マレーネ・ディートリッヒ主演で有名な「上海特急」(1932)を観ました。なるほどこれがディートリッヒか。ディートリッヒと言えばヒッチコックの「舞台恐怖症」(1950)しか観たことはなかった。この映画でもたいした貫禄ではあったけれど最盛期はすぎていた(そこがいいとも言える)。「上海特急」はまさにディートリッヒらしさのひとつの頂点を極めた映画なのかもしれない(ただし相手役が弱い。とても平凡な男にしか見えない)。ストーリーはいわばアガサ・クリスティの「オリエント急行」そっくりですね(上海特急のほうが早いみたいだけど)。北京から上海に向かう列車が中国の政府軍と反政府軍との間でスパイや捕虜の交換のために何度も止められる。人質交換の間に挟まって「上海リリー」なる良くない噂の立っている女性がじつは……といいささか浅いハッピーエンドで終わる映画。内容的にはアガサ・クリスティには到底およびませんね。
さて真っ先にくる感想。これはなんという「嫌中国映画」なのかということ。中国にたいする敵対的な蔑視が色濃い。中国からあれほど搾取したのにさらにこの態度だ。アジアにたいする無理解というか、何という「上から目線」の映画なのか。今日からみるとあまりにその「西欧中心主義」が鼻につく。「オリエンタリズム」ふんぷんの映画なのですね。でも、人のことは言えない。このあと、日本がまさに、こうしたオリエンタリズムの視線をそのまんま受け継いで上海を占領したのだ。なんだか苦い感想になってしまいますね。


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