往年の名画「旅愁」を観ました。70年近く前の映画です。シネラでみたフィルムはかなり劣化していて音も割れ、字幕もほとんど読めないほど。でも、いい。ジョーン・フォンテインがじつに美しく撮られています。終わったあと、後の席のおばあちゃんたちが一斉に「ほーっ」とため息をつきました。「きれいだったわねー、あの頃の映画はいいわねー」としきりに感嘆していました。たしかに、映画らしい映画を観たという満足感を味わえる「名画」ですね。
でも、内容を見るといろいろと考えさせられます。この映画「September Affair」という原題が示すとおり、言ってみれば豊かなアメリカ人たちの不倫と情事の夢物語です。逃避行先のイタリアでも豪華な邸宅を借りて何不自由なく暮らしているが……やがて男性は「大きな仕事」がしたくなる、女性はピアニストとしての芸術家の夢を実現したくなる。そう、これ、一昨年ヒットした「ララランド」の筋書きにそっくり。ララランドでは貧しい二人が愛し合い、やがてそれぞれの夢を実現するために別れていく、というストーリーでした。「旅愁」では、富裕だがそれに満足しきれず旅先で出会って愛し合った二人が夢のような暮らしを送るが、やっぱり二人だけの世界には収まりきれず、大きな仕事や芸術家としての夢のために再び別れていく、というストーリーです。そっくりですね。昨年、社会学入門の授業で「ララランド」を題材にして、なぜ、二人だけでは満足できないのか、なぜ<社会>が必要とされるのか……社会学からそのメカニズムを説明してみたのですが、この「旅愁」にも、このテーマが響いていますね。


ジョーン・フォンテイン、東京で生まれたそうです。4度の結婚・離婚。96歳での大往生。波瀾万丈の人生だったんですね。

ローマ、ナポリ、カプリ、フィレンツェと敗戦後のイタリア観光映画でもありますね。


 

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