宮沢賢治に「圖書館幻想」という短いが奇妙な、幻想的なというべきか、一読しただけでは何のことやらわけの分からない作品があります。
上野の図書館に、「ダルゲ」という奇妙な人に会いにいく話です。
これが、宮沢賢治にとってきわめて重要な、ある親友との再会と訣別のもようを描いた作品だということを、最近みたNHK・Eテレの「宮沢賢治─銀河への旅」で教えられました。
そこで、東京に出かけたさいに、この図書館に行ってみました。(上野に実在します。国際子ども図書館─もとの帝国図書館です)
館内で調べてもらって、宮沢賢治がダルゲと会った部屋(一般閲覧室)を確認しました。いま、ちょうど、イランの子どもの絵本展をやっていました。ここは撮影できなかったので、ここに似た部屋をご覧下さい。


*以下、宮沢賢治の圖書館幻想の一部
 そこの天井は途方もなく高かった。全體その天井や壁が灰色の陰影だけで出來てゐるのか、つめたい漆喰で固めあげられてゐるのかわからなかった。
 (さうだ。この巨きな室にダルゲが居るんだ。今度こそ會へるんだ。)とおれは考へて一寸胸のどこかが熱くなったか熔けたかのやうな氣がした。
 高さ二丈ばかりの大きな扉が半分開いてゐた。おれはするりとはいって行った。
 室の中はガランとしてつめたく、せいの低いダルゲが手を額にかざしてそこの巨きな窓から西のそらをじっと眺めてゐた。
 ダルゲは灰色で腰には硝子の蓑を厚くまとってゐた。そしてじっと動かなかった。


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