社会学入門の授業で黒澤明の映画「生きる」を取り上げます。「生きる」──黒澤明の代表作ですが、誰もが名画だというのですが、じつは観たことのある人は少ないのではないでしょうか。ましてや今の若者にしてみたらどうか。ためしに院生に観てもらったら、暗い、怖い、見たくないという感想でした。何しろ癌で余命数ヶ月という老人が、人生をふり返って苦悶する映画です。無気力極まる役所で、死を意識した主人公がひとり奮闘して児童公園を作り上げてそこで死んでいく物語──こういう「あらすじ」を聞いたら、学生たちは観たいとは思わないでしょう。しかもモノクロの70年前の映画です。
でも、こんな表面的な見方ではつまらない。そういう見方とはまったく違った、新しい見方を示したい。この映画の中には「千と千尋の神隠し」にも通じる、現代の若者にも通じるはずの、隠された重大なテーマがある。そう思い立って半年間、いろいろと考えてきました。普通、言われていることとまったく違うことを言いたい、と思って授業を練り上げてきました。さて、結果はどうなるでしょう。2週にわたって「生きる」の社会学を話すつもりです。


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