阿部謹也の『ヨーロッパを見る視角』(岩波現代文庫)を読むと、どぎもを抜かれる箇所がいくつもある。なかでも最たるものが、東京とロンドンとを比較したところだ。「東京は何のためにあるんですか」と阿部は問いかける。これは果たして「問い」なのか。知事や政治家に聞いても、まず答えられるはずもない。そもそも目的や答えがあると考える人がいないだろう。だから、この「問い」にショックを覚える。われわれは都市に理由があって存在しているとは考えない、考える前からそこにあると思っている。ところが阿部謹也によれば「ロンドン市長は、ロンドン市民の全員が天国に行くためにある、と言うと思います」と断言する。ここには、生きる目的、すなわち、都市の目的がはっきりと意識されている世界がある。「目的」なしに、その日その日を楽しく暮らしている私たちは、ヨーロッパの視角から見ると、はたしてどう見えるのだろうか・・・。


阿部謹也

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