安立ゼミでは、前期に大澤真幸さんの『夢よりも深い覚醒へ』を購読してきました。
ちょうど読み終わったところに、著者の大澤真幸さんが来福されたのを機会に、6月28日に安立ゼミにきていただき、学生と懇談しました。
学生からのたくさんの質問に、ていねいにお答えいただき、学生たちもたいへん有意義な交流をもつことができました。


特集ワイド:原発の呪縛・日本よ! 社会学者・大澤真幸さん

毎日新聞 2012年07月27日 東京夕刊

大澤真幸さん=須賀川理撮影
大澤真幸さん=須賀川理撮影

 <この国はどこへ行こうとしているのか>

 ◇「無意識」と向き合おう−−大澤真幸さん(53)

 梅雨明け宣言の暑い日、東京・世田谷の自宅を訪ねると、社会学者、大澤真幸さんはカンカン照りの路地で待っていた。こんな言い方は失礼かもしれないが、80年代のアイドル歌手に似た愛らしい感じの人だ。時代や社会を論じる知識人というと、怖いイメージだが、中低音のよく響く語り口は「マイルド」という言葉がふさわしい。

 新著「夢よりも深い覚醒へ3・11後の哲学」(岩波新書)で脱原発を説いた。フロイトの夢のエピソードを比喩に、悪夢(原発事故)から逃げることで表面的に安心せず、悪夢の意味を解釈し夢を突き抜ける方向へと目覚めよ、と説く。

 福島第1原発の水素爆発の映像は、日本のみならず世界に、9・11を上回るほどの影響を与えた。災害の後、国民の間に共同体意識が生まれ、革命的な変化をもたらしてきた世界各地の歴史を例に時代を考察する大澤さんは、いまをどうとらえているのか。

 まずは、福島第1原発事故を知った時の直感を聞くと、「自分も含め日本の学者たちの反応は鈍かった」と率直に語る。昨年3月12日に思想家、柄谷行人さんが主催する現代思想の定例会のエピソードを紹介してくれた。「予定通りの発表、飲み会の中で、なぜか原発は話題になりませんでした。ネットのニュースで1号機の爆発を知っていたんですが、誰も原発について深く話さなかった。自分自身、こんなに大きなことになると気づかなかった」

 事件の意味を即座に伝えるのがジャーナリズムなら、アカデミズムにその使命はない。時間をかけ意味を探るのが知識人と言えるが、大澤さんは自分を含めた学者の鈍さにばつの悪さが残った。底にあったのは共犯者意識だ。


Tagged with →  
Share →