ちょっと他ではなかなか観る機会がないような珍品的な映画です。福岡市総合図書館「シネラ」で、増村保造監督の「からっ風野郎」(1960)を観ました。どんな映画かと言うと、三島由紀夫が粋がった青二才の愚かな「やくざの二代目親分」を演じているのです。しかもヒロインは若尾文子です。堂々の主役。しかしなんとも不思議なミスマッチ映画です。三島由紀夫と増村保造監督とは東京大学法学部時代の同級生だというのですが、何というぶっ飛んだキャスティングでしょうか。頭の悪いヤクザとしてしか生きていけない血気盛んで愚かな若親分を、あの三島由紀夫が演じているのです。しかも、けっこうはまり役なんです。若尾文子に惚れ込まれて、最後、ヤクザから足を洗おうとする間際に殺し屋に射殺される。映画的には、もうちょっとなんとかならないのか、というところもありました。あまりにも、ストレートなヤクザ映画すぎる。三島由紀夫が若尾文子を殴るけるの暴力映画で、その点もいまからすると後味悪い。増村保造という監督はのちの「曽根崎心中」でもそうでしたが、生のままの暴力を、これでもかこれでもかと延々描くところがあって、見終わったあとげっそりするところがあります。この映画も、三島由紀夫が、すっかりヤクザにはまって暴力的な世界を生きて、そして死んでいく映画。いわゆる「ノワール」映画なんですが……今となっては三島由紀夫が主演した映画としてのみ、映画史に残るものなんでしょうか。


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