ヌーヴェル・ヴァーグの生まれ故郷シネマテーク・フランセーズに行ってきました。
トルコ生まれのアンリ・ラングロワという亡命者にしてシネマテーク・フランセーズの創設者は「若くしてすべてを失ったので、すべてを残したいと思った」と言います。シネマテーク・フランセーズは、まさにフランス映画の源泉、ここからトリュフォーもゴダールもジャン・ピエール・レオーも巣立ったのでしょう。いまやベルシーに巨大なシネマテークとなっています。
さて「映画ミュージアム」を見学したあと、いよいよ、映画館に入りました。ちょうど「銀幕の日本」という特集週間で、この日やっていたのは寺山修司の「さらば箱舟」。寺山修司の遺作となったものですが、2時間以上の大作なのに、ストーリイが入り組んでいるのに収斂しない。緊迫感に欠けているかな。いつもの寺山のどんどん異世界に入っていく迫力と求心力がない。どこか既視感のあるイメージが続くばかり。原田芳雄、山崎努など、超一流の役者をそろえたのに、ちょっと残念な作品だと思います。シネマテークでも、途中でがんがん席を立つ人がいました。さて、シネマテーク。これはすごい映画館だ。なかなか日本には、こんな映画館は、ないのではないか。大きいし、ゆったりしている。くわえて、安い。4.5ユーロ。福岡にも、福岡市総合図書館が、アジア映画のシネマテークをめざしていて、これも立派だし、すごいのですが、比べてみると、シネマテーク・フランセーズとは、全然ちがいますね。これは、文化に対する国家や行政の支援の本気度の違いとしか言いようがありません。フランスは、昔から、紆余曲折はあれ(アンドレ・マルローがラングロワを更迭して大事件になったりした)、圧倒的に文化に注力してきていますからね。フランスという国家の本質は、文化なのです。さて、日本は……どうなのだろう。


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