この五月はシネラ(福岡市総合図書館)で鈴木清順監督の回顧映写会を集中してみることができた。いくつかは見逃したが、かなりまとめて観た。今日はその最終日。午前中の会で「河内カルメン」を観た。これまた破天荒な映画である。シネラの資料によれば「野川由美子の魅力が素晴らしく、少女から商売女、貴婦人、さらには復讐に燃える鬼女と、時間を追うごとに表情や仕草を変えてゆく。まるで野川由美子のための映画のようだ」とある。田舎の少女が、大阪のキャバレーのホステスとなって以後、大胆に変容していくその姿は、ある意味、鈴木清順の変容そのものである。何かに吹っ切れて自在に展開していく。小さく常識的にまとまろうとする流れを、大胆に否定しさっていくそのラディカルさ。狙ったラディカルさではなく、ほとんど生まれつきのような、ほとんど虚無的なラディカルさ。それは鈴木清順監督の人生や戦争体験からくるものなのかどうか。いずれにせよ、今回の特集で、まとめて鈴木清順を体験すると、いろいろなことを考えさせられる。
ひとりの「作家」の作品を連続して集中して観てゆく。これこそまさに「シネマテーク体験」とでも言うべきものではないだろうか。おそまきながらシネラでそれを追体験することができた。


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