インターネットと選挙
総選挙が近いけれど、学生の選挙への関心は、さっぱり盛り上がらない。隣国・韓国の大統領選挙で、安候補の登場で、若者の政治参加が大きく盛り上がっているのと対照的だ。このことについて、韓国からの留学生と話し合ってみた。大きな違いのひとつは、インターネットが選挙戦にどういう役割を果たしているか、のようだ。韓国だけでなく、アメリカのオバマはじめ、世界中が、インターネットを活用して、選挙への若者の関心を引き寄せているのにくらべ、日本は、どうやら「ガラパゴス化」というべきか「化石化」というべきか、インターネットやSNSが選挙では「禁止」になってしまう。どうしたことか。これは90年前の法律を引きずっているとか、新聞・TVなど既存の大手メディアが、競争相手のインターネット参入を拒んでいるからとか、いろいろな解説があるようだ。しかしいずれにせよ、結果的には、こうやって若者を選挙や政治から見事に「排除」しているのだなぁ。何しろ、いまどきの若者は、まずぜったいに「新聞」なんか読んでないから、選挙や争点についても、まず関心ないということになってしまうのだろう。しかし将来的には、このインターネットの世界が政治に入ってくることを、日本だけが拒み続けていくことなど出来るはずがない、絶対に。そうして、若者の政治参加がインターネットによって進むと、はたして「乱世」になるのか「動乱」になるのか、「革命」になるのか「保守化」するのか、はたまた「民主化」になるのか「近代化」になるのか、予測することは難しいけれど、現在のような政治状況がいっきに変わることは間違いないだろうと思われる。
大阪・中之島図書館
大阪・中之島図書館
大阪に行く機会があったので、今なにかと話題の大阪市役所の真ん前にある「中之島図書館」に行ってみた。ここは素晴らしい図書館である。外観は威風堂々、内に入るとしっとりとして図書館らしい濃密な空気がある。ここに来るのは二度目だが、他にはなかなか場所だと思う。この図書館を、何かと話題の橋下大阪市長が「廃止」する方針だという。橋下市長は「あんなところに図書館を置く必要はない」として集客施設などに活用する意向なのだそうだ。やれやれ、じゃあいったい、図書館とはどんなところにおくものなのか。そのうち町の中心に学校なんか必要ない、として集客施設なんかにしていくつもりなのか。ここを見ていると、問題は図書館にかぎらない。文化とは何か、社会とは何か、私たちとは何か、という問題提起を突きつけられていると思った。
異次元空間への入り口──伏見稲荷
異次元空間への入り口
京都・伏見稲荷神社に行った。ここは外人さんにも大人気の異次元スポット。たしかに、奥千本という奉納鳥居の郡立はちょっとみものだ(千本どころか万本あるという)。みんなふらふらと吸い込まれるようにこの異次元空間をくぐってゆく。赤というよりオレンジ色であって、やはり非日常的な色彩だ。そこを支配しているのは狐さんであって人間ではない。しかも急な坂を上るようにして万以上もあるというオレンジ色の鳥居をくぐっていく。これは脱日常へむけた、自己をむなしゅうしていく修行でもあるのか・・・そんなことはないか。稲荷は異次元空間へ入っていく門なんだが、たどり着いた先は、商売繁盛・入試合格といったこれはまたきわめてというか、あまりに現世的なナマの利益願望なんだから。修行を通じて現世を超越するのでなく、かえってどぎついまでの現世利益にまみれた自分を発見する。これもまた、修行、なのかな。
プラハの夢のホール 「スタヴォフスケー劇場」
プラハの夢のホール「スタヴォフスケー劇場」
ここが映画『アマデウス』が収録された劇場。モーツァルトが3度もやってきて、ここでオペラを上演したのです。ここがその劇場なのかと思うと、感慨ふかいものがあります。はいってみると、予想外に小さい。ぐっと小さい感じです。しかし、舞台に引き込まれるように近く、そして「夢の空間」というにふさわしい、劇場としての「華」にあふれています。
調べてみると・・・世界中のオペラハウスの中でも、現存するものとしては最古の劇場だそうです。1787年10月にモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」が初演されたという栄光の歴史を誇り、「フィガロの結婚」や「魔笛」も大成功を収めたとあります。1791年には最後のオペラ「皇帝ティトの慈悲」も初演されたそうです。ううーん。プラハは、すごい。
夢のような空間
なかはこんなに小さい。
コンサートのあと、外にでると夕立がしていた。
幻想図書館(1)— Boston Public Library
これは2005年初夏のある晩のボストン公共図書館です。
この 図書館は「パブリック・ライブラリ」です。公共図書館ですが、行政が主導して造ったも のではありません。市民による自発的な発意で造られ、市民が資金を拠出し、そして市民のための図書館として運営されています。だからこそここに 「Public Library」という名前が冠せられたのです。訪ねると分かるとおり、ここは驚異の空間なのです。たとえば日本ではひっくりかえってもこういう空間を市 民が作ることはあり得ないだろう、と絶望的に思ってしまうような空間なのです。そういう意味で、歴史と文化と、それを造る人間について思いをはせるための 空間でもあります。朝は9時から夜は9時まで年中無休で開館しています(但し、土日は時間短縮。また夏期は日曜閉館)。私はここがどうしようもなく気に 入って毎日通いました。そして、そこに不思議な図書館マニアが多数生息していることを知りました(その一部についてはブログにも書いたことがあります)。 しかし、よほどの図書館マニアでも毎日、朝から夜までいることはありえません。私もだいたい朝に入館し、夕方には帰宅していました。しかし何回か必要に迫 れられて、あるいは気分が高揚して夜の閉館時まで図書館にいたことがあります。その時、「夜の図書館」というのは、昼間の図書館とは違った別の顔をもって いて、不思議に神秘的なことを知りました。その神秘さを、少しでもご紹介したいと思います。写真を見ていただくと分かるとおり、日本の図書館にはない、き わめて幻想的な空間です。うまく表現できる言葉がないので、とりあえず「きわめて西洋的な空間」と仮説しておきましょう。空間構成、そこに漂う宗教性、そ れを造ってきた歴史。そして、ここで求められている知は、たんなる世俗的な知(だけ)ではなくて、世俗を超越した世界を求めているのだ、と感じさせてくれ ます。われわれは、こうした空間の中で、時空を超えて、人類の歴史や、その精神性につながることが出来る。大げさに言えば…。そこには、おそらく中世から の僧院の図書室の伝統が、近代の図書館のひとつの源流になっているのではなでしょうか。そういうことを、この空間は、考えさせてくれます。さて、みなさん は、いかがお感じになるでしょうか。
ボストン公共図書館の正面玄関。ボストンの中心、コプレー広場に面している。左右に女神の像。
入り口から入ると、そこは中世の僧院の階段のようだ。
階段から入り口を見る。なんという空間だろう
中央階段の踊り場から。ちょっと日本にはありえない空間。夢の空間。 2階にあがると、これが巨大なリーディングルーム。日本のどの大学の図書館がこれに匹敵できるだろうか。 不思議な灯りが灯っている。幻想的だ。 ボールルームのような幻想的な広間。スペシャル・レクチャーなどが行われる。 夜の中庭。昼は多くの人がここでサンドイッチなどをほおばる。 列柱がヨーロッパの中世の僧院のようだ。 閉館時間になって外にでると、そこはコプレー広場なのだ。まさしくボストンの夜。
幻想図書館(2)ニューヨーク公共図書館( New York Public Library)
これは2004年初夏にニューヨークを訪ねた時の写真です。
このニューヨーク公共図書館も、初めて訪れた時には度肝を抜かれた。こんなすばらしい図 書館が、ニューヨークの町のど真ん中にあって、旅人にも誰にもでもオープンに開かれている(実際、ノートパソコンを持参すると、登録したりidをもらった りすることもなく、いきなりインターネットに接続できて、日本へとメールできたりする。ボストン公共図書館でも出来るのだが、居住者証明をもっていって id とパスワードをもらう必要があった)。現在のアメリカでは、大学の図書館は、インターネットのセキュリティがやかましくなっているので、旅人としてみる と、大学図書館は、たいへんに使い勝手が悪い。そのてん、公共図書館は、サンフランシスコにせよ、ボストンにせよ、そしてこのニューヨークにせよ、抜群で ある。そして図書館が、独自に、いろいろ検討したうえで、主体的に「図書館がネットワークへの接続環境を提供する」ことを決したことも特筆されよう。日本 の図書館が、独自に、このようなことを決断できるだろうか。 『サーカスが来た』で有名な亀井 俊介氏の『ニューヨーク』(岩波新書)にも、たしか、ニューヨークにきて、このニューヨーク公共図書館に飛び込んで、ニューヨーク・タイムズだったかでア パート探しをした経験が述べられていた。昔から、この図書館は、外からやって来た人にも開かれている「驚異の図書館」だったのだ。 ニューヨーク公共図書館については『未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― 』 菅谷 明子 (著) 岩波新書、にも詳しく述べられているが、まずは実際に訪れるとどんなものなのか。じっくりみて下さい。
ボストン公共図書館と比べると、ニューヨーク公共図書館は、ダイナミックに現代化を進めている印象がある。そして、ゆっくりと研究している人より、攻撃的に現在を生きている人が多いような印象(あくまでも個人的な印象)をもった。
ニューヨークらしい風景だと思う。アメリカに暮らして、戸外で本を読むことの爽快さをしった(日本のように蚊がぶんぶんだとちょっと無理だ)。 ボストン公共図書館にも、素敵なレストランがあった。図書館に通う時期には、なかなかこういうレストランでゆっくりというわけにもいかないのだが。 ガートルード・スタインの銅像。
インフォメーション
安立清史(「超高齢社会研究所」代表、九州大学名誉教授)のホームページとブログです──新著『福祉の起原』(弦書房)が出版されました。これまで『超高齢社会の乗り越え方』、『21世紀の《想像の共同体》─ボランティアの原理 非営利の可能性』、『ボランティアと有償ボランティア』(弦書房)、『福祉NPOの社会学』(東京大学出版会)などの著書があります。「超高齢社会研究所」代表をつとめています。https://aging-society.jp/ 参照
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