しようとしているのだろう。映画では、問題提起だけされて、どう対応するか、どう対処するかまでは描かれていなかったのだが。図書館の公共性とホームレスのような人たちへの対応と、さぞ難しいことだろうなぁ。
東京女子大学での日本社会学会大会
10月5~6日、日本社会学会が、東京女子大学で開催され、院生とともに参加し研究報告を行ってきました。この「東京女子大学」ふだんは外部の人は入れないそうですが、美しい。実に美しいキャンパスです。日本でも有数の美しい大学ではないでしょうか。英語名は「Tokyo Woman’s Christian University」ですから日本語とちょっとニュアンスが違いますね。北米のプロテスタント諸教派による援助を受けて開設されたとあります。日本で最初に女子にキリスト教教育を行う大学として設立されたようです。初代学長は新渡戸稲造、設立代表者のライシャワーさんはプロテスタントのプレスビテリアン派の宣教師。彼の子どもが、後の日本大使 エドウィン・ライシャワーさんですね。現在も残る美しいキャンパスの建物群はアントニン・レーモンドの設計とあります。彼は群馬県の高崎市にも音楽センターホールや井上邸などいくつも建物を残していますね。だからなんだ、この美しいキャンパスは。
「千と千尋の神隠し」講義
後期の授業が始まりました。今学期は、全学部の1年生むけの「社会学入門」(他の先生もふくめ複数開講されています)を受け持ちます。授業計画に、ジブリの映画などを参考にしながら現代社会の問題や課題を考える、などと書いたものだから、想定外に多くの受講希望者が押し寄せてきて大変なことになりました。その数400名以上で、200人のキャパがある大教室に入りきれず、廊下にあふれています。これは私にとって前代未聞、たいへん困ったことになりました。とにかく聴講カードに「自己紹介とこの授業から何を学びたいかを書いて提出していって下さい。それを読んで受講者を決定します」というしかない。座るところもないから、まず入っている200人に書いて提出してもらって、入れ替え制で次の200人に……。提出してもらうまでに一苦労。書いてもらった受講動機をひととおり読むだけで大作業。そこからセレクションするのが大変な難行苦行で1時間半かかりました。念をいれてTAの大学院生にも読んでもらってダブルチェックして、ようやくのこと200名の受講者を決定しましたが、大汗をかきました。やっぱり授業計画に甘いことを書くものではありませんね。
インフォメーション
安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照
カウンタ
- 378860総訪問者数:
- 8今日の訪問者数:
- 35昨日の訪問者数:
最近の記事
- 「住民参加型在宅福祉サービス団体研修会」(名古屋市)で講演します
- 沢木耕太郎の新著『夢ノ町本通り』のこと
- マンガ版「君たちはどう生きるか」
- 『熱風』の「君たちはどう生きるか」特集
- 「君たちはどう生きるか」という問い
- 「君たちはどう生きるか」もうすぐフランスでも公開だそうです
- 戦争の時代に宮崎アニメを読む
- プラネタリウムで「銀河鉄道の夜」体験
- 12月に愛知県名古屋市でセミナー講師をつとめます
- 中村学園大学で「社会福祉とボランティア」の授業をします
- 「記者ありき─六鼓・菊竹淳」を観ました
- 西日本新聞で『福祉の起原』が紹介されました
- 社会学、出会い直しの会
- 『福祉社会学研究』に私の著書『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』の書評が掲載
- 『共生社会学』Vol.12──退任記念号
- 市民協ミーティング2023 in 佐賀
- 8月、市民協が佐賀・熊本・鹿児島でフォーラム・キャラバン
- 「鈴木敏夫とジブリ展」に行きました
- 『福祉社会学研究』№20 での書評
- 京都の同志社大学で「福祉社会学会」設立20周年シンポジウム
- 大阪ボランティア協会の早瀬昇さんが『ボランティアと有償ボランティア』を書評して下さいました
- 『放送レポート』最新号で『福祉の起原』が紹介されています
- ブックトーク後のサイン会
- 新著『福祉の起原』のブックトーク
- 不思議なシンクロ──「鈴木敏夫とジブリ展」がスタート
- 『福祉の起原』発売記念 安立清史×村瀬孝生 トークセッション
- 『社会学評論』最新号に『ボランティアと有償ボランティア』の書評が掲載
- シンポジウム「見田宗介/真木悠介を継承する」
- UCLAのスティーブン・ウォーレス教授の逝去
- 超高齢社会に社会学からの解
- 九州大学からの海外発信
- 九州大学での最終講義を行いました(2023年2月6日)
- 新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。
- 研究の国際発信──『超高齢社会の乗り越え方』
- 最終講義日程(九州大学広報室)
- 新著『福祉の起原』(弦書房)のカバーが決まりました
- 新年のご挨拶
- 見田宗介先生を偲ぶ会
- 戦争の乗り越えは可能か(西日本新聞・随筆喫茶)
- 「戦争の乗り越えは可能か」─「千と千尋の神隠し」から考える
- 佐藤忠男さんを偲んで(シネラ)
- 大阪・中之島の「大阪図書館」
- 北九州市立美術館の「祈り・藤原新也」
- 『「千と千尋の神隠し」から考えるこれからの世界』─香川県丸亀市でお話しをします
- 「コロナ禍のもとでのボランティアやNPO法人の活動の実態と課題──オンラインによる社会調査実習の試み」
- 「森田かずよ 世界に一つだけ、私の身体」を観ました
- 「伊豆の踊子」(1974)と「四季・奈津子」(1980)
- 名画座の打率
- 暗い眼をした女優─ミシェール・モルガン
- 『「千と千尋の神隠し」から考えるこれからの世界』
- 中井久夫さん追悼
- 見田宗介先生追悼─『社会学評論』№289編集後記
- 「ふたりのウルトラマン」とは何か
- 「ゴルバチョフ:老政治家の遺言」を観ました
- オンラインでの社会調査実習
- 村上春樹ライブラリーのジャズ
- 西日本社会学会年報に私の書評が掲載されました
- 西日本社会学会年報2022に、拙著『超高齢社会の乗り越え方』の書評が掲載されました
- 見田宗介先生、最後の年賀状
- 社会学者の見田宗介先生が亡くなられました
- NHK/IPC 国際共同制作「映像記録 東京2020パラリンピック」を見ました
- 「no art, no life」と「ツナガル・アートフェスティバル福岡」
- 九州大学文学部の卒業式
- 感慨も湧かないのか、かえって感慨深いのか──いよいよ卒業式です
- no art, no life 〜表現者たちの幻想曲
- 東京大学社会学の佐藤健二さんの最終講義
- 劇団・黒テントの創始者の佐藤信さんのお話
- 上野千鶴子先生が拙著『ボランティアと有償ボランティア』を西日本新聞で書評─「ボランティアとは何か、本質を再考するための論争的な書物となるだろう」
- 1930年代から1990年代の「香港映画」
- クレラー=ミューラー美術館に行く(22年も前のことですが)
- ゴッホ展(クレラー=ミューラー美術館)を観る
- 「社会学入門」のライヴ経験
- 北岡和義さんを悼む
- 「風の谷のナウシカ」を社会学する
- 『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)の電子書籍版
- ケベックで聴いた「ゲッツ/ジルベルト」
- 新年 の香港映画特集
- 新年のご挨拶──驚きの「天井桟敷の人々」
- 電子書籍化のお知らせ
- 沢木耕太郎のクリスマス番組「ミッドナイト・エクスプレス─天涯へ」
- 映画「生きる」を「最後の晩餐」から解釈する
- 3発目の原爆──「シン・ゴジラ」の社会学
- 12月8日に「日本のいちばん長い日(1967)」を講義する
- 悲しい楷の樹
- 抱腹絶倒──村上の世間話
- 「生きる」と「ゴジラ」と三島由紀夫
- 『共生社会学』Vol.11が発行されました
- 「生きる」の社会学(その2)
- 黒澤明「生きる」の社会学
- 「胡同の理髪師」を観ました
- 「山嶺の女王クルマンジャン」を観ました
- ひさしぶりの対面での講演
- 大島弓子さんの真骨頂
- 「千と千尋の神隠し」における「投票」のメタファー
- 村上春樹うどんツアー(中村うどん)
- 「讃岐・超ディープうどん紀行」(村上春樹)を追いかける
- 丸亀市で講演をします
- 『21世紀の《想像の共同体》』書評(日本社会学会・社会学評論より)
- 「新日本風土記」と「美の壺」
- 社会学入門はじまる
アーカイブ
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2009年8月
- 2008年10月
- 2008年8月
- 2006年8月
- 2005年8月
- 2004年8月
Count per Day
- 451629総閲覧数:
- 8今日の閲覧数:
- 52昨日の閲覧数:
- 沢木耕太郎の新著『夢ノ町本通り』のこと
- 村上春樹の「風の歌を聴け」のジェイズ・バー(映画ロケ地)
- 小津安二郎 の世界-北鎌倉の旧小津安二郎邸
- 小林秀雄の「山の上の家」
- 「讃岐・超ディープうどん紀行」(村上春樹)を追いかける
- 夢の本屋紀行─中国・南京の先鋒書店
- タルコフスキーの『ノスタルジア』のロケ地を訪ねて
- 「ツィゴイネルワイゼン」と「陽炎座」を歩く
- 吉祥寺、井の頭公園、噴水、大島弓子、ゾウの「はな子」さん
- プロフィール
- 九州大学文学部の卒業式
- 「なめとこ山の熊」鉛温泉・藤三旅館
- 鈴木清順「ピストルオペラ」を観る
- 黒澤明の「醜聞(スキャンダル)」(1950)を観る
- 長崎・浦上の山里小学校と黒澤明の「八月の狂詩曲」
- 『放送レポート』最新号で『福祉の起原』が紹介されています
- 九州大学・文学部社会学研究室4年生の卒業アルバム写真
- コンタクト
- 駿台時代を思い出す(2)─日本史の金本正之先生
- 社会学、出会い直しの会
カテゴリー
- トップ (1,609)