From the monthly archives: "8月 2020"

沢木耕太郎の新刊『旅のつばくろ』を読んでいたら身につまされる話に出会った。「書物の行方」という掌篇である。軽井沢から「しなの鉄道」にのって信濃追分で下車して堀辰雄文学館を訪ねる話である。私も数年前、まったく同じルートで同じところを巡った。そして文学館前にある古書店を訪ねて、むかいの蕎麦屋で食して……というところまで同じだった。違うのはそこからである。沢木は古書店主に尋ねる。こんなところで、どうやって本を仕入れているのか、と。その答えが驚くべきものだった。いまや古書業界が流通過剰になっている、というのだ。「6、70代の男性がいっせいに本を処分なさそうとしているせいです。この方たちが紙の本を大量に買った最後の世代なんだと思います」という。たしかに、その通りなのかもしれない。私もまさに数年前、大学の移転にともなって大量の蔵書を処分したところだ。数年後には、また大量に処分しなければならない……。身につまされるような、悲しいような、何かの時代が終わりつつあることを実感させられるようなエッセイであった。


昨年の8月15日頃にはじめて岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」(1967年版)を観ました。今年は 原田眞人監督の「日本のいちばん長い日」(2015年版)を観ました。いろいろなことを考えさせる映画です。
そして、昨年の8月15日に、TOKYO FMで放送されたラジオ番組「ねじれちまった悲しみに」の再放送があったのでRadikoで聴きました。加藤典洋さんの『アメリカの影』は、40年くらい前、大学院生だった頃に読んで深く魅了されました。以来、ずっと読み続けてきました。5年程前には、福岡ユネスコ協会のシンポジウムで、黒川創さんとの対談の司会もさせていただきました(福岡ユネスコ協会のブックレットになっています)。あらためて加藤典洋さんを思い起こしました。