6月10日、東京の立教大で開かれた「日本NPO学会」に久しぶりに参加しました。このところ、日本NPO学会の運営体制について、様々な批判的論議がありましたし、私自身も足が遠のいていました。その後、会長その他、運営体制も一新されて、久しぶりに参加してみて、なかなか勉強になりました。
大会最後のシンポジウム「アート/ソーシャルデザイン/NPO」は、なんと冒頭、巨大な氷の塊がおいてある空間で、男女二人の対話劇を観ることから始まりました。フランスの現代劇作家のものらしい演劇を30分みたあと、学会シンポジウムが始まるというのも斬新でしたね。シンポジストも、国際紛争調停者兼任ジャズトランペッターの伊勢崎賢治さん、かつて黒テントでアングラ演劇をやっていた佐藤信さん、女性プロデューサーの先駆者・残間絵里子さん、若手建築家の西田司さん(残間さんに、演劇中・爆睡していたとイジられていましたね)、そして立教大の中村陽一さんが司会進行でした。どの発言も面白かったのですが、突出していたのが黒テントの佐藤信さん。30年くらいまえに、見に行った覚えがあります。どんな演劇だったのかは忘却しているのですが。当時、唐十郎の赤テント、佐藤信の黒テント、寺山修司の天井桟敷、鈴木忠志の早稲田小劇場、そして野田秀樹の夢の遊民社などが、最先端の小劇場ブームを牽引していた記憶があります。その佐藤信さん、ラディカルな反体制かと思いきや、行政の劇場施設の指定管理者なども経験したあと、座・高円寺というNPO的な演劇空間を運営しているとか。「終活です」と言っていましたが。その佐藤信さんが、行政施設を運営することは「権力を行使することです」という発言にも驚かされました。税金によって作られた施設を、管理運営して、特定の劇団に貸し出すこともまた、権力行使に他ならないのだといます。なるほど、そうかもしれない。が、そう考え出すと芸術や演劇と権力とは、切っても切り離せない、なかなか複雑なことになるなぁ。そのうちフロアからは「ソーシャル・デザインというのは、誰がデザインするのか。行政側からになるのではないか。わがこと・まるごと政策などは、まさに政府行政側の都合による、行政にとって役立つソーシャル・デザインではないか」という質問まで飛び出し、なかなか白熱してきたところで、私はフライトの時間が迫って退席しました。でも、そうだよなぁ。地域福祉の世界でも、現在主流になっている「地域包括ケアシステム」なんて、まさに行政による行政のための行政にとってやりやすいソーシャル・デザインそのものではないか。そういうところに疑問や異議、クリティカル・シンキングを加えていくことこそ学会の役割ではないかな、などと考えながら帰途についたことでした。


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