ハワード・ヒューズが制作した映画「犯罪都市(The Front Page)」(1931)を福岡市総合図書館シネラで観た。これ題名などから一見ギャング映画に思えるが、中身は全然ちがった。これは新聞の第一面のスクープを取ろうとする1930年代の新聞記者たちと新聞経営者のどたばた喜劇だ。ストーリーは荒唐無稽だが、当時のアメリカのジャーナリズムのひとつの姿を描いていて、とんでもなくてあっけにとられる。とくに主人公の敏腕記者を、はるか上手にあやつり翻弄する上司の新聞経営者のバーンズがすごい。これはまさにメディア王ハワード・ヒューズその人ではないだろうか。破廉恥なまでに自己中のどぎつい経営者。彼の牛耳るセンセーショナリズム時代の新聞を描いている。そもそもこの映画の原題は「The Front Page」新聞の第一面のことをさしている。90年程前のアメリカの新聞業界は、まさに、この第一面のセンセーションで、巨大な産業になっていたのだなぁ。今日、新聞の第一面が、これほどの巨大な影響力をもっているとはとても思えないだけに、時代の移り変わりを思う。


(写真は制作者のハワード・ヒューズ。オーソン・ウェルズの名作「市民ケーン」のモデルとして有名だ。毀誉褒貶というより褒貶のほうが多いようだが怪物的な人物だったのだろう。)


ハワード・ヒューズ

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