ニッポンがお亡くなりに。
今回の利賀村の演劇のハイライトは8月31日夜に上演された「世界の果てからこんにちは」だったろう。
台風の影響で降りしきる雨の中を、野外劇場をびっしりと立錐の余地もなく埋め尽くした観客の中で「世界の果てからこんにちは」が上演された。
これは、鈴木忠志演劇のエッセンスがつまった花火ショーとも言うべきもののようで、舞台では演劇が、背後の池では花火が、さらにその背後の山はライトアップされて、一種、荘厳な雰囲気に包まれる。
多彩な花火が、空襲や爆撃や特攻隊の自爆のように使われる。そして背後に浮かび上がる日本の里山。
その中に「ニッポンがお亡くなりになりました」というメッセージが届けられる。
「世界の果てからこんにちは」が最初に上演された20年以上前には、バブルで失われた日本の古き良き面影のことがイメージされたのではないか。
ところが、いま、これをきくと、冗談ではなく、ほんとうに、日本全体が逝去していくかのようなリアリティがあるのだ。
降りしきる雨の中でずぶ濡れになりながら、心底、畏怖を感じさせる芝居だった。


世界の果てから

世界の果てから3

日本がお亡くなりに2

野外劇・鈴木忠志

鈴木忠志さん3

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