「アール・ブリュット(生の芸術)」のドキュメンタリー。Eテレ「人知れず 表現し続ける者たち」を観ました。NHKのBSやEテレからは、時々、すごい番組が現れるけれど、これもそのひとつ。
「アール・ブリュット(生の芸術)」とは、正規の美術教育を受けた経験のない人々が創る、何ものにもとらわれない独創的な美術作品のことを言うのらしいですが、見るとすごいです。打たれます。本人も作品も、そしてご家族も。もしかすると作品以上にご家族の姿に打たれるかもしれない。このご家族があったから、この作品が生まれたのですね。
アンリ・ルソーやゴッホなどにも、おそらくこの「アール・ブリュット(生の芸術)」の要素が濃厚にあったのだろうと感じさせます。
陶芸による芸術庭園『虹の泉』を一人で作り上げたという東健次さんという人など、まるで、ガウディではないか。
どれも考えて、意識して作っているのでない、どうしようもなく、内から切迫して表出しているのでしょう。
正しいのかどうか分かりませんが、小林秀雄の『ゴッホの手紙』を想起してしまいました。
小林秀雄は、ゴッホを論じながら、彼の描く絵が、彼にとっての「避雷針」であったと述べています。ゴッホに、雷のようにやってくる恐ろしい発作にたいして、絵を描くことが、避雷針になったのだという『虹の泉』のです。本人は芸術を作ろうとはしていなかったかもしれない。けれど、残された作品には、何か超絶的なものがあります。それは芸術をめざした高みではなくて、生きていくことの困難さにたいする戦いだったのでしょうね。
*この作品は、2017年3月4日(土) 午前0時再放送されるそうです。


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