師走冬休みなので映画を観る。是枝監督の「そして父になる」(2013年)。これはなんと、舞台が群馬県の前橋だ。そこの病院での子どもの取り違え(正確には意図された入れ替え)の波紋を描いた映画だ。私じしんが前橋の病院で生まれたので、なんだか遠い世界のこととは思えない。風景は同じ群馬県の高崎とはちょっと違っているが赤城山が映っている。東京と群馬、今話題の福山雅治とリリー・フランキー、豊かなエリートサラリーマンと落ちぶれた地元の電気店、静かなお受験一人子とやんちゃな大家族の子ども、すべてが対照的に提示されていて、しかし、その人間としての内実は真反対であることを示す。群馬の片田舎に生まれ育ち、その地元のゴーストタウン化している現状を熟知している私としては、これまた人ごとではない。「歩いても歩いても」と同じく樹木希林、偏屈で頑固なだめ親父。でも「歩いても歩いても」のほうが後味が良かった。今回は主人公の一種の転落物語。転落していくうちに何か大切なことに気づいていくという物語の展開だからだろうか、最後の直前まで転落していく一方なのでちょっと切ない。「歩いても歩いても」のほうは、大切なことがあらかじめ失われていて、その喪失感をみんながそれぞれに受け止めて、ゆっくりと受け入れていくという、癒やしの過程が、肩ひじはらず、すうっと受け入れられるように描かれていた。阿部寛と福山雅治の持ち味の違いでもあるのかなぁ。


是枝 そして父になる

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