福岡ユネスコ協会主催の「イム・グォンテク監督講演会」&映画「春香伝」上映(福岡市総合図書館シネラ)がありました。アメリカと中国からの二人の留学生とともに参加してきました。映画「春香伝」は、韓国の「パンソリ」にのせて伝統社会における悲恋と恨が詠われる大作なんですが、この映画について、アメリカ人留学生は「この映画、アメリカで見ました」「アジア研究者の中では有名です」とのこと。ふうん、知らなかったですね。
 さて、私じしんは、はっきりいって、この映画にはのけぞりました。2000年の作なのに、こりゃ30年ふるい、という感じです。日本でいうと「水戸黄門」の世界で、ちょっと反時代的な映画に見えてしまいました。あまりにもアメリカ的な価値観の対極にあるので、アメリカのアジア研究者のなかでは有名な映画なのかもしれませんね。
 さて、この古びた物語、劇団SCOTの鈴木忠志だったらどう演出するか。「これは狂った男の、精神病院でみた幻想、死に行く男の最期の妄想である」というストーリーにするのではないか。
 若いころの劇的で濃密な恋愛、それが親や社会の掟で引き裂かれてから、男は次第に狂いはじめる・・・狂気と幻想の中で、男は科挙にトップ合格する夢をみる、そして、女に拷問をほどこしている悪代官を退治するため、密使としてやってきて、見事な大成功をおさめて拍手喝采をあびる・・・これらはすべて現実にはあり得ない夢、精神病院の中に収容された男の狂気の幻想としてみると、じつにリアルな現代劇として蘇るように思います。さぁて、どうでしょうか。


春香伝

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