2019年11月は福岡市総合図書館シネラで「美空ひばり没後30周年記念─ひばり主演映画特集」というのをやっていたので、あまり期待せず、見はじめた。ところが、これが素晴らしい。歌手としての美空ひばりしか知らなかったが、すごい映画俳優なのである。主演第一作の「悲しき口笛」(1949)からしてすでに傑作である。その後、鞍馬天狗、遠山の金さんものなど、どれもいい。続けて10本以上も観てしまった。中でも文芸作品「伊豆の踊子」(1954)と「たけくらべ」(1955)が特に良かった。特徴を一言でいうのは難しいが「若いのに貫禄がある」「無理な演技をしていない」「自分の重心に近いところで無理せずに踊っている」。はじめから全力疾走という感じではない。ゆったりとした達人の気配がある(褒めすぎか)。何しろ12歳で映画主演と主題歌。すでにして堂々たる貫禄なのである。威張った貫禄ではなく、余裕の貫禄。しかも役どころも「主演だが主役ではない」、そんな控えめな渋くてすがすがしい役回りが良かった。


たけくらべ

 

伊豆の踊子

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