録画しておいたNHK・BSプレミアムの「小津安二郎・没後50年 隠された視線」を観ました。
これは、じつに、興味深いものでした。小津安二郎は、初期作品をのぞくと、その作品のほとんどを観ていると思います。
でも、今回の番組では、はじめて知ったことや、はじめて理解したことも多かった。
たとえば赤いヤカン。ヤカンが、こんなに、画面に出ていたなんて。まったく意識も、注目も、していなかったですね。その赤い薬罐の、意味やこだわりが、何を意味しているのかは、番組をみても、やっぱり分からなかったけれど、画面には、たしかに、否定しえぬ確かさで、赤い薬罐が強烈に自己主張しているのでした。
小津安二郎って、何だろう。
戦争も戦いも勝利も敗戦も描かなかった。「そういうものがテーマとして成り立つと認めていなかった」(吉田喜重)。なるほど、テーマ、ということのとらえ方自体に、むしろ積極的に抗っていたのですね。ただひたすら庶民(とは何かも深いテーマですが)の生活を描きながら、そこに、強烈な思いを込めて、平凡さの反復の中に生まれてくる、平凡さを超えた平凡さの深みを描いたと言えるでしょう。平凡な日常を描きながら平凡さを超える。平凡さを装った非凡な人だったのでしょうか。なんだか、小津安二郎を考えると、平凡さをめぐる哲学的考察みたいになってしまう、そういう人なんですね。


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小津安二郎3

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