稲垣えみ子さんの著書、2冊めを読みました。なんと『魂の退社』(東洋経済新報社)です。すごいタイトルですね。
一見したところ「会社に対して、いろいろ言いたいことがあるので、魂をこめて、退社した」という激しい抗議ものかなと思ってしまうのですが、そうではありませんでした。
あまりに人生すべてを「会社」に吸い取られてしまっていた、それが「退社」して初めて分かった、退社して魂を回復する、という本なのだと思います。じつにリアルで、じつに根源的な問題提起がたくさんあります。
内容については、読んでいただくことにして、考えたことをひとつふたつ。
この本の問題提起力は、どこから来ているか。
それは「できない、ことは、できる」と行動によって、ひっくり返してみせたところでしょう。
退社や節電(暖房、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、すべてなし)など、私たちが無条件に「できない」と思ってしまっていることを、「じつは、できるのだ」と実証してみせているからです。それが、案外かんたんにできる(節電)こともあるし、じつは考えていた以上にたいへんだった(退社)にしても。
すごいなぁ。同時に、読む人に、ゆっくり突きつけてくるものがあります。ざわざわざわと、心が揺らぎます。
文章はとてもソフトですが、底のほうから聞こえてくる声は、「あなたは、できない、ではなく、しない・したくない、という言い訳をしているのではないか」という問いだからです。これはけっこうハードな問いかけですね。
「できるのに、できない」というのは、私たちみんながかかえている根源的な問題でもあります。「ほんとうは、できるかもしれないのに、できない、と心を遮断していることが、この会社社会の心の壁ではないか」と問いかけているからです。
うーん、と深く考え込んでしまいました。


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