「シネラ」の増村保造監督特集でこれまで10本の映画を観ました。一昨日には勝新太郎主演の「兵隊やくざ」。これもユニークな映画でしたね。ヤクザが陸軍の初年兵になると、いったいどうなるか、ヤクザが軍隊のしごきにどう対処するのか、という不思議で痛快な設定の映画でした。これだけ集中的に観ると、増村保造という監督のある種の「業」のようなものが見えてくるように思います。それは日本の組織がもっている暗い「暴力」を描き出すことへのこだわりです。初期の「青空娘」では妾から生まれた子への家族メンバーによるサディスティックな徹底的な「いじめ」でした。それが「からっ風野郎」「兵隊やくざ」「曽根崎心中」になると、もはや見続けることが出来ないくらい陰惨・残忍で執拗な暴力になります。「曽根崎心中」など、もう、これだけ殴るけるをやれば主人公はとうの昔に死んでるじゃん、というくらい執拗な暴力の暴走です。勝新太郎で人気がでたという「兵隊やくざ」も、そのむき出しの残忍で執拗な暴力の噴出は過剰すぎます。どこかどす黒いものを感じさせて見終わってとても後味が悪いのです。この非合理な暴力こそ、日本の軍隊の抜きがたい黒歴史だと糾弾しているのかもしれません。この世代の戦争体験がそうさせたのかもしれないと思います。見終わると「これが日本の現実だ」と暴力的に叩きつけられる感じなのです。後味は悪いですが、考えさせられます。


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