録画してあった「天のしずく 辰巳芳子いのちのスープ」という映画を観ました。
料理家の辰巳芳子さんを、私は、ぜんぜん、知りませんでした。家内が、すごい人だから、というので、いっしょに観たのですが、たしかにすごかった。2時間ほどの映画なのですが、とうてい、一気には観られずに、何回かに分けて、観ることになりました。
「いのちのスープ」とは、消え去っていくいのちにとって、最期にくちにはいって、命にひびくものは、固形物ではなく、ていねいに、じっくりと、心をこめて、水から煮出してつくられたスープである、という確信というか、経験に支えられたテーマなのですね。
じっさいにスープの作り方が紹介されるのですが、スープになるまえ、スープの素材の、米や大豆の、生産者の話がはさみこまれます。有機農業で、素材づくに、丹念に励まれている農業者の姿が紹介されます。その素材をもとに、スープが作られ、それが、ホスピスや、病院の終末期医療の現場を支える人たち、そして、最期の一滴を「ああ、おいしかった、ありがとう」といって飲み干していく人の姿とともに語られます。瀬戸内海の、ハンセン病の療養施設で、ハンセン病の人が、なくなっていく人に、辰巳さんのレシピで最期のスープを呑ませてあげたというようなエピソード、そこを辰巳さんが訪問していくというようなエピソードもはされまれます。こういうエピソードは、それなりに、重いし、意味が込められていると思うけれど、全体として、スープが生まれるずっと前から、スープがつくられ、スープが呑みこまれて、人の命にしみ込んでいく、そのゆったりとして、しみじみとしたトーンが、ああ、これは短時間のせかせかしたテレビ番組では絶対にでてこない、映画でしか滲みでてこない時間と味わいだなぁ、と感じいったしだいでした。


辰巳芳子

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