From the monthly archives: "9月 2016"

9月は、ハワイ大学社会学部の訪問研究者(visiting scholar)として、しばらくハワイ大学マノア校に滞在していました。いくつかの国際会議に参加したあと、イオラニ高校の「ワンマイル・プロジェクト」の授業に参加・見学・意見交換してきました。これはワイキキ近くの名門私立学校イオラニ高校で行われているじつにユニークな授業です。高校周辺の半径1マイル(約1.6キロ)以内にある施設などを訪問して、高校生が高齢者に直接に会って、話を聞いたり、ボランティア活動したり、高齢者や高齢社会のことをフィールドワークしながら考えるというプログラムです。最近は「ホスピス」も訪問して高校生が死について考えるというプログラムも始めています。この授業や方法は注目されていて、イオラニ高校の先生方は、昨年には、授業に関する賞を受賞されました。
この「ワンマイル・プロジェクト」には、ハワイ大学看護学部のセンター・オン・エイジング(所長クリスティ・ニシタさん)がアドバイザリーとしてサポートしており、今回はニシタさんとともに訪問いたしました。
このイオラニ高校が、抜群に面白いのです。オバマ大統領の出身校のプナホウ高校と並び称されるハワイの2大私立名門校です。ワイキキ近くのアラワイ運河沿いにあって、教室からはダイヤモンドヘッドやワイキキに林立するホテルが眺望できます。私は、アメリカの高校の授業に参加するのは、初めての経験でした。日本の高校と全く違います。ほとんどの科目が「選択制(エレクティブ)」なので少人数授業中心。「ワンマイル・プロジェクト」授業も今学期は6名くらいの生徒さんたちでした。思い思いの自由な服装、先生との質疑応答中心。この日の授業はアリソン・ブランケンシップ先生の主導のもと、モイリイリ本願寺にある「プロジェクトDANA」の担当者が、高校生の来週のフィールドワークの準備のため、プロジェクトの説明が行われていました。ちなみに、「ダナ」は「旦那」です。仏教用語で旦那とは「施し、与える」の意味、寺を支える檀家や旦那などの原義なんですね。
授業のあと、アリソン先生やケイン先生、ハワイ大学のニシタ先生からお話しを聞きました。このプロジェクトは注目されていて、昨年も、高齢社会に関する世代間交流の賞を受賞したこと、昨年は宮崎県の五ヶ瀬中等教育学校から「スーパーグローバル・ハイスクール」事業として数名がやってきて交流したこと、その後もインターネットを通じて交流したそうです(じつは私は五ヶ瀬中等教育学校の「スーパーグローバル・ハイスクール」事業のアドバイザーとして両校の交流のきっかけを作ったのですが、私がイオラニ高校に来るのは初めてでした)。先生方からは、このような国際的な経験交流を、もっと拡大・発展していきたいとのこと、などが語られました。
「ここはホノルルの都心に近いところにあって、周囲を見回すと、超高層のコンドミニアムがたくさんたっています。こうしたアパートやコンドミニアムに住んでいる高齢者はとても多いのですが、どんな人たちか分かりません。いわゆるNORC(Naturally Occured Retirement Community=「自然発生的に形成された老人ホーム・リタイアメントコミュニティ」)になっています。世代を超えた家族の同居がないアメリカでは、こうした高齢者は社会から不可視になります。若い世代が高齢者世代と直接にふれあって世代間交流をしていく意味はとても大きいと思います」とアリソン先生。授業を通して、生徒とコミュニティの人たちが直接にふれあう機会となり、その成果は、年に1度、食事会を催して、コミュニティの方々にお返しするのだそうです。
イオラニ高校の先生方は、とても優秀な先生が多いことでも有名です。大学院で修士号を取得している人たちも数多いそうです。たんなる授業を超えて高齢社会の世代間交流事業のモデルを開拓していきたいとニシタ先生ともども意気込んでおられます。ハワイ大学センター・オン・エイジングは、ニシタ先生などを中心に、WHOの認定する「Age Friendly City」へのホノルル市の登録にも深くコミットしてきました。ホノルル市の「Age Friendly City」政策やアクティブ・エイジング施策などは、福岡市などのモデルにもなるのではないでしょうか。
イオラニ高校も、もっと多くの日本の高校とも経験交流したいと意欲的でした。
自然条件・社会条件ともに、福岡市はホノルル市にとても似ています。福岡も「Age Friendly City」をめざそうとしているともききます。そういう中で、世代間交流のモデル事業としても「ワンマイル・プロジェクト」はお薦めです。たとえば、修猷館高校、西南学院高校、大濠高校、福岡高校など、周囲の高齢社会を考えながら、英語による高校生間の国際交流にもなる、イオラニ高校との「ワンマイル・プロジェクト」交流を考えてみたらいかがでしょうか。ご関心のある向きは、ご連絡を下さい。


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ちょうどホームカミングディ週間だったので、高校生も奇抜な服装で登校していました。

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9月23日、南阿蘇村訪問のあと、午後は熊本市内におりて、ハンセン病施設以来の歴史をうけつぐ社会福祉法人「リデルライトホーム」の小笠原理事長や施設長にお話しをうかがいました。この社会福祉法人も、5月から7月まで「福祉避難所」として27名の要介護の方々を受け入れられたそうです。しかもその受け入れ方法は、じつに見識に満ちたものであったようです。他の社会福祉法人が「介護保険」制度を利用しての受け入れだったのにたいし、ここはあくまでも「慈善活動」としての受け入れを貫いたそうです。東北大震災へも支援に行かれた施設長さんたちが、その経験を生かした迅速な活動をされたことにも感銘を受けました。


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9月23日は、熊本学園大学の黒木先生とともに、南阿蘇にある「南阿蘇ケア・サービス」を訪問してきました。震災直後から、どのように介護施設での対応をされてきたのか、そして「福祉避難所」をどのような困難のなか運営されてきたのかをうかがいました。ここは株式会社ということで福祉避難所の運営には、だいぶご苦労があったようです。問題や課題がたくさんうきぼりになりました。
南阿蘇には、行きはグリーン・ロード、帰りは大崩落した阿蘇大橋の周辺をめぐりミルクロードを経て熊本市内へ抜けました。阿蘇山は雄大ですが、いたるところ崩落の跡がみえます。かつて家族で何度も訪れた、地獄温泉や垂玉温泉への道は、現在、通行止めになっています。途中、歴史ある久木野神社も崩壊していました。現在、交通がたいへん不便になっていて、これらの道も冬になると閉鎖になるそうで、たいへん不安に思っておられました。


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