中井久夫著『臨床瑣談 続』(みすず書房)を読みました。
前著の『臨床瑣談』もじつに興味深い話でした。あちらは丸山ワクチンなど癌の話が主でしたが、この本では認知症の話、喫煙や飲酒との別れ方、そして中国医学やインフルエンザなど、もっと身近な医療と人生に関わる話が中心です。
厳密には医療や医学の話ではないのでしょう。むしろ診断や薬などの臨床からの知、洞察というものだと思います。
これを読むと、私たちが、病と、いかに表面的にしかつきあっていないのか。医療や医学も、ほんとうは病を深くは理解していないのではないか、などといろいろなことを考えさせられます。
認知症や、アルコール依存なども、表面的なイメージでしか理解していなかったかということが、分かります。
なかでも、認知症についてふれたところ。
「私は、病院で寝たきりの老人たちの列をみて、ああ、これは50年前の統合失調症の状態に相当するなと思いました。もう何も語らず、小さくなった身体をころんとベッドに横たえている人たちの群れ。」
・・・あと50年したら、認知症も、こんなふうにふり返ることができるようになるのだろうか。

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